Yahoo、音楽事業で大転換の予兆

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Yahoo Musicが間もなく大型の新サービスを始める方向で動いている、という専らの噂だ。

試しにYahoo Music製品開発部門VPのIan Rogersが先月行ったプレゼンの概要に目を通してみたが、なるほど噂通りかもしれない。:近々Yahoo Musicで何か新しくて面白いことを始めるので期待して欲しい、とある。

背景をちょっと説明しておこう。

このRogersはYahoo Music元GMのDavid GoldbergとともにDRMマシン撤廃を積極的に呼びかけた音楽業界のインサイダーの一人だ(私は昨年初頭この2人に同時インタビューを断行した)。

Rogersは昨年10月、ミュージック産業の良識を問う熱弁を披露した。「不便の押し付けはいいかげんにしろ」[原題“Inconvenience Doesn’t Scale”]と語り、楽曲共有を広めたNapsterを訴えるのは「重力という概念を一般に広めたからといってニュートンを投獄するようなものだ」と主張、もうこれ以上Yahooに欠陥だらけの楽曲モデルに投資はさせない、という捨て台詞で演説を締めた。具体的に彼が欠陥モデルとして挙げたのは、好きな曲がなんでも聴ける購読モデルだが、Yahooは既にこのサービスの大手プロバイダーだ。

最新のトークでは更に踏み込んで、最初のパートでは前のプレゼンの焼き直しで、「リアル世界のビジネスモデルをそっくりそのままデジタル分野に応用しといて、なんで通用しないんかね、と首をかしげている。これじゃあまるで酸素・重力の調整もせず月面で普通に暮らそうと頑張るようなものだ」と主張した。また、こちらのスライドでは、iTunesも旧態然たるビジネスモデル(表計算で表現)と楽曲コンテンツ所有を応用したものに過ぎないと説明し、世の中の人たちはレコード会社が聴けと言ったものを聴くだけでは嫌で、やはり信頼できる相手が自分にすすめてくれるコンテンツを消費したがっている-とした。

さらに今回はもっと先まで進んで、「われわれは今、Yahoo! Musicとは何か、その定義を一からやり直し、これをYahoo!の成功イメージを担う楽曲デスティネーションにする作業に取り組んでいる最中だ」と話した。またYahooは単なる楽曲小売業者ではない、今もそうだし将来も変わらない、とも示唆している。

つまり、なんなのか? 

彼が王道と崇めるのは、コンテンツ(レーベルが管理するもの)とコンテンツ(Last.fmの人気曲、 MySpaceコンテンツ、新曲についてのブログ記事など音楽の情熱を軸に生まれた素晴らしいユーザー生成型コンテンツすべて)の融合である。そんな活用度の高いコンテキスチュアルな情報の泉があれば、みんなも自分の聴きたい曲の判断がつき易くなる。というわけで、この目標に向け彼はオープン規格の進化を呼びかけている。つまりメディアを「第一級のHTMLのオブジェクト」とし、メディア・オブジェクトのコレクション(プレイリスト)の記述法で合意を図り、ユーザー情報共有の標準を設け、サービスの定義づけを行うことだ(複数サービス間で行うメディアの検索・分析、購入あるいは供給)。

Yahooがこの方向に動きたがっているのはハッキリしている。というのも、Yahooの楽曲サイトにはせっかく素晴らしいコンテンツが揃っているのに、どん詰まりの購読サービス以外なんにも小売機能がないのだ。そのYahooが楽曲販売合戦に参入を望んでいるとは思えない。Rogersがプレゼンであれだけ言い切った、ということもあるが、それだけじゃなく楽曲販売というのは無茶苦茶マージンが低い商売だし、売る代わりに…これはただ常識で想像して言ってるだけだがYahooは楽曲購入・再生・管理・共有を取り巻くオープン標準の実現推進努力の先鋒に立ちたがっているのだろう。  その方向で進んでいなかったら、あのプレゼンは意味をなさない。

プレゼンの終わりで取り出したスライドセットで彼は、ユーザーがヤフーで楽曲を発掘し、アマゾンの購入にリンクし、またヤフーに戻って曲を管理する利用例を見せた。推測だがYahooはまさにこれをやろうとしているのではあるまいか。 楽曲購読サービスは捨て(この事業モデルにはかなり深い欠陥があり、ユーザーの大量確保にも失敗したとRogersは以前語っている)、代わりにアマゾンのようなサードパーティーの楽曲DLサイトを宣伝するのだ。 あるいはこれは、どんなサービスでも参加できるようなオープン標準のセットを介して行うのかも、という想像も成り立つ。 Yahooは世界最大の楽曲サイトだから、他社を引き込んでもまだ帳尻が合うはず。オープンな世界であってもユーザー数のかなりのシェアは、なんとかキープできるだろう。

Yahooがローンチ前に本プロジェクトの電源を抜いてくれたら、という気持ちも半分ある。実言うと私が一番見たいのはRogersがYahooを辞め、己の信じる原則を基に一切の妥協抜きでスタートアップを立ち上げるところなのだ。それなら、だいぶ見応えがありそうだ。

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(翻訳:satomi)