地上固定回線の代替としてのVOIP電話を巡っての競争は激しい(ケーブルTV企業が70% のシェアを抑え、Vonageも依然として戦っている)が、一方でフットワークのいいスタートアップがソフトウェアオンリーの独自VOIPサービスを展開している。
これらのサービスでは、通常より大幅に低い料金で普通の非VOIP電話へも通話が可能だ。つまり相手先がVOIP電話でない場合でも、通話はどこかの地点でPSTN〔公衆交換電話網〕からVOIPへ、あるいはその逆へスイッチされるため、料金の節約ができる。たとえば、携帯から遠くの相手にかける場合、まずPSTN回線に入り、すぐにVOIPに切り替わって長距離利用金を節約し、相手の近所でまたPSTNに入って相手の電話につながる。
こういったスタートアップが消費者に非常に安い料金でサービスを提供するためには、VOIPをいかに利用するかがカギとなっている。しかし公衆網を利用した通話は無料というわけにはいかない。たとえ一部でも通常の公衆回線を利用した場合、特に相手の電話への最後1マイルに利用することが多いわけだが、電話会社に対して必ず料金を払わねばならない。
VOIPスタートアップの全容を使い方で分類してリストアップするのは骨の折れる大事業だ。以下に紹介した以外の多数の会社やその機能、料金などについてはこちらの表を参照。
デスクトップから安くかける
なんといってもデスクトップのクライアントから通話するのがいちばん安い。デスクトップのクライアントとVOIPネットワークを利用すればコンピュータ同士で〔無料で〕通話ができる。料金を支払えば、ユーザーのコンピュータから通常のPSTN回線の電話に発着信が可能である。読者の多くはこの機能をSkype-inとSkype-outとしてご存知だろう。
デスクトップクライアントでもっとも有名なのはSkypeで、すでに1億人のユーザーがいる。Yahoo、Microsoft、Googleといった大所もデスクトップのVoIPクライアントを提供している。つまりIMクライアントの中にVoIP機能が組み込まれている。これらを合計すると潜在的なVOIPユーザーのマーケット3億4千万以上となる。
もっと最近のスタートアップで、昨年7月にローンチしたGizmo Projectは、デスクトップ・クライアントがすでに200万回ダウンロードされたとしている。このサービスの機能はSkypeに似ておりIMとVoIP通話がサポートされている。Gizmo Projectのユニークな特長は、単にIMとVoIP通話ができるだけでなく、ユーザーがこのサービスを友人に宣伝し、 自分でも使い続けていれば、通常の公衆網との通話が無料になるという点だ。
HulloとNimbuzzもわれわれが紹介したデスクトップ・ベースのVOIPだ。
WiFiを利用して節約する
友達と会話するのにいちいちラップトップをかついで歩かねばならないというのではあまり魅力的ではない。その場合、NokiaのWiFi電話はすばらしい選択肢だ。Nokia N800は携帯電話とデスクトップ無料VIOPのいいところを取った優れたアプリケーションだ。 FringはSkype的な機能を3G/GPRS携帯とWiFiを利用して提供する。もともとNokiaの携帯と相性がよかったが、最近はWindows Mobileで作動するようになった。しかし、ユーザーは公衆網からの着信を受けるために、やはり通常の電話番号を必要とするし、この部分は有料となる。Fingは最近また$12M(1200万ドル)の資金を調達している。われわれは今までの記事で高く評価している。
WiFi以外のオプション
ユーザーがMountain View市内のようなWiFi天国にいるわけではなくて、ホットスポットに縁がない生活を送っているような場合でも、長距離通話に関しては、部分的にVoIPを利用したサービスで料金節約を図ることができる。携帯のVoIPサービス会社は公衆回線を無料で提供できるわけではないが、その代わりに通話者間の両端で公衆網を使い、中間の長距離部分をVIOPを利用する手法を取っている。ただし、この方法が有効なのは、両端の市内通話をVOIPで中抜きすることで全体の料金が安くなるケースに限られるし、ユーザーの携帯契約プランにもよって違ってくる。この方法の主たるメリットはかっこいい最新の携帯の機種でも利用できることだ。詳しいことはCrunchGearのレビューを参照。
この分野への参入者は数多い。VOIP client まずSkype自身のVOIPクライントのiSkootがある。これは携帯版のSkypeで、Skypeに登録された連絡相手にSkypeサーバー経由で発信することができる。Shape Servicesは最近iPhone版のSkypeを発表したが、これはAT&Tの回線速度の遅さに苦しめられていると報じられた。もうひとつのスタートアップEQOは当初この分野で競争していたが、その後われわれが紹介したように、独自のVOIP、IM、メッセージ用携帯アプリケーションの提供に転じている。
新規参入者の中で大物は$28M(2800万ドル)を調達したJajahと$24.5M(2450万ドル)を調達したTruphoneだ。どちらも普通の携帯から簡単に通話できる。ただし、Jajahは両端の通常回線の中央をVOIP通話でつないでいるのに対し、Truphoneの場合は、ユーザーの利用する携帯電話のデータ通信速度が十分に速い場合は、本当に通話が無料になる。両者の関係はT-Mobile問題でいっそうややこしくなっている。T-MobileはJajahの株主なので、Truphoneを自社のネットワークから締め出した。T-MobileはWiFi通話に関して独自のベンチャー“Hot Spot at Home“を立ち上げている。これは月$9.95の追加料金でユーザーのWiFiネットワークから無制限に通話できるというもの。
誰が競争に勝ち残りそうか?
