Googleのティッピング・ポイント(分岐点)

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12/31-1/3まで、更新はお休みいたします

それだけとってみれば、かなりささいなことが数日前に起きた。

Firefoxの共同ファウンダー、Blake RossがGoogleを批判する“Tip(ヒント*):信頼は得るのは難しく、失うのは簡単”という記事を書いた。Rossは最近のGoogleの検索で、Google自身の製品が検索結果の上位に置かれる問題を取り上げている。たとえばCalendarBloggingPhoto Sharingなどの用語を検索してみると、Google Calendar、Blogger、Picasaといったサービスがそれぞれ、もっと人気があるはずのサービスを押しのけて上位に表示されるのだ。Yahoo Calendar の検索の場合でさえ、ユーザーが明らかに求めている結果よりGoogleの製品が上位に表示されたりする。

それだけで考えればささいなことだというのは、ぶっちゃけた話、自社のウェブサイトなんだからGoogleには好きなだけ自社サービスを宣伝する権利があるからだ。しかし今回のRossの記事は、Googleに対する世間の態度がこの1年ほど微妙に水面下で変化してきており、それが表に出つつある、ひとつの兆候かもしれない。業界で非常に尊敬を得ている起業家がとうとう口を開いたことに、Googleは目を覚ますべきだ。

問題のひとつは、Googleが常に自社の行動基準を他社より高いところに置いてきたことにある。Googleが「悪をなさない」 というモットーを掲げた時、われわれはこれを真剣に受け止めたものだ。これはGoogleがまだ若く、当時憎まれていたMicrosofに戦いを挑んでいるときのモットーとしては適切だった。しかし今、Googleがユーザーの利益より自社の利益を優先させようすると、このモットーがGoogle自身に憑りつくことになる。

Googleはもちろん、このモットーを取り消すわけにはいかないし、無かったことにするわけにもいかない。Googleはいったん自分で宣言した以上、われわれがGoogleに他社より高い行動基準を要求するのを止めることはできない。

このGoogleの検索問題は、他の問題と合わさって、深刻なダメージを与えつつある。ユーザーはGoogleが何であれ新しいことを始めると好意的に受け止めたものだが、それも控え始めている。今はこれほど多数のブロガーがおり、何か新しいバンドワゴン現象を見つけて、それに飛びつこうと待ち構えているのだから、こうした公衆の態度の微妙な変化は先行き大雪崩をもたらす危険性がある。

こういう話は前にもあった。Yahoo、AOL、Microsoftは90年代、シリコンバレーの寵児としてもてはやされた時期があった。起業家にとっては三巨頭のどこかと何かの話し合いをした、というだけでベンチャーキャピタリストに売り込む好材料になっていた。結果、ビッグスリーは食物連鎖の頂点に立ち、そのことに驕り高ぶるようになっていった。

ビッグスリーには株価を高どまりさせておく高い収益の確保が必要だった。新事業は数十万ドル、いや数百万ドル単位の売り上げが期待できないと買収交渉の対象として見向きもされなかった。新事業では年間1千万ドルの売り上げが確実とされることも普通だった。ところがそこへ株式市場のバブル崩壊が起きた。ベンチャー資金も広告資金も枯渇し、約束された新事業は幻と消えた。収益を生み出す予定の会社が倒産してしまっては、予想収益も決して実現することがなかった。Yahooはじめ各社が一番の打撃を受けた。大量レイオフが行われ、CEOが次々クビになった。傲慢な態度も影をひそめた。

こうした企業も今は斬新で突拍子もないアイディアに耳を傾けるようになった。「交渉相手としては申し分なく楽しい」、そう起業家たちは口を揃える。

現在Googleは市場を支配する立場にあり、支配者につきものの傲慢さを間違いなく身につけてしまった。だが、Googleは自分で作ったあのクソ忌まわしいモットーのおかげで非常に難しい立場に置かれている。そしてたぶん今は、世論が手のひらを返したように一変するティッピングポイント(水面下にためこんだ不満なり人気が弾ける瞬間。分岐点)に直面している恐れもあるのだ。みんな次第次第に、Googleが躓くことを望み始めている。なんかヘマするたびにマスコミはここぞとばかりに飛びつく。そしてあのモットーが持ち出されるのだ。

Googleは自らを改革する必要がある。あのモットーを取り消すのは不可能だ。これからもずっとモットーを追求していくしかない。永久に。Googleは外界を見下す態度を止め、ガラス張りの正直な態度で臨まなくてはいけない。優先すべきは常にユーザー。常に。Googleはこの改革を今すぐにも行う必要がある。世論の変化が明らかになってからでは、もう手遅れなのだ。

Googleの非公式ブロガーMatt Cuttsは、Rossの投稿を真剣かつ公正に取り上げているが、本当はもっと自社に厳しく当たるべきだったと思う。職を危うくするぐらいの厳しさが欲しいところだった。なぜなら、そういう苦言こそ今まさにGoogleが必要としていることだからだ。

*グーグルが最近導入した新機能「Tip」にかけたタイトル。検索トップに自社サービスを「Tip(ヒント)」として別枠で表示し、これが非難の的となっている(本稿タイトルは新機能をもじったもの)。Google日本語版では未導入。

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