音楽業界最後の抵抗は音楽税

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アマゾンのDRMフリー楽曲にSony-BMG参加、4レーベル出揃う

音楽産業は自らの業界の基本経済をいよいよ無視できなくなってきた。著作権を行使できないこと(みんなを訴えることはできない)、そしてゼロマージンの製造コスト(ファイル共有は異常なほど簡単)。ビッグレーベルはどこもDRMを諦めた。楽曲に課金することはまだ諦めていないが、そこに無料の選択肢(ファイル共有)が存在する限り、音楽の価格は無料に向かって下がり続けるしかない。

録音された音楽の値段がタダやタダ同然になることが「フェア」であるかどうかについては異論があるかもしれないが、そうなっていくことに異論を挟むことはできない。去年の10月に私の考えをここに書いた。そして、RadioHeadのアルバムが無料で配られてもまだ、BitTorrentで大量にファイル共有されるのが止むことはなかった。さらに近いところでNINのTrent Reznorががっくりきたのは、新しいアルバムをダウンロードするのに「無料」と「$5」(「直接アーティストをサポートしていい気分になる」ことができる)のどちらかを選べるようにしたところ、$5払った人がたったの18.3%(5人に1人以下)しかいなかったことだった。

個人的には、レコード音楽は無料、ライブは有料という新時代はとてもいいと思っている。レコード音楽は、コンサートや商品を買ってもらうためのマーケティングツールになる。全体でみれば音楽業界の収益は縮小していくだろう。しかし、自分のアートを追究するアーティストはそれを続けていくだろうし、多くのアーティストはそれで十分に稼ぐことができるだろう。

ところが、そうなる前に音楽業界はその「肥大化した官僚機構」を守る最後の抵抗に出るようだ。そしてそれは音楽税を導入して収益を保証しようというものだ。

Reznorは今日、こう訴えた、「ISP税のようなものがあれば、消費者にこう言えるはずだ、『どの楽曲でもダウンロードして、クルマでもiPodでもどこにでも入れてることができて、料金はケーブル料金に$5課金されるだけです』」

この話が出たのは今回が初めてではない。1年以上前、Peter Jenner(ピンクフロイドの初代マネージャーであり、The Clashをはじめとする大物アーティストのマネージャー)が要求したのは、EU内のブロードバンドインターネットと携帯電話に対して月間4ユーロの税金を毎月強制徴収して、消費者はDRM無しの音楽を無制限にダウンロード利用できるというものだった。私がこの案を攻撃したところ、こんな反応があった。

Mathew Ingramによると同じような動きがカナダでもあるようで、カナダ作曲家協会が先月、月額$5のISP音楽税を要求したという。

今のところはまだ様子見という感じだ。大きく動くのは、ビッグレーベルがロビー活動に資金を注ぎ込むときで、ここ数年のうちに起きるだろう。

音楽税は音楽からイノベーションを奪う

欲しくもない人にまで音楽を買わせることで、この問題は解決できない。そんな仕組みから生まれる動機は不純なものでしかない。売上や利益が保証されれば、新しいことをやったりニッチ市場を相手にするインセンティブなどなくなってしまう。これは音楽の死を意味する。

音楽業界はどんなタイプや品質の楽曲を出そうが、売上規模は一定になる。革新的なことをするインセンティブは消滅するだろう。あるのは市場シェアの奪い合いだけで、市場の拡大やあまり人気のないニッチを相手にすることはなくなる。レーベルが新ブランドを立ち上げて新人アーティストを育てるなどというのは過去のこと。既存の大物にできる限り稼がせて、あらゆる新しいレーベルやアーティストやソングライターの市場参入を阻止するだろう。新規参入は限られた原資の取り合いが激化するだけだ。既存のプレーヤーによる談合は目に見えている。

レーベル各社はすぐにこの収益では事業が立ち行かないと文句を言って、増税を要求するだろう。上がったものは二度と下がらない。

前にも言ったことだが、死にかけた産業の復興を政府に頼るという発想は、必ず(必ず)ろくなことがない。今回に関していえば、歴史に残るばかばかしくて危険でどうしようもないアイディアだ。

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(翻訳:Nob Takahashi)