Ron Paul―ネットワーク分散的Web 2.0キャンペーン

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ronpaul.jpg2008年の米国大統領選挙に向けて面白い現象がおきている。それもWeb 2.0に関連した現象だ。

Ron Paulという名前はよく知られているはずだが、知らない向きのため説明しておくと、彼は米国の次期大統領選に出馬している。Paulの政策プラットフォームは、彼自身が所属する共和党だけでなく、民主党も含めて(全部ではないかもしれないが)他の候補者ほとんどのものと大きく違っている。Paulは古典的な保守派で、「小さい政府」の信奉者であり、国家の価値より個人の価値を優先する。Paulはイラク戦争反対派で、広い意味で米国の介入に反対する立場をとっている。Paulはモンロー主義はまったく間違った政策だと信じている。

Paulは今回の大統領選では泡沫候補扱いで、 メインストリーム・メディアも専門家もともに大きな役割を果たす可能性はゼロだとしている。しかしオンライン世論調査 の結果だけで見れば、Paulこそ次の米国大統領だ。その秘密はWeb 2.0の世界でのPaulへの支持が増え続けているところにある。

ネットワーク分散的Web 2.0選挙キャンペーン



私はオンラインでのアメリカ大統領選を1995/6年のときからウォッチしている。2008年は、実質的にオフラインと同時にオンラインでも戦われる選挙戦としては4回目となる。有権者にオンラインで接触しようとした最初の試みである1996年から長い間かけて発達してきた。2000年は壁紙と無料の本で(私はSteveForbesのサイン入りの本を持っている)、2004年もはブログが登場、そして今回ビデオとMeetupの2008年だ。進化の方向は常に「やればやるほどいい」で、選挙の回数を重ねるごとに候補者のページはますます中央集権的に内容を増加させてきた。今回の選挙ではBarakObamaの場合、独自のSNSをスタートさせるところまで来ている。Ron Paulのやり方は、これとまったく正反対だ。Paulは「小さい政府」と個人の価値を説くが、彼のキャンペーンはまさにそれを地で行く戦略となっている。型どおりの経歴紹介のページと政策を説明する文書以外のコンテンツはすべて外部Web2.0サイトのものなのだ。公平にいえば、他の候補者もWeb 2.0サイトを利用してはいる。しかし独自のコンテンツを補足する程度の使い方だ。ところがPaulの場合、コンテンツはほとんどすべてがWeb2.0なのだ。

rp1.jpgRon Paul BlogはTypePadを利用したブログ。更新はひんぱんだが、ほとんどの記事がキャンペーンのスタッフによって書かれ、個人的な色合いはまったくなく、コメント欄も設けられていない。

icon-digg.gifDigg上のRon Paul。Paulの支持者にDiggの関係記事を投票するようはっきり呼びかけているわけではないが、ここにリンクを貼っていることは、それ以外に目的はあるまい。Paul関連のDigg記事が4桁に達しているのは驚くべき成果だ。

icon-eventful.gifRon Paulの選挙キャンペーンのイベントはEventfulに載っている。このサイトにすべてのPaulのイベントが掲載されているのかどうか分からないが、キャンペーン・イベントの情報を周知、共有するのにWeb2.0サイトを使うというのは興味深い試みだ。

icon-facebook.gif「Ron Paul下院議員を2008年の大統領に」というFacebookのグループ。このあたりから話が面白くなってくる。 Paulの Facebookグループは1万5千のメンバーがおり、Paul関連のニュースや活動に関する活発な情報源になっている。あらゆる選挙活動、学生のグループから資金集め、会合、集会、その他すべてはここで情報が交換される。

icon-flickr.gifFlickrのRon Pau。写真を撮ってWeb 2.0サイトにアップしようとするなら、誰でもFlickrをまず思いつくだろう。Paulのキャンペーンももちろん利用している。しかしFlickrに普通のキャンペーン用宣伝写真以外に舞台裏やハプニングなどの現実を撮ったものがアップされているのが意外。

icon-meetup.gifMeetupのRon Paul。選挙の候補や各種の社会運動が組織的な集会の情報をMeetupに載せるようになってからかなりの時間がたつ。以前のキャンペーンでは集会情報は候補者のサイトで集中管理されていたもので、現在は他の候補者もMeetupを利用するようになったが、Paulの場合は完全にMeetupだけを利用している。

icon-myspace.gifon MySpaceの「Ron Paul 2008」。友達はすでに4万人を超え、さらに増加中。PaulのページはMySpaceページとしてはなかなか上出来。妙なことにRonPaulのTypePadのブログがMySpaceブログとしてコピーされていて、こちらではコメントがオンになっている。荒らしのコメントがついているのを見ると、果たしてコメントを有効にしたのがよかったかどうか議論の分かれるところかもしれない。

icon-youtube.gifYouTubeのRon Paul 。PaulにとってYouTubeはキラーアプリケーションだ。Ron Paulのビデオは何度もYouTubeで第1位にランクされている。チャンネルには2万を超える登録者がおり、Paulのチームがアップロードしたクリップだけに限っても、閲覧回数は200万回以上に上っている。YouTubeによってPaulはメインストリーム・メディアをバイパスして、直接有権者にメッセージを伝えることが可能になっている。

Paulは2008年の大統領選で共和党の候補者に選ばれる可能性は少ない。現在獲得している支持基盤を利用して、無所属候補として立候補することになるかもしれない。しかしその結果は別として、Paulが各種Web2.0ツールを利用して勢いに乗ることに成功したことはすでに選挙キャンペーンのあり方に影響を与え始めている。将来はさらに影響が広がっていくだろ
う。FredThompsonのキャンペーンでは、 Thompsonが正式に出馬を表明して以降、インターネットをキャンペーンに積極的に取り入れている。他の候補者もこれからPaulの例を見習うことになるはずだ。

Paulは、Web 2.0ツールを利用すれば、ある問題に関心のある人々に直接メッセージを届けることができること、Paulを依然として無視し続けているメインストリーム・メディアが次第に無意味になっていくことを実証している。Web2.0はもちろんまだメインストリーム・メディアに取って代わる 存在ではない。しかしPaulの成功によって、その日が着実に近づいているといえるだろう。

この記事の目的は、もちろん、Paulへの支持を訴えるものではない。選挙の候補者が、伝統的な手段をバイパスして、Web 2.0ツールを利用していかに直接に有権者にメッセージを届けることができるかを検証したものだ。政治的意見はどうあろうと、これまでのPaulの成功は本人とキャンペーンチームの功績といっていいだろう。

Paulの政見に興味がある読者は下に掲載したGoogleによるビデオをチェックするとよい。このビデオによると、Googleの社員はMountain Viewを訪れた候補者の中で、Paulに対していちばん多くの質問をしているように思える。Google社員の間では Paulにはちゃんとした内容があると思われているに違いない。読者の皆さんでそれぞれ判断していただきたい。しかしYouTubeは最良のWeb2.0伝達手段ではある。

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