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いちばんオープンなのは誰か?

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door.jpg2007年を振り返ってみると、「オープン化」の波に巻きこまれてつまづく企業が今までになく多かったことに気付く。「オープン化」は今やマーケティング上もっとも重要なお題目になっている。Facebookは5月に外部のデベロッパーに対してAPIを公開することによりSNSのオープン化の先鞭をつけた。Googleはこれに対してSNS用アプリケーションのオープン・プラットフォームOpenSocialを提唱することでFacebookにオープン化で一歩先んじようとした。 (OpenSocialはFacebook APIよりさらにオープンなのは事実だが、それでもまだ十分にオープンではないと考える人々もいる)。Googleはまたオープンソースの携帯OS、Androidを発表、これによってVerizonやAT&Tのような閉鎖的な古い体質の携帯キャリヤもオープン化のカードを切ることを余儀なくされた。オープンソースによるブログ・ソフトWordpressの成功に押されて、Six Apartはとうとうライバル製品のMoveable Typeのオープンソース化を決めた。これらはほんの一例に過ぎない。

製品やサービスをオープン規格の上に築くことはテクノローの世界ではもっとも気高い行為とされている。少なくともオープンソース戦略は企業にとって消費者、開発者、提携他社の人気を得るのにもっとも簡単な方法の一つだ。これには十分な理由がある。そもそもインターネットは当初からオープン規格の上に築かれてきた。さらに今日、ウェブ・サイトをスタートさせるコストがこれほど低下しているのは、Linux、Apache、MySQその他のオープンソース・テクノロジーのおかげである。

さらに重要なことは、オープン規格の技術は(技術的に正確に言えばオープンソースではなくても)、スタートアップその他のサードパーティーが作業する上で〔固有技術に比べて〕本質的に魅力が大きい。テクノロジー・プラットフォームを成功させるためにもっとも有効な方法は、できるかぎりオープン化して、サードパーティーの「固有技術に囲い込まれて将来身動きができなくなるのではないか」という懸念を拭い去ることである。さらに、オープン化は互換性の面からも有利である。Webではあらゆるパーツに互換性が必要とされる。これがオープン規格が広く急速に普及する強い動機となっている。携帯でウェブ・サービスがいっそうひんぱんに使われるようになると同時に、携帯ネットワーク技術に対するオープン化の圧力が増してきたのは決して偶然ではない。

しかし騙されてはいけない。企業はどの分野をオープン化するか、きわめて慎重に選んでおり、自社の収益のドル箱部分を自発的にオープン化するようなことはまずない。たとえば、iPhoneがどれほど人気の高い製品であるにせよ、Appleが外部のデベロッパーに対して伝統的な閉鎖的で強く管理されたアプローチを取っていることは否定できない事実だ。(もっともAppleは近々iPhoneのテクノロジーをデベロッパーに開放するとしているが)。またAmazonはeブック・リーダーのKindleを開発する際、ビジネスモデルにはAppleのiPodを範にしたクローズド戦略を取った。(Kindleは今のところAmazonからデジタル書籍をダウンロードできる唯一のリーダーだ)。これについても、Amazonに対してもオープン化を求める声が出ている。

接続性の要求や業界の圧力によって、オープンテクノロジーの採用を迫られる企業が多いからといって、オープン化が利益に直結するものだと誤解してはならない。オープン規格はたしかに新しいテクノロジーの普及を助ける上で効果があるが、それがただちに利益を生むことにつながるわけではない。企業は自社の競争力が十分でない分野を選んでオープン化を行おうとする。たとえばGoogleの場合、SNS、携帯、ウェブ・アプリケーション、その他事実上あらゆる分野でオープン化の旗を振っている―ただし、Googleがドル箱としている分野だけは例外だ。Googleのオンライン広告システムは完全なブラックボックスである。またGoogleの全ての広告収入を支える基盤である検索アルゴリズムがオープン化されるという話も聞いたことがない。これに対してGoogleがオープン化を声高に主張しているのは、(オープン規格によって既存のビジネスモデルを打ち壊し、広告モデルに置き換えることができれば)Googleにさらに大きな収入をもたらす可能性がある分野に限られている。

そういう事情を考えれば、一般に、既存の大企業よりスタートアップの方がオープン化を歓迎することは不思議ではない。オープン規格はそのマーケットへの参入障壁を下げ、多数のプレイヤーに活動(と協力)のチャンスを与える。すでに成功している大企業は失うものが多いのでオープン化に抵抗するのが普通だ。AppleがiPhoneのオープン化にきわめて慎重なのがよい例だ。多大な努力を払って築き上げてきたiPhoneの優れた使い勝手を、不用意にサードパーティーに開発を許して、質の悪いアプリケーションで台無しにされたくないとAppleは考えている。iPhoneのこれほどの成功の原因の大きな要素として、iPhoneの作動に関してAppleがすみずみまで完全にコントロールして品質管理を行ってきたことがあげられる。オープン化と品質管理は相反する場合があるのだ。
もちろん、大企業にしても皆が皆、オープン化の流れに乗れないできたというわけではない。この点ではIBMが素晴らしい例だ。IBMはLinuxを始めとするオープンソース技術を支援し、従来IBMが競争に失敗してきた分野(たとえばOS)でオープンソースをベースにして(エンタープライズ・ソフトやITコンサルティングなどの分野で)巻き返しを図り、ビジネス的に大きな成功を収めている。これも企業それぞれに〔オープン化する〕分野の選択が重要だという例といえるだろう。

ここでAmazonのKindleをもう少し詳しく検討してみよう。AppleのiPho
neの場合に比べ、AmazonはKindleのオープン化によって得るものが多い。iPhoneの売り上げ自体が収益源となっているAppleとは異なり、Amazonはデバイスそのものではなく、そのデバイスで利用されるeブックの売り上げが収益源だ。(この点Appleは正反対で、iTunesストアからのダウンロードではほとんど稼げていない)。ユーザーにとってのKindleの魅力は$300のデバイス(たぶんこの価格ではAmazonは赤字のはず)そのものではなく、その上で展開されるサービスにある。これもAppleと違う点だが、Amazonはインダストリアル・デザインはあまり得意ではない。オープン化してサードパーティーがKndle互換のリーダーを作ることができるようにすれば、もっと優れたデザインの製品が登場する可能性もある。eブック・リーダーが市場でより多く売れれば、それだけAmazonでeブックが売れるはず。

企業がオープン化を自慢するのを聞いたら、その会社はオープン化でどうやって金を儲けるつもりなのかを考えてみるとよい。つまるところ、オープン化は慈善事業ではないのだ。

(画像: j/f/photos

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(翻訳:Namekawa, U)