ヤフーが取るべき急進的オプションは「グーグルよりオープンになること」

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前に岩、後ろにグーグル。窮地に挟まれたヤフーが本日(米国時間2/8)、マイクロソフトの$44.6B(446億ドル)の買収提案を受けるかどうか役員会で決議する

ヤフーの取るべき選択肢はただ2つ。避けられない提案を呑んでマイクロソフトと組むか、検索をグーグルにアウトソーシングするかしかないとここでは書いた。どっちに転んでも敗北を認めることに変わりはないし、どちらもそれなりに問題は山とある。が、ヤフーにはもう一つオプションがある。それは検索を真にオープンなものにしグーグルに打撃を与えることだ。僕の言わんとすることが何かは後回しとし、まずは誰の目にも明らかな選択肢2つをザッとおさらいしてみよう。

グーグルに検索を譲れば短期的には利益は増大する。なんと言ってもグーグルは検索1件につき2倍のマネーを搾り出すことができる会社なのだし。でも長期で見た場合、この戦略はヤフーを長い長い忘却の道へと追いやりかねない(AOLを見てごらん)。それよりはマイクロソフトと合併した方が良いのは自明だが、それだけでは不十分という可能性もある。

大企業同士の合併は成功より失敗に終わることが多い。特に両社の業務を統合する場合、互いに別種の業務を補足し合うより失敗率は上がる。マイクロソフト過去最大の合併実績はGreat Plains Softwareの吸収合併だが、あれが成功したのはひとえにマイクロソフトが2年間独立経営に任せて相手先企業を放置しておいたお陰。ヤフーはそうはいかない。

合併となれば衝突は必至だ。統合は荒療治を伴い、合併後の企業運営にも遅れが生じるだろう。マイクロソフトもヤフーも官僚的組織を抱えている会社である。合併した途端いきなり、すばしっこく機動力が増すとは誰も思わない。

それもこれもマイクロソフトにとっては問題ではない。この買収の根底には2社で手と手を携えて広告プラットフォームとウェブ・パブリッシャーとしてのスケールを確保しようとの思惑が働いている。ウェブページとトラフィックはあればあるほど自社が取り扱う広告インベントリは増すのだ。

今は誰もが検索に注力している。何故と言えばグーグルが支配的優位を確保している領域が検索だから。が、しかし忘れてならないのは検索広告がインターネット広告全体の収入の約40%を占めるにしても、まだ3分の1ぐらいはディスプレイ広告なことだ。そしてそっちはヤフーが最強なのだ。マイクロソフトはグーグルのDoubleClick買収が成立する前に、なんとかしてこのディスプレイ広告のインベントリを増やさなくてはならない。検索が立て直せるならそれも予想外収入だろう。

ディスプレイ広告の分野はまだ勝負が決まったわけではない。マイクロソフト-ヤフー合併により、この分野における対グーグルの競争も進めやすくなるだろう。が、検索をライバルに譲るオプションは論外だ。ディスプレイ広告は最近ますます広告検索のようなコンテキスト連動型広告、ターゲット広告に近いものになっている。市場もこれからは(検索広告とディスプレイ広告の)2つが不可分となる。広告主はひとつのCMキャンペーンで両方の広告の買取りを希望するだろう。そうなれば、広告システムがこうしたものに対応する設定になっているヤフーが今度は優位に立つ。

ここで最初の疑問に戻る。ヤフー、あるいはヤフー-マイクロソフト連合はどう検索に食い込んでいけるのか?

グーグルは四半期ごとに検索の市場シェアを伸ばしている。一見止まるところを知らぬ勢いだ。ヤフーとマイクロソフトの今の検索推進努力を一つに合わせても、この流れを覆すことはできまい。結局犬1匹でできないことは2匹合わせてもできないのだ。しかし、時間はかかるがヤフーにはこの全体の流れをターンアラウンドできる道もある。検索をラディカルに公開してしまうこと、だ。

グーグルと戦う唯一の道は、自社独自の武器を使って相手に攻撃を仕掛けることだ。グーグルは今競争していない分野でオープンな標準を抱え込むことで新市場に参入はしているが、こと検索と広告(グーグルの金儲けの仕組み)のことになるとブラックボックスだ。もしヤフーが検索を本当の意味でオープンにしたら、社外にいる何万人というデベロッパーたちの力を結集し何万という前線でグーグルの切り崩しを図ることができるだろう。

