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バーチャルグッズ~次のビッグなビジネスモデル

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Engadget編集長Ryan BlockがTechCrunch20エキスパートパネルに参加

本稿はゲスト寄稿者Susan Wuが執筆した。SusanはCharles River Venturesのプリンシパルとしてデジタルメディア、ソフトウェア、インフラを担当している。Susanは今週金曜(米国時間6/22)、スタンフォード大学でCharles Hudsonと共にVirtual Goods Summit(バーチャルグッズ・サミット)を開催する。以下登場企業の大多数がこのイベントに参加を予定している。

img_susan2.jpg世の中では毎年$1.5B(15億ドル)もの金がバーチャルグッズ購入に遣われている。ペット、コイン、アバター、ブリン(光りモノ)…このバーチャルなオブジェクトは、イーサネットのどこか遠くのデータベースに保存された1と0のデジタルの行列に過ぎない。なのに何故に人々は汗水垂らして稼いだリアルのお金をこういう実体のない「オブジェクト」に遣うのだろう?そう人々を駆り立てるものは一体何なのか?

昨年はバーチャルワールドの分野がマスコミでも盛んに取り上げられた。これだけ騒がれた背景には西部開拓のストーリーのような一攫千金の要素あり、Second Lifeのような新興ワールドの無政府状態(アナーキー)もあれば、World of Warcraftの中国人ゴールドファーマーの危険二の次な状態もあるだろう。その全てが少なからず注目に油を注いだ。ただ、まだもっと重大なポイントをみなさんは見逃している。世の中には、バーチャルワールドの片隅で起こる異様な話を面白おかしく取り上げることに心血を注ぐ人もいるが、現実にはこのバーチャルグッズで立派にお金を稼いでいる企業だってたくさんあるのだ。:

  • Tencentは中国最大手のネットポータルのひとつ。アクティブユーザー数は2億5千万人超。その収入高は2007年第1四半期だけで$100M(1億ドル)を上回り、その実に65%以上はバーチャルグッズからの収入だ。
  • Habbo Hotelは世界29カ国に登録アバター7500万人超。年間収入は$60M(6千万)ドル超で、その90%はバーチャルグッズからのもの。
  • Gaia Onlineでは5万件を超えるP2P競売を取り扱っている。掲示板のメッセージ投稿数は1日100万件。同社はネット上に存在する3番目に大きいオークションサイトであり、2番目に大きい掲示板だ。ユーザー一人当たりの平均ページ閲覧数は月間1200ページビュー(PV)。3人雇って、みんながバーチャルグッズ購入代金をビッシリ詰めて送ってくるカタツムリメール(スネイルメールとも呼ばれる。つまり普通郵便のこと)をただひたすら開封する仕事を専属でやらせている。
  • バーチャルグッズはネットのゲーマーたちのもの…これは非常によくある勘違い。DogsterHotorNotはどちらも広告とバーチャルグッズを掛け合わせたハイブリッドのビジネスモデルで成功している会社だ。HotorNotの方は現在の収入の40%以上をバーチャルグッズに頼っている。
  • メインストリームの大企業ブランドも今では、ソーシャルネットワークのバーチャルグッズというかたちで広告を買っている。Gaiansも自社バーチャルScion xBsを買って売り込みに懸命だし、コカコーラとTencentはサービス提携してTencentユーザーがリアルのコーラ缶から入手した交換コードをTencentネットワークでバーチャルのオブジェクトと交換する共同事業を行っている。Wangyouという中国のソーシャルネットワークもバーチャルグッズのブランド提携に関しては極めてアグレッシブに実験的な試みを展開している。


バーチャルな物に何故こんなに投資するのか、まったく理解できない人も多いだろう。Facebookが始めたバーチャルギフトの新サービスをTechcrunchが紹介した時にも世の中の反応は冷たかった。:

  • 「アイコンで丸々バーチャルギフトとは野暮なアイディアもあったもの。…僕には何がなんだかさっぱり分からないね」
  • 「1ドル出して友だちのFacebookのプロフィールに子犬のアイコン贈った人間が自分だとバレたら…友だちなくしてしまいそう…。不気味過ぎるよ」
  • 「そんなガラクタ、誰が買う?んなつまらないもんにムダ金遣う人が気の毒でならない」
  • [以上、最初のコメント16件に目を通しただけでこの調子]

リアルのお金をバーチャルなオブジェクトに使う動機は一体なのか?
理由は主に4つある。:

バーチャルなオブジェクト(物)は、実のところ「物」ではない―サービスである

バーチャルなオブジェクト(物)は実際には「物」ではない。人が元々やろうとしている行動をパッケージするためのグラフィックなメタファだ。HotorNotのJames Hongによれば、Jamesのバーチャルフラワーのサービスは3つの部分から成っているという。グラフィックな花のアイコンで表わされたオブジェクトそのもの、誰かがオンラインの恋人に花を贈る「行為」、それに花をプレゼントされたことをみんなが知っているという「トロフィー効果」だ。HotorNotにいる人たちは、愛情の証のオブジェクト、バーチャルフラワーに$10を払うのだが、これがリアルのフラワーの3~4倍の値段なのだからあきれる。3つの要素の中で、ユーザーにとって特に重要なのはトロフィー効果と行為自体の持つ意味なのだとJamesは言う。みんなにとってオンラインとオフラインの垣根が低くなるにつれ、こうしたバーチャルグッズの市場は一気に広がるはず。みんなオンラインで感情を表現する方法を探し続けるだろう。バーチャルギフトは、心遣いをラッピングするには特に感動的なやり方だ。

