先月、匿名のタレ込み屋からメールが来て、Arizonaの信用保護サービスのスタートアップLifeLockの「スキャンダルがもうすぐ曝露される」という情報が入った。メールには、CEO、Todd Davis、共同設立者Robert Maynard、インベスターHoward Lindzonにまつわる重大な申し立てが書かれていた。要約すれば3人とも詐欺、偽証などの罪で告発するもの。さらには、インベスターのBessemerとKleiner Perkinsが出資前に会社のことを調べていないのではないか、ということを指摘して「ファウンダーの名前をGoogleで検索すらしていないんじゃないか」と言っている。
これはなかなか興味をそそるニュースだ。特にMaynardについては不審な行動の前歴がある。1997年に詐欺で訴えられた際に、FTCから今後一切信用回復サービスに関わる業務に就かないよう、言い渡されている。
被告人Maynardに対し、被告人による、宣伝番組で広告されていた信用回復サービスの販売および、消費者の当座預金口座の振り出し手形による手数料収集に関わる不正または詐欺の疑いのある行為の永久的差止救済を申し立てるものである。被告人Maynardは、申し立ての主張を認めることなく、連邦取引委員会法令13(b)に基づく最終決定の項に同意する。
Maynardの新ビジネスが、消費者信用保護だというのが、皮肉の極み。
波乱に富んだ過去を持つファウンダーの話を書くことについてのためらいはない。RivalsやStatsaholicの記事を見てもらえればわかるだろう。
それでも、このメールはどこか変だ。ただのタレ込みではない。PDFファイルが8本も添付されていて、注意深く作られた背景情報が記載されている。15ページにわたる「調査報告書」には、DavisとMaynardの個人上、業務上共の過去に関する、きわめて詳細な内容が記されていた。これはタレ込みではなく、暗殺計画だ。
Bessemarのパートナーであり、LifeLockに出資しているDavid Cowanに会って言い分を聞いてみた。2006年に出資した時からMaynardの過去については知っていたという。出資した時点ではMaynardはすでに会社のオフィスにはいなかったと、Cowanは話してくれた。
この件を記事にするべきかどうかよく考えた結果、Maynardにメールで聞いてみることにした。ところが、私が書かないうちに、山ほどの記事が出でてきた。たとえば、Phoenix
New TimesやWired。Valleywagなどはこの話をほとんど笑いのネタにしている。
こうして記事になってしまった結果、Maynardは辞めることになった。Cowanはきのう(米国時間6/16)個人ブログでこの件について、出資は十分調べた上のことであり、Maynardの辞職は残念であると書いている。
この話にはまだ続きがある
記事を書いた人たちが、私と同じメールを受け取っていることは間違いない。でなければ、恐ろしい偶然ということになる。
では、これだけの時間を費やして会社の情報を集め、レポーターやブロガーに送ったのは誰か。いったい何のために。
Cowanによれば、会社は日に3000人の新規ユーザーがいて好調だという。主要サービスは、顧客の信用情報に「詐欺ブロック」を付けること。信用情報に「詐欺ブロック」のかかっている人の名前で、クレジットアカウントを開設するためには、クレジット会社は本人と直接または電話で話して承諾を得なければならない。LifeLockではアカウントに詐欺ブロックをかけるほか、信用調査会社の「オプトアウト」状態を定期的に調べ、個人情報が売られていないかをチェックしている。こうすることによって、もし誰かが社会保障番号などの個人情報を盗んだとしても、本人になりすましてクレジットカードを作ることか非常に困難になる。私はこの手のサービスを大いに買っている(別の個人情報盗難防止会社のTrustedIDの記事も見てほしい)。
LifeLockがやっていることを好ましく思わない者はたくさんいる。そして、そういう連中は必ず三大信用調査会社(Experian、Equifax、TransUnion)の従業員やオーナーか、弁護士やロビイストなどの会社の手先だ。信用調査会社の主要業務は、カードや住宅ローンなどのクレジット会社に個人情報を売ること。個人情報盗難やクレジット詐欺を促進する首謀者だ。
信用調査会社がLifeLockのようなサービスを嫌うのは、自分たちの「情報販売機」から人を引き抜いてしまうから。LifeLockは、連中にとって収益の脅威だ。
調査会社が暗殺を企てるのに十分な理由だと思っていただけただろうか。
Maynardが過去にやってきたことが良いとは思わない。会社を辞めたのは良いことで、これで会社は信用調査会社と戦う人たちを救う本業に専念できるだろう。もうひとつ、ベンチャーファンドとしては、詐欺に限らずたいていの犯罪歴のあるファウンダーが作った会社に出資するのは、いい考えだとは思えない。Maynardは、消費者の信用情報にかかわる会社には一切関わるべきではなかったし、ベンチャーキャピタルも、この男が完全に会社からいなくなってから出資すべきだった。
果たしてあの入念なメールを誰が何のために送って記事を書かせたのか、たぶんもうわかることはないだろう。ただし、これだけは言える。このニュースを調べてからというもの、信用調査会社と、あの邪悪なビジネスモデルをこれまでになく、恐れるようになった。
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