集団の力を合わせて果たしてグーグルよりベターなアルゴリズムの決定版一つに行き着けるかどうかは大いに議論の余地がある。が、今よりベターなアルゴリズム複数に行き着けるのは間違いない。—特定タイプの検索に特化したベターな検索エンジン(情報vs.処理など)や特定ニッチ分野のエンジン(健康、旅、ビジネスほか)など。企業家はヤフーのインデックスを使い、これを土台に全く新しい検索手法も創出できるだろう(セマンティック検索、ソーシャル検索など)。やがてヤフーはこうして出た検索エンジンからベストな果実を摘み取り、それをヤフーの公式検索エンジンに組み込んでもいいし、ネットのいたるところにある何千もの異なる検索エンジンにただ検索広告を販売するのでもいい。サイト1個1個に、そのサイトのオーディエンスに特化したカスタマイズの検索機能が備わる場面を想像してみるといい。これまでもこれと同じ試みはあったが、いくつかの理由で頓挫している。

ヤフー元エグゼキュティブが、「ヤフーがすべきことはただ検索APIを公開し、誰でも広告抜きでヤフーの検索を使えるようにすること。その上で広告は後でついてくるよう指折り願うことだ。つまりグーグルよりオープンになることだよ」と僕に話していたように。試したところで何を失うというのだろう?

「いや、待て。ヤフーとグーグルはもうやってるんじゃなかったっけ?」―というと、実はそれほどでもないのだ。なるほどヤフーは検索用の公開APIを持っている。ヤンCEOのターンアラウンド戦略もヤフーをもっと広く一般の開発者に公開することが信条だ。が、ヤフーが公開している検索APIは検索クエリーが1日最大5000件に制限されており、それを越えるとヤフーと特別な契約交渉が必要となる。そんな特別契約をヤフーと交わしているスタートアップのあるCEOは僕にこう話していた。「ヤフーの未加工データにもっと触れることができたら、有料検索の結果へのアクセスも今より良かったら、コンバージョンレートとかその背後のデータも含めてね、…そしたらものすごく助かるでしょうね。今は僕らが現実に入手できる情報量にも制限が加わってますから」

APIが公開になったことで、ヤフーの検索結果を他の結果とマッシュアップしたり、自分独自のアルゴリズムで検索結果に一捻り加えることも技術的には可能となった。ところが、ヤフーではデベロッパーに「ヤフーが後援する検索エレメント以外のもの」はいかなるものも使用を禁じている

グーグルはどうかと言うと、こちらもやはり独自の検索APIは持っているのだが、グーグルの検索結果を引っ張ってきても順番の並べ直しは許されていない。また、検索結果にはグーグル広告の表示が義務付けられている。

検索でボールを前に進めたかったら一般の人にもランキングの入れ替えをさせることがキーだ。ヤフーはウェブのインデックス技術と基礎検索アルゴリズムで非常に価値の高いアセットを抱えている。ここを土台に他の人たちに改善を委ねること。それが長期でグーグルに勝つ唯一の道だろう。グーグル最大の強みは全能のアルゴリズムだが、これは同時にグーグルのアキレス腱でもある。来る人拒まず自社の検索結果をみんなにオープンにすれば、その(グーグルの)ビジネスモデルは破壊できる。ヤフーにしてみれば失うものは小さく得るものは大きい。ヤフーの通常の検索結果を不正操作できるまで情報を与え過ぎないよう注意はもちろん払う必要があるが、それは技術的に実現できる方法もある。

これは容易い道ではない。長期のコミットメントも必要だ。今の段階ではヤフー株主からそんなコミットメントを取り付けられるとも思えない。取締役会も既にヤン、デッカー率いるヤフー経営陣に痺れを切らしているようだし、Yang & Co.にこの長期の牽引を委ねるほど確信はもうないかもしれない。しかしもっとラディカルにこんな案はどうだろう? : 買収後マイクロソフトがこの戦略を採用するとしたら、さて?

オープンネスがマイクロソフトの血と相容れないのは間違いないが、マイクロソフトなら検索部門も現収益に占める割合は微々たるもの。ヤフー以上にさらに検索をオープンにしても間に合う余裕がマイクロソフトにはある。繰り返しになるがオープンネスを戦略上の武器に使う上でキーとなるのは、自分が競争していない分野か、競争があまり効率的に進んでない分野でガバッとオープンになることだ。マイクロソフトは「変革のための(transformational)」買収と言うが、それが本当ならグーグルの後追いに甘んじるだけでなく、やはり検索業界全体の変革を図るチャンスに打って出るべきだ。

オープンネスを受け入れれば、別の面でもマイクロソフトは変わるかもしれない。スタートアップ各社はグーグルほどマイクロソフトのことは恐れていないが、それでもまだマイクロソフトのことは信用していない。 検索をオープンにすると真摯に約束すれば、あの(バルマーが汗だくで礼賛した)「developers, developers, developers」のデベロッパーたちの心を鷲掴みにする長い道のりに踏み出せるだろう。YES。スティーブ・バルマー的には身の毛もよだつ話かもしれない。しかしこれは同時に、ヤフーに再び活力を取り戻し、マイクロソフトに再び活力を取り戻す方策なのだ。ことによるとシリコンバレー全体にも、これで再び活力が取り戻せるかもしれない。

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(翻訳:satomi)