Skypeが明らかにeBayのために利益を稼ぎ出しているが、それ以外のスタートアップはわれわれの知るかぎり、どこもまだ儲かっていない。しかし電話業界自体はすでに損害を受けている。特に携帯キャリヤの場合、音声通話の月額売り上げは2000年の$51から2006年の $43まで落ち込んでいる。アメリカの携帯市場は$118B(1180億ドル)あるが、携帯キャリアはこれ以外の独自のマーケットを模索している。パケット通信が ユーザー当たりの収入(ARPU)で急増しており、将来の収益の柱になっていくものと広く期待されている。
しかしVOIPにとってこの先は容易な道ではない。携帯でのVOIPはいくつもの困難な課題に直面している。いちばん基本的な問題のひとつは、無数に存在する携帯の種類ごとにアプリケーションを製作して配布しなければならないことだ。携帯のキャリヤは依然、音声・コンテンツサービスに固執しているからVOIPサービスには当然協力的ではない。Verizonの多様な有料契約(VCastや地図など)がよい例だ。
同時にVOIPサービス自体の使い勝手の悪さについてもわれわれはたびたび不満を表明してきた。VOIPサービスをインストールしても、その料金体系がさまざまなバリエーションがあって、また分かりにくい。通常料金に比べて長距離通話しか得にならないケースもある。しかも米国内通話は距離に関わらず定額制のプランで契約しているユーザーも多いので、その場合は全然メリットがない。とはいえ、そういう事情もあって多くのVOIPキャリアは料金の値下げ競争をしている。(表を参照)
もうひとつの問題はインターネットの帯域幅だ。携帯電話のパケット通信ネットワークは高品質のVOIP通話を提供するには遅すぎるケースが多い。VOIP通話に最良の方法はWiFiだが、Googleがいくら努力しているといっても、あらゆる場所に広まるまでに至っていない。3G携帯は通話範囲でも帯域でもVIOPに十分なものを持っているはずだが、携帯キャリアの支配下にあることには変わりがない。携帯キャリヤはVOIPの品質を決定づける上り方向の回線速度を絞ることができる。Verizonは3G携帯でVOIPの提供を計画していると2005年以来伝えられているのに、一向に実現していない。
そういう次第でVOIPは固定回線、デスクトップ、携帯という3つのプラットフォームに分断されたままだ。
全体として流れを見ると、この戦いで勝ち残るためにはキャリヤと仲良くしていく必要があると思う。データ通信とデスクトップだけを利用するスタートアップにしても携帯のインフラを利用するにはキャリヤとの協力が不可欠になる。この点、Jajahがキャリヤと関係ではベストのポジションにいる。低価格の長距離通話を提供する際にも、キャリヤの主要な収益源である時間あたりで課金される通話を利用している。FringやGizmoProjectのように次第に高速化するデータ通信網だけを利用したサービスは、キャリヤの音声通話をバイパスすることで、消費者に対してより安い料金を設定できるものの、キャリアの利害と真っ向からぶつかることになる。キャリアの収益を削ることになるこういったサービスは、TruPhoneがT-Mobileから締め出しを食ったように、結局キャリアと直接に衝突することにならざるを得ない。一部のキャリアはN95のVOIP機能を無効にしている。VOIPサービスはさまざまに「これこそ革命的」というキャッチフレーズを唱えているものの、今後もさらに苦闘が続きそうだ。
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