アツモノに懲りた旧世代の起業家たち

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現在のシリコンバレーの起業家は2種類に分かれる。(私は大まかなスケッチをしている。付き合っていただきたい)。 最初のグループは旧世代だ。90年代後半から2000年の株式暴落までの間に起業した人々だ。2番目のグループは、その頃まだ学生だったか、別の分野で仕事をしていて、株式市場の崩壊後に起業した人々だ。

一般的に言えば、経験は有益だ。だから浮き沈みを経験した旧世代の起業家のほうが、新しい世代に比べて優位なはずだ。悪くても成功のチャンスは新旧世代で同等と思うのが普通だろう。しかしどうもこれは逆らしい。多くのベンチャーキャピタリストが「旧世代の起業家はビジネス上の決断で大胆さに欠ける。その結果スタートアップの運営にマイナスなっている」と私に話した。

この話題を私に最初に指摘したベンチャーキャピタリストはCRVのSaar Gurで、最近のカンファレンスで会ったときだった。それ以来私は何人ものベンチャーキャピタリストに同じ質問をぶつけてみた。すると大部分の相手が同意見だった―バブル崩壊以前からの起業家は用心深すぎて、ビジネスにマイナスになっている。

古き良き「ロックンロール」の時代

古き良き時代があった。ベンチャーキャピタリストは札束を見せびらかし、こんな浮かれた状態がいつまで続くのか多少不安に感じながら、起業家に金をできるだけ早く使ってしまえ、とけしかけていた。文字通りにだ。ゴールは四半期の売り上げ100万ドル。そうしたら株式上場の手続きに入る。ひとたび株を公開すれば市場がどんどんはやし立ててくれて、末は10億ドル企業も夢ではなかった。

つまり資金を集めたら、手の届く限りの人間を雇って、売り上げが立てられそうな提携にどんどん金をつぎ込むという戦術である。この提携というのがたいていは利益を生まないようなものだった。たとえばAOLに対して年間$10M(1000万ドル)払って、AOLユーザーへなにがしかアクセスの権利を得るというようなことをやっていた。それで年間100万ドルか200万ドルくらいの収入にしかならない。しかし取締役会はそんな提携でもどんどん承認していた。結局トータルで800万ドルから900万ドルの損失になるわけだが、それを「マーケティング経費」として落としていたのだ。株式市場は、売り上げしか見ないのでそんな手が通用した。資本はあり余っていた。売り上げさえ立てばよかった。2ドルの売り上げを得るのに10ドル使ってもよかったのだ。

私自身、こういう取締役会に企業の弁護士として何度も出席して、そういった決定が下されるところを直接見てきた。だいたいにおいて、「どんな犠牲を払ってでも成長させろ」と要求するのがベンチャーキャピタリストで、起業家はそれにひたすら忠実に要求に従っていた。

なにがなんでも売り上げを確保しろという強い圧力は、後で考えれば、起業家におよそバカげた決定をさせることがあった。そしてついに2000年4月14に株式市場の暴落が始まった。金をばらまく決定の後で、起業家たちは雇った人間の大部分―あるいは全員をレイオフせざる得なくなり、インターネット・バブル崩壊を記録するウェブサイト、FuckedCompanyに取り上げられて嘲笑を浴びせられる羽目に陥った。

これは相当のトラウマを残した。

新世代

バブルの破裂を経験していない新しい世代は、そういったトラウマの重荷を背負っていない。彼らは社員に面と向かってレイオフを言い渡した経験もなく、FuckedCompanyで愚かしい決定を嘲られたこともない。彼らはおおむね起業家がそうあるべきようにオプティミストだ。若い世代は過去をひきずっていない。

新世代は大きな成功のためにリスクを取るという起業家として当然の決断をする。これはベンチャーキャピタリストにとっていちばん重要なポイントだ。ベンチャーキャピタルが出資者を満足させるためには大ヒットがひとつ、ふたつ、どうしても必要なのだ。臆病な起業家はここぞという時に大きなリスクを取らず、そうなると成功の可能性は薄れてしまう。

私自身は間違いなくバブル崩壊に毒された旧世代に属する。最初のバブル崩壊でスタートアップを襲った悲劇を見ているので、私は外部からの資金調達に乗り気になれず(結局一度もしていない)、人をたくさん雇う気になれず、一般的に金を使う気になれない。(いまだにTechCrunchのオフィスは私の自宅だ)。私は成長を望むより今までに築いたものを失うのを恐れる気持ちのほうが強い。これが私がHeatherをCEOに雇った理由の一部でもある。彼女は慎重なほうだが、一方でビジネスを成長させるためにリスクを取らねばならないときがあることを心得ている。

私のEdgeioに対する決断もこういった背景から来たものだ。Edgeioは私が共同で創立した会社だが、先週deadpool入りした。思い返すと、私は取締役会でいつも同じことを言っていたような気がする。「金を使うな。人を雇うな。あれをするな、これをするな…」。私は少数派で、会社は独自の道を歩んだ。会社が結局失敗に終わったことは、もちろん、私が正しかったことにはならない。投資家は会社の成長に必要なチャンスは今だと判断して金を使うことを試みたわけだ。Edgeioという1企業の成功、不成功は問題にならない。問題は、大きな仕事をしようというならこれが正しいアプローチだということだ。慎重すぎる性格ではシリコンバレーの起業家にはなれない。

とはいえ、リスクを取るというのは現実に必要な額を超えてまで金を集めることを意味しない。4人で十分できる仕事に20人を雇いいれる必要はない。まして、小額の売り上げを立てるために巨額の損失を出すような愚かしいアプローチを意味しない。

しかし、必要とあらば資金を調達し、人を雇い、乾坤一擲の精神で大胆にビジネスを拡大しなければならない。そういう大胆な起業家だけが世界を変え、孫末代にまで巨大な信託資産を残すような成功を収めることができる。そのような起業家こそシリコンバレーを世界の中でかくも特別な場所にしているのである。2000年に何が起きたか忘れてはならない。しかし同時に、いまここでリスクを取り全力で前へ進むこともまた忘れてはならないのだ。

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(翻訳:Namekawa, U)