欧州投資家が惚れ込む起業家とは?「Seedcamp」最終選考発表

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欧州スタートアップ企業育成のための新インキュベータ式公募「Seedcamp」の優勝者が発表になった。

候補20社を厳正に審査の結果、審査員36人(欧州トップのベンチャーキャピタリスト複数を含むSeedcampの投資家・取締役)は当初予定した5社を上回る6社に出資するという、異例の決断を下した。入賞者は以下の通り(順不同)。

Project Playfair

現在まだ開発途中の「Project Playfair」は、英スコットランドからの入選。ハイパーテキストならぬ「ハイパーナンバー(hypernumbers)」で、テキストがハイパーテキストになったと同じことを「数」の世界で実現を考えている。手堅く、ワクワクするようなアイディアだ。例えばこれを応用して、ある表計算のセルの一個一個が、別の場所の表計算のセルの一個一個とやりとりできるような、そんな表計算のコラボも実現できそうだ。

[Saul Klein(Seedcampファウンダー兼審査委員長)の講評]「ここのチームは月曜から木曜まで昼も夜も改善に改善を重ねてきましたね。(こういう会社に投資するのは)シード投資の王道に近い投資と言っても過言ではないでしょう。過度に期待をかけ過ぎかもしれませんけど、テキストで起こったことを数字でもやってみたい、そんな人が現れたら普通誰だって応援したいと思うのでは。これはつまり「Excel 2.0」なのです。彼らは自分たちの領域で非常に難しい技術的問題も解決した、技術力のあるチームです」

Zemanta

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Zemanta(スロベニア)が構築したのは、コンテンツをネットで見れるよう自動的に最適化できる“コンテンツ・インテリジェンス”なプラットフォーム。それで何ができるの?だが、テキストをこれに貼り付けるとZemantaが内容を吟味して、そのコンテンツに最もありえそうなリンクを張ってくれるのだ。で、これを自分で編集することができる、というわけ(ブロガーなら飛びつくこと請け合い?)。 この種のアプリは学術界や法人用のコンテンツ管理システムでは沢山出回っているが、ネットではこれまであまり見かけなかった。というのもCPUとリソースが集中的にかかるテクノロジーだからね。同社のウェブサービスのAPIではコンテンツの内容を吟味し、どう扱うべきか考えてくれる、その辺がAkismetに似てなくもない。

[Saul Kleinの講評]「ファウンダーたちのことがとにかく気に入りました。やる気もあるし頭も切れる。その上、仮設のアプリケーションとカスタマーまで(活用拠点のスロベニアに)もう抱えているんです。パブリッシャーにとっては願ってもないほど価値のある提案でしょう。これを欲しがるブロガーがどれだけ多いことか。さらに(Seedcampへの出願が多かった)スロベニア出身という点も好きですね。Seedcampは欧州の隅々までが相手ですから」

Kublax(サイトは開発中だがアプリは稼動中)

Kublaxは自分の銀行口座とユーティリティ(電気・ガス・水道)、航空会社のマイレッジまで一つに同期し、この全情報をひとつにまとめ、ユーザーが使い易いフォーマットで表示するサイトだ。お金の出入金を管理し、個人財務の現況を分析もできる。キー情報(ログイン情報など)はすべて超暗号化技術で保護をかけたファイルに入れ、デスクトップに保管が可能。個人ファイナンスに関するソーシャルネットワークを作り、自分のキー情報は表に伏せたまま、“みんな”から投資や貯蓄口座や住宅購入の頭金など、ファイナンスに関するいろんな役立つ情報を仕入れることができる。

[Saul Kleinの講評]「この消費者向けの企画案はキラーです。ワンクリックで自分の消費情報を一つの場所に引き出してグラフで一望できるなら私も是非見てみたい。個人ファイナンスの領域ではまだデスクトップ・パブリッシングで革命的な製品は生まれていませんよね。これからは個人ファイナンスの取り扱いはデスクトップ用アプリではなく、ネットワーク上でライブで処理が可能になるのです。自分の消費傾向をほかの人のそれと比べたり、比較評価 (ベンチマーク)も可能となるでしょう。Mintのようなサイトは米国のベンチャー投資が資金を出していますが、このビジネスはとてもローカルな試みなので地域市場との連動も見込めそう。米国モデルもあることにはありますが、米国のサイトは長続きしていません。その点、本チームなら無から沢山のことを手がけてきましたし、起業分野参入目指してOpen Coffeeに加わったOBでもあります」

