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そろそろシリコンバレーの熱気が冷めてもいいのでは

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シリコンバレーはギークパラダイスだ。そして、世界中いたるところから、特別な地の一員になりたいと願う人たちが群がっている。シリコンバレーで開かれるイベントで、私が講演する機会に参加者によく尋ねる質問に「シリコンバレーに住んでいる人は手を挙げて」というのがある。通常80%以上の参加者が手を挙げる。それから、もし、ここで実際のところ生まれた人たちにはそのまま手を挙げてもらう(そして、そうでない人たちには手をおろしてもらう)。ほんの数人しか残らない。当地のテクノロジー関連ビジネスで働き、ここに住んでいる人たちはキャリア形成過程のどこかで引っ越してきたことになる。ちょっとした座興だが、シリコンバレーという土地がどれほど特別なのかを示すものだ。シリコンバレーのカルチャー全てがテクノロジーとアントレプレナーシップに基づくものであり、世界中から才能が流入してくる。肌の色や、どの宗教を信じるか、あるいは性的な趣向などは関係ない。重要なのはそれが一体どんなサービスで、そしてそのサービスを支えるテクノロジーは何かということだけだ。

そして、シリコンバレーはある時にはとても楽しい場所になり得る。私がTechCrunchを最初に書き始めた2005年はちょうどそのような時だった。いくつかの小規模な買収(Flickrなど)があったが、大半のケースでは新スタートアップ企業にベンチャーキャピタルからの資金は投入されておらず、IPOへのとびらは固く閉ざされていた。それに株式公開企業は大した買収はしていなかった。数十の新スタートアップ企業が存在したものの、それらの企業に関係した人たちの大半が、ここにいたのはビジネスそのものを好きだったからだ。マーケティング部門やPR企業を抱えていたものは誰もいなかった。ぜいたくなローンチパーティなんて、90年代後半のぼんやりとした思い出にしか過ぎなかった。

さまざまなイベントがあちこちで開催され始めた。われわれの最初のパーティは2005年9月。20人程度のアントレプレナーがビールとハンバーガー目当てに我が家に立ち寄り、ビールとハンバーガーを楽しんだ。YouTubeの共同設立者Chad Hurleyはその中の一人だった。「YouTubeって、うまく行くと思う?」と彼にきいたのを覚えている。

立て続けにそっくりのイベントを3つ行った(といっても、参加者の数は増えたのだが)。これらイベントの写真を見ながら当時を振り返ると、楽しいひとときを思い出す。そして、$20M(2000万ドル)のベンチャーラウンド、あるいは$1.65B(16.5億ドル)というクールな買収契約などを話題にするものは誰もいなかった。MeeboやSphereは文字通り、我が家のリビングルーム内で(サービスに対し)純粋に関心を持っていた数百人の人たちの目前でローンチしたものだ。

それら過程のどこかで資金が流入し始めた。われわれの最初のわずかながらの収入は2005年9月。それから数ヶ月後、多数の企業がAラウンドで$3M(300万ドル)を調達、YouTube買収後はAラウンドでの調達額が$7M(700万ドル)になった。企業はマーケティング・マネジャーやPR企業を採用し始め、何万という金額をローンチパーティに費やした。スタートアップ企業は、巨額の資金調達ラウンドを避けるためにベンチャーキャピタリストから意図的に逃れなければならなかった。

良い時代だし、資金は順調に流入している。そして、シリコンバレーは(また)つまらなくなっている。

いったいどうしてなのかは知らないが、バブルがはじける直前の90年代後半にも同じことが起った。まったく道理に合わない多数のスタートアップ企業に人びとは熱狂し、これらスタートアップ企業は資金調達に成功した。ユニークですばらしく、そして上手く実現されたアイディアでも、目をむくような巨額の資金調達の第一ラウンドに成功するまでは、話題にする価値の無いものとして受け止められた。人々はいろいろなことについて心配するようになり、怒りや嫉妬で八つ当たりするようになった。うわさを煽るのが急増し、重大なバランスが失われた。もはや、すばらしいサービスや天才的なディベロッパーは重要ではなくなった。金と地位そしてPRのセクシーな女性たち、マーケティング部門が注目されるようになった。

プレスなど報道機関サイドも同様、正気を失ったようなものだ。私は最初のバブルの時にはまだブログを書いていなかったから、その当時と今を比較することはできない。しかし、アントレプレナーたちは、単にわれわれからの意見を聞き、ブログのエントリーとして取り上げてもらい、ちょっとしたディスカッションに結びつけたいと願っているわけではもはや無い。これらのスタートップ企業は他にごまんといるそっくりのスタートアップ企業から何とかして差をつけるためにプレスに取り上げてもらうことが必要なのだ。彼らに「ノー」というのは選択肢に無いも同然だ。(前ぶれなく)ワインや花束を抱えて玄関先に現れる。自分のPR企業に何がなんでもストーリーを(プレスに)取り上げてもらうように、と指示を与えているのだ。われわれが「記事として取り上げるつもりはない」とこれらスタートアップ企業のCEOたちに電話で伝えた時、先方が泣き崩れたりしたのも、一度のことでは無い。そして、このような反応に私が折れて記事として取り上げたのも複数回にわたる。

私は、前回シリコンバレーが(バブルに)沸き返ったピーク時にこの土地を去り、2005年に戻ってきた。その際、イノベーションを取り巻く多くの善意そしてコミュニティにうれしい驚きを覚えた。そして、今はまた昔の日に逆戻りしたようだ。シリコンバレーはもはやその楽しみを失った。事実、とても嫌なものへとまっさかさまに落下しつつある。われわれのうち誰かがこの地からしばらく立ち去り、外からこの狂気のさまを観察する時かもしれない。ビッグマネーはゆっくりとまどろみにつき、マーケティング部門は遥かな記憶になるだろう。そうして、われわれは、もう一度テクノロジーに注目することができるようになる。それに、ハンバーガーとビールにも、だ。

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