バーチャルオブジェクトがリアルな価値を生む

eBayなどのマーケットでは、連日数多のバーチャルワールド環境のバーチャルな剣、通貨、服などの売買取引が何千件も行われている。剣や鎧などのバーチャルグッズを買う人たちは、こういう品物を買うことによって、バーチャルワールドやオンラインコミュニティ、オンラインゲームなどに費やす時間から得られる満足度を高めるている。例えば、レベル20のキャラクターでもがいている時の1時間当たりの満足度が20ユニットだとすれば、強力な剣を持つレベル20キャラクターになることによって50ユニット/時を得られるようになる。この場合、プラス30ユニット分の満足度が生み出すであろう価値に相当するお金を払ってでもこの剣を買うだろう。

私はマルチプレーヤーオンラインゲームの熱烈なプレーヤーだ。何年か前、リアルの10ドルを払ってゲームの100万ゴールドを買ったことがある(そう、リアルのお金のやりとりが禁じられていない世界での合法的な話)。友人が私を冷たい目で見て、「お金をドブに捨てるようなもの」と言ったので、何とかわかってもらおうと説明を試みた。100万ゴールドあれば20時間のエンターテイメントを得ることができる。映画を見に行けば、リアルの10ドルで2時間のエンターテイメントを買う。映画の1時間の楽しみとゲームを2時間プレーするのが同じ満足度だとすれば、バーチャル通貨100万のために、50ドル払ってもいいことになる。実際、私はたったの10ドルなんて安いと思っている。

バーチャルなオブジェクトがリアルな価値を生む、いちばん強力な実例は自己表現に使った時だろう。RockYouでは現在1日に1億5000万個以上ウィジェットを提供している。このウィジェットはFacebookのプロフィール画面に置いて、他の人と差別化するためのもので、リアルの世界でアクセサリーやプリンプリンを使うのとよく似ている。米国のアパレル市場は$300B(3000億ドル)に迫っている。みんなのリアルの世界での、人と違っていたい、パーソナライズしたい、という強い原動力がオンラインにも浸透すると考えることに無理はない。ウィジェットは、バーチャルグッズの形態のひとつと言える。ウィジェットの会社のほとんどは広告収入に頼っているが、大規模に分散した少額取引経済に、ウィジェットが火を付けるのは遠い将来の話ではない。

オブジェクトは買う方が、「手に入れる」より安上がり

「World of Warcraft」というオンラインゲームの「中国人ゴールドファーマー」のことは知っているだろうか。この「ファーマー」の多くは若い学生で、1日12~18時間ゲームをプレーし続ける。そこで手に入れたグッズやキャラクターをアメリカのプレーヤーに売って米ドルを手に入れる。何時間も費して単調なゲーム内の作業を繰り返し繰り返しやって手当てをもらうところから「ファーミング(農耕)」と呼ばれている。この業界は、機会費用の格差の結果生まれた「鞘取(さやとり)」に目をつけたものだ。中国人「ファーマー」の時間当たりのコストは、アメリカのプレーヤーに比べてはるかに安い。モラルの話をしているのではなく、経済におけるひとつの事実にすぎない。キャラクターをレベル40に上げるのに同じ60時間かかるとして、アメリカのプレーヤーの「機会費用」は$900(60時間×$15/時)だが、中国人なら$30(60時間×$0.50/時)かもしれない。アメリカのプレーヤーはレベル40のキャラクターに$900までなら出してもいいと思うから、中国人プレーヤーには儲けるチャンスが生まれる(攻撃的読者へのメモ:私は、ゲームデザイナーが明確に禁止しているところで「ファーミング」することを支持しているわけではない。ただ、買い手と売り手によってこういうことが成立するしくみを説明したいだけだ)。

バーチャルオブジェクトで収入を得る

昨年は、Second Lifeで最初の不動産億万長者の話で持ちきりだった。現実社会でリアルな土地を買えるようなお金をバーチャルな島に投じるのはバカげていると思うかもしれないが、この場合のバイヤーはきわめて財務に長けた人だ。このバーチャルワールドで島を買うと、何がしかの権利が付いてくる。例えば、バーチャルなものが採掘できる鉱山とか、不動産開発の権利などだ。バイヤーは島をいくつもの区画に分割して他のプレーヤーに売ることによって膨大な利益を得ることができる。もちろんこの手の投資戦略には市場の流動性が必要であり、期待する価格で買ってくれそうなバイヤーが相当数いる市場がなければならない。バーチャルワールドのプレーヤー数の急成長と市場のインフラ整備の急速な立ち上がりによって、市場の流動性は高まっていくことになるだろう。

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