TableFinders

スウェーデンからはTablefinders。同社の使命は、ネット予約可能な世界中のレストランの情報をひとつにアグリゲートすること。レストランにとってはCMマーケティングのプラットフォームだが、それだけでは無論ない。通常、レストランは世界予約システム2つ(Open TableとLiveBookings)のうちひとつを使っている。Tablefinderではこれらシステムの情報を一本化し、同じひとつの土俵で戦えるようにする。予約が入るとレストランから手数料が、Tablefinder の提携システムのひとつに入る、という流れだ。投資は今のところスウェーデン国内の小さなVC会社から調達した分だけ。LiveBookingsおよび OpenTableと提携を目指しているので、こちらの発表も間もなくありそうだ。最終的にはレストランが、あたかもGoogle Adwordsのようにテーブル予約を競り落とせるようになるらしい。また、こちらのレストランの好みを把握してくれるLast.FMのようなスタイルのネットワークも目指している。

[Saul Kleinの講評]「この1週間で目覚まし進歩を遂げました。最初は目立たないアイディアでスタートしましたが、今では検索エンジンであり予約エンジンです。ここの起業家のことはとても気に入っています。目標をひとつに絞っていますし、やる気もあります。売り込みにこない時は、ロンドン観光ではなく会議をしているのです。スウェーデンの地元で投資は調達したようですが、10%に5万ユーロというSeedcampの条件にも飛びつく価値が十分あると見込んでの参加のようです。スカンジナビアの起業家はえてして大きな枠組みで物事を考え、野心的で真面目、でも決して傲慢ではない、そんな傾向がありますね。スカイプのファウンダーもあちらですが、イノベーションを育む素晴らしい土地です」

Buildersite

Buildersiteは工事専門のネット取引市場。家のオーナーと業者が安心して取引きできる場を目指してデザインされた。イギリス国内建設市場は現在£10bn (100億ポンド)もの取引きが行われている。ライバルのサイトが有望顧客の紹介(リード生成)までを主業務にする中、Buildersiteでは成約した場合だけ出来高べースで事業取引きの5%を手数料として課金する。要するに家のオーナーは全サービス無料で使えるというわけだ。さらに悪質な建設業者については素行を追跡しシステムから追放している。Buildersiteは2006年半ばにオープン。現在サイトには3000人もの業者が参加している。

[Saul Kleinの講評]「誰でも理解できる素晴らしい提案。ファウンダーのRyan Notzは自身も建設業者だったこともあり、この業界のことは知り尽くしています。彼らが相手にしている市場は、実際その市場規模を聞くと誰でも耳を疑ってしまうぐらい大きな市場です。対応可能市場の規模ひとつとっても、信じられないほどの規模でしょう。ビジネスの説明の仕方もすばらしく、すでに業者多数から契約をとっています。頭が良く、なんでも自力でやる行動力を備えた起業家ですね。Open Coffeeミーティングに参加した一人でもあります」

Rentmineonline

オーナーと借り手をネットの取引市場で結ぶ会社。借り手にはモノを、オーナーには資本を提供する。アイディアはeBayに似ているが、このビジネスモデルは購入ではなく飽くまでもレンタルが基本。

[Saul Kleinの講評]「ファウンダーのEd Spiegelは大学在学中に最初の会社を始め、事業開発のためシリコンバレーに行った人。そこに彼の粘り強さがうかがえます。バレーから今度はベンチャー投資分野のシニア・アソシエイトに転身し、投資家・社員として業界の内側からスタートアップを見てきました。全て自分のビジネスを立ち上げるです。会社を辞めビジネススクールに戻り、ブルガリアで条件に適うソフトウェア会社を見つけ、オランダに引っ越して事業を立ち上げボートを買い、ここを経営拠点としました。サイトはSeedcampで得たアドバイスを基に今週オープン。

事業案は“Web 1.0”的と言う方もいるかもしれませんが、90年代終わりには事業を立ち上げようにもまだ市場がなかった、そのころ日の目を見なかった分野が今頃になってビジネスの好機を迎えている、というのは皆さんご存知のことです。つまり、タイミングさえうまく掴めれば大きく育つ可能性は十分あるかと。Edが参入するのは信用ネットワークの分野です。Facebookと連動することで、彼の抱える信用ネットワークは既に3700万人に及びます。今、彼が飛び込もうとしているのは非常に大きなトレンド。斬新なアイディアでなくては通用しないという考え方はナンセンスです。大事なことは正しいアイディアを正しいタイミング、正しいスタッフで実現することですね」

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