録音された音楽でいつまでも昔どおりの金が取れると思っているミュージシャンは頭がおかしいんじゃないのか?

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どういうわけでイギリスからは音楽産業をいま以上にむちゃくちゃにするようなナンセンスなくだらない考えを抱くミュージシャンが出てくるのか?

今日の New York Timesで、イギリスのミュージシャンBilly Braggは「Beboの$850M(8億5千万ドル)という売却価格の一部はこのサイトに音楽をアップロードしたミュージシャンに支払われるべきだ」と主張した。

しかしBraggが、音楽をアップロードしたのがミュージシャン自身(とそのレーベル)であり、彼らは(もちろん無料でBeboの数千万人の音楽愛好家にアクセスしてプロモーションができたことを除いて)いかなる報酬も得られないことをあらかじめ十分承知していたという事実を、巧みに素通りしていることは見逃せない。

Braggの議論は、Beboの成功はサイト内でストリーミング配信された音楽に支えられていると考えるところから出発している。「Bebo.comに作品を投稿したミュージシャンは、スタートアップ企業の投資家となんら変わることがない。…事業が巨大な利益をもたらしたいま、彼らがその配当に与るのは当然だ。

Braggはさらに、Beboの成功に自分が直接貢献していたと主張する。

Birch氏は、私がアーチストに対するBeboの態度に影響を与えたと認めている。彼とは2年前、私がMySpaceの所有権条項について批判をした後で会ったことがある。私は、このサイトが正規に契約を結ばないままオリジナル曲を投稿したミュージシャンの著作者人格権を収奪しているのではないかという懸念を持っていた。私の主張の結果、MySpaceは契約と条件を変更し、サイトに投稿された全てのコンテンツ素材に関する権利はすべて著作権者に帰属することを明記するようになった。

数週間後、Birch氏が私の自宅を訪ねてきた。音楽のホスティングで彼の事業を拡大させたいので、ミュージシャンが作品に対する権利を失う心配をせずにオリジナルソングを投稿できる、アーチスト中心の環境をつくるにはどうしたらよいか、アドバイスを求めた。私との話し合いの後、Birch氏はメディアに対し、Beboをアーチストのために働き、アーチストの利益を何よりも優先するサイトにしたいと語った。

Braggは、主として(1) ソーシャルネットワークは著作権を侵害しつつ曲をダウンロードする人々と同じくらい音楽セールスを減少させるのにあずかって責任があり、(2)曲のマーケティングに協力しているのだからソーシャルネットワークはミュージシャンに恩恵を与えているのだという議論は不当だ、と主張しようとしている。

この主張はどちらもにもBitTorrent(ファイル共有ソフト)のストリームを楽に通せるほどの大きな穴がある。

ソーシャルネットワークは、音楽セールスの落ち込みとは断じて無関係だ。録音された音楽が限界費用ゼロで複製可能であるという事実が、音楽セールスの減少の原因なのである。嫌悪しようと歓迎しようと、動かしているのは単純な経済原理だ。

それに、ソーシャルネットワークがアーチストに無償でマーケティングを提供しているという議論は不当とはいえない。それどころか、実際にはまったく正しい。Braggはラジオ放送局が、明らかにアーチストに無償のマーケティングを提供しているにもかかわらず、同時に対してロイヤリティを支払っている、と述べている。

まずこの議論はまったく事実として間違っている。アメリカでは、放送に伴う著作権料はラジオ放送局からソングライターに支払われるのであってアーチストに支払われるわけではない(年間$450M=4億5,000万ドルになる)。他方で、アメリカ以外の世界の大部分では、アーチストにもロイヤリティが支払われる。しかし、ラジオ産業を分析してみてもっと面白いことは、音楽レーベルやミュージシャンのほうが金を払って曲を放送してもらいたいと切望していることだ。Payola〔DJなどに金を払って曲を流してもらうこと〕は現在非合法だが、この種の行為はほぼ確実に続いている。2005年に、当時ニューヨーク州の司法長官だったEliot Spitzer〔コールガール・スキャンダルで辞任した前州知事〕は、payola関係の犯罪を摘発している。

録音された音楽は、アーチストの認知を高めるためのマーケティング素材でしかない。音楽をリスナーに届けるウェブサイトはアーチストの利益に貢献している。実際、それはアーチストが現在(将来)報酬を得ることができるように手助けをしている。若いアーチストやソングライターはとくにこうしたサービスの受益者である。つい2,3年前までは、レーベルがプロモーションしてくれなければメインストリームに登場する手段は皆無に近かった。ところがこの壁がSNSによって崩されたことについてBraggは厚かまししくも不平を言っている。

私はBraggがこの記事を書いた動機は、かつて会ったことがあるBeboの共同ファウンダーMichael Birchが、途方もない成功を収めたことに対する嫉妬だろうと思う。上に引用したパラグラフで、Beboのビジネスモデルの確立に自分が貢献したと我田引水的に語っているあたり、その点に関する彼の焦慮を露呈している。BraggはBeboの8億5千万ドルの売却代金とはまったく何の関係もない。それ以外にも彼がこの記事に書いたことは、全てどうしようもなく間違っている。

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(翻訳:Namekawa, U)