Kindle: まずは触ってみた

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kindle-blogs.JPGAmazon Kindleのプレス会見(今日ライブブログをお届けした)の参加者全員が、この電子ブックリーダーを1台づつもらった。Jeff Bezosのインタビューを待つ間に、いろいろといじってみた。私の第一印象は以下のとおり。

FCCの写真で見たほどにはださくないが、たしかに不思議なレトロ感がある。1970年台最先端の特大電卓を思わせる。本物の本よりもずっと軽くて持ちやすい。裏側の大きなグレイのパネルがバッテリーのカバーになっていて、SDカードメモリのスロットはラバー仕上げで、そこに古代からのさまざまなアルファベットの文字や記号が刻まれていて、初めて文字が書かれた書字板をさりげなくあしらっている。

画面の文字以外はすべて白色で、これはデバイスが周囲に「溶け込んで」画面の文字以外のものに気を取られないため、ということなのだろうが、オリジナルiPodの白の後追いのようでもある。Kindleは言うなれば「本のiPod」で、Amazonのオンライン書店がiTunesの役割を果たす。

Kindleを使うには少々慣れが必要だ。テックオタクにアピールするつもりなのか、活字中毒者向けなのかわからない。多分後者なのだろう(以前の記事でのBezosの話参照)。両者が相応れないというわけではないが、このデバイスは読読体験を新しくしようというものであって、オンライン読者にとって当たり前のことをたくさん盛り込んだものではない。それが欠点になるのかもしれない。本にメモを書き込んだり、マーカーで塗ったりできるのだが、それを誰かと共有することは決して簡単ではない。あと、Amazonアカウントを共有しているのでない限り、誰かにこの電子ブックを貸すのは諦めた方がいい。デジタル著作権管理システム(DRM)によってデバイスの貸し借りは禁止されている。

画面は驚くほど読みやすい、ただし灯りは必要(ふつうの本と同じ)。ふつうのコンピュータの画面ではなく、モノクロのE-Ink画面だ。スクロールホイールで、画面右端のデジタルバーを上下されることができる。これがブラウザの右側にあるナビゲーションスクロールバーと同じかと思ったのだが、実際にはページをめくることはできない。そのためには「Next Page」と「Previous Page」ボタンを押さなくてはいけない。これにはちょっとイライラした(しかも、単にスクロールするよりも遅い)。さらに、この「Next Page」ボタンが左右両方にあって無駄に感じる。携帯電話などのソフトキーのようにカスタマイズすることもできない。

キーボードのレスポンスは私の指についてこない(CrunchGearのPeter Haも同じ意見)。タイプした文字が画面に表れるまで、かなり待たされる。かなり、といってもミリ秒単位のことだが、それても遅れは明らかだ。少なくとも私は、デバイスがキー入力を認識する早さ以上に入力することはできない。本来、読むための機械ではあるが、ウェブを見たり、メモやコメントも書けるのだからタイプする場面はあるはずだ。

このデバイスのよいところは、電子ブックを買ってから読むまでがスムーズなことだ。Amazonの本や、電子新聞、電子雑誌、ブログの有料購読などをデバイスから直接買うことができる。デバイスにはSprint EVDOカードが内蔵されている(WiFiはない)。AmazonはEVDOのデータアクセス権をSprintから卸して、Kindleと共にWhisperNetとして再販している。つまり高速データ通信がデバイスに「無料」でついてくる。おかげで、何を買うのも購読するのもスムーズだ。この部分は実にうまくいっている。

しかしこのためにAmazonは前金でかなりの負担を強いられているはずだ。私のSprint EVDOのデータプランは月額$60。これは消費者価格。もちろん、Amazonははるかに安く交渉できたはず。それでも、Kindle 1台につき月に$10だとしても、この通信費を回収するためだけに本の10冊も売らなくてはならない。おそらく、もっといい条件なのだろう、何しろこのデバイスは「ダウンロードして読む」という使い方であって、常時接続するものではないから。結局Kindleは大してバンド幅を使わないことになるのかもしれない。みんなが毎日新しく本をダウンロードするとは思えない。Amazonが月額$1で契約できているとすれば話はわかる。それなら客1人当たり本が1~2冊売れれば年間のワイヤレス通信料をカバーできる。Amazonは、ワイヤレス通信にいくら払っているかについては何も語っていない。デバイス単位でSprintに支払うのだとすれば、Kndleがバカ売れしない限り問題ではない。

電子ブックリーダーのほかに、実験的な機能がいくつか付いている。ひとつが、このテバイス用にカスタマイズされた限定版ブラウザーで、あらかじめAmazon.com(本ではなくデジカメが欲しければ、Kindleショッピングページのトップから買うことができる)、Wikipedia、Google、BBC News、Yahoo Finance、Weather Underground、Yellow Pagesなどがブックマークされている。

BloglinesなどのURLも自由に入力できる(ただし、Google ReaderにはJavascriptが必要で、Kindleのブラウザーがサポートしていないのでダメ)。ちょっとKindleをハックしてみた。New York TimesのRSSフィードや、TechCrunchなどのブログのフルフィードをこのブラウザーで無料で読むことができる。購読料を払ってダウンロードしなくてもよい。Kindleがどこかのパブリッシャーに購読料をもたらすことには大きな期待はできない。

それでも、こうして使えるウェブブラウザーが付いているということは、購読したフィードの中のリンクをたどれるということだ。さらに重要なのは、本の著者にリンクするという世界が広がること。これから本には引用文献だけでなく、リンクを付けることができる。電子ブックの形式を活かせる著者が、興味を持った読者のためのハイパーリンクを入れるようになれば、書籍全般としてウェブの文化と密接にかかわってくる可能性がででくる。本を読む、という行為が最終章では終らなくなる。むしろ、ウェブの情報の世界全体への入口にもなることができる、今のブログやオンラインニュースと同じように。

もうひとつクールな実験が「Ask Kindle NowNow」[今すぐ
Kindleに聞け] 。どんなことでも質問すれば、人間の研究者が答えてくれる。これは、AmazonのMechanical Turkというサービスを利用している。「Kindleについて最初に書いた人は誰ですか」と聞いてみたところ、数分後の回答で、2007年9月11日のEngadgetの記事が「早い記事」として紹介された。この記事はたしかにKindleのGoogle検索で上位にでてくるが、New York Timesがこの記事を9月5日に載せている(これも初めてKindleのことを書いた記事ではないかもしれない)。というわけでNowNowはいい線は行っているが、ベストの回答はくれなかった。しかし、タダにこれ以上何を望もうか。

Kindleは電子ブック分野にとって間違いなく一歩前進だ。ただし、今年のクリスマスでの大ヒットは期待できない。これはAmazonの長期戦略だ。現物の本を郵送しなくてすむためなら、どんなものでもするし、デジタル販売のマージンはおいしすぎる。デバイスの話ではない。デジタルブックをネットに流すことだ。今後、新しいKindleがでてきることは間違いない。そして、この1号機にはすぐに古風な趣を感じるようになるだろう、あの初代のデカイiPodと同じように。

CrunchBase:Amazon

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(翻訳:Nob Takahashi)