DRMのかわりに音楽税とはあまりにバカげている

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数週間ほど前のことだが、The RegisterのAndrew Orlowskiが大手レコード会社とDRMの将来についてPeter Jennerにインタビューした記事を書いている。この話題はいくつものブログで取り上げられて、やたらとウケが良い。出だしはたしかにいい 。Peter Jenerは音楽業界で一目置かれている存在(Pink Floydの最初のマネージャーだった他The Clashなどの大物アーティストを手がけた)で、話は、大手のレコード会社は「クソだ」(“fucked”) 、というところから始まる。これは今どきの読者を喜ばせるには安易なやり口だ、何しろ大手のレコード会社を反キリストのように思っている連中は多いから。

彼は、DRM,ダウンロード課金、デバイス毎の制約など、今音楽ファンを怒らせている1曲について何度も払わされるやり方を、ことごとく叩く。彼に言わせれば大手レーベルは目先の利益に目を奪われて「自分たちのビジネスモデル全体をぶち壊している」のだ。

しかし、ここからJennerの話はおかしくなっていく

Jennerは政府が関与して大手レーベルを救ってほしいようだ。彼の要求は、EUがブロードバンドのインターネットと携帯電話に月額4ユーロ課税して DRMなしの音楽を無料で自由にダウンロードさせようというもの。支払われた金は曲の人気に応じて著作権者に渡る。つまり、徴収した総額の中から、人気の 高い曲には高い割合が支払われる。

この発想は、イギリスのテレビ放送のライセンスのやり方をベースにしたものだ。イギリスに住んでいて、テレビを持っている人は年間 131.5ポンドの税を払わなければならない。この金はBBCがもらう。どう使われているかの内訳はここに出ている。BBCには文字通り国中を走り回るワゴン車があって、料金を払わずにテレビを見ている人を探している。見つかれば高い罰金を払わなければならない。1995年には235人がTV税不払いで投獄されている。

これがまさにJennerの考えている音楽税というものだ。彼は次のように語っている。

音楽は聞かない、と誓約すれば税金は払わなくてよい。払わずにいるのは大変なことだろう。払っていない人が音楽をダウンロードしないかをネットワークはいつ でも見張っている。ライセンスなしにダウンロードした者は徹底的に追求される。テレビのライセンス並みの安い税金さえも払わなかったのだから。

ヨーロッパの人たちがどうして立ち上がらないのかは私の知るところではない。しかし、こんなことが通ってしまうようだと何が起きるかは明らかだ。

音楽業界全体の売上規模は、どんな質、どんなタイプの音楽を出そうが変わらないことになる。イノベーションへの意欲は無くなるだろう。残るのは市場のシェ ア争いだけで、市場を広げようとか、人気のないニッチ市場を開拓しようなどということはやらなくなる。レコード会社が新しいブランドを作って新進アーティ ストを育てて成功させることなどないと思った方がいい。かわりに、今のビッグネームから搾り取るだけ取って、新しいものは、レーベルであろうとアーティス ト、作曲家であろうと、市場から追い出そうとする。新規参入はすなわち、限られた資金争奪戦を激化させるだけなのだ。現存するプレーヤー同志での談合も横 行するだろう。

レコード会社からはすぐに、ビジネスを続けるには収入が足りないという苦情が出て、税金を上げるよう要求がでるだろう。税は上がることはあっても決して下がらない。

政府はこの法律を守らせる義務がある。だから、守らない人たちを牢に入れる。

私が思うに

レコード会社が「自分たちのビジネスモデルをぶち壊した」ということや、今非常に厳しい状況に立たされている点についてはJennerに同意する。レコード売上が今後数年で50%減少するという見通しは、今オンラインで得られるものを考えれば、当たっていると思う。

だからといって政府が介入して手を差し延べるべきだとは思わない。ブロードバンドや携帯電話への課税を法制化することによって、音楽業界の売上や利益を保証する一方で、新たな挑戦や、ニッチ市場の開拓のインセンティブをなくしてしまうべきではない。

死にかけた業界を政府に何とかしてもらおうという発想は必ず(必ず)失敗する。今回のケースは、史上まれにみる、ばかげていて、危険かつダメな発想だ。

本件については、また取り上げる予定。

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