Adobeの「Open Screen」プロジェクト―FlashをPC、携帯、TVの事実上の標準に強力プッシュ

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AdobeはFlashをPCにおけるWebの表示ばかりではなく、携帯、テレビ、その他ありとあらゆるスクリーン表示の事実上の標準(de factstandard)にしようとする大規模なプロジェクトを開始した。Adobeはデベロッパーが複数のデバイスにまたがるアプリケーションを開発するのを容易にする「Open Screen Project 」を発表する。もちろんこれにはFlashが利用される。Adobeのプラットフォーム・ビジネス(Flash/Flex、AIR、Cold Fusion)のゼネラル・マネージャー、DavidWadhwaniは次のように説明する。

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われわれはPC上のウェブから各種モバイル機器、テレビに至るまで、一貫した開発環境を実現するための業界横断的な運動に取り組むべき時期にきていると考える。

このプロジェクトに貢献するため、Adobeは以下のように取り組む。

1. Flashプレイヤーのオープン化  これにより、初めて正式に誰でも自由にカスタマイズしたFlashプレイヤーを開発できるようになった。特にAdobeはSWF とFLV/F4V規格を標準化のために公開する。過去にはデベロッパーはFlashプレイヤーを改変しないようAdobeと契約を取り交わす必要があった。その理由は、AdobeはJavaの歴史の初期に起きたような多数の変種が生まれてFlashがいくつもの方言に分裂する事態を避けたかったからだ。しかし、現在Flashは十分に確固とした標準に成長しており、進化によって多少の分化を容れる余地がある。

2. モバイル機器に対するFlashのライセンス料の撤廃  FlashはPCに対しては無料で提供されているが、携帯その他のデバイス向け市場では、メーカーはライセンス料を支払う必要があった。これは昨年、Adobeにとって年間$52M(5200万ドル)の収入をもたらすビジネスだった。(さまざまなバージョンのFlashはすでに5億台のモバイル・デバイスに搭載されており、向こう1年の間に10億台に達するものと予想されている)。無料化に伴いこのビジネスは消滅することになる。(Adobeの全収入の2%に相当する)、2009年中に予定されているFlash(とAIR)のメジャー・バージョンアップに伴って、デバイスメーカーへの課金は廃止される。これによってFlashの普及はなおいっそう加速されるものと期待される。

3. Flashを他のデバイスにポーティングするためのAPIの公開  これも現在ライセンス料を取っている。無料化によってあらゆるデバイスがFlahsをプレインストールするようになると期待される。

4. コンテンツをデバイスに送り込むためのプロトコルの公開  Flash CastやAMFのようにAdobeも携帯キャリヤと協力して無線によるソフトウェア・アップデートのプロトコル開発に取り組む。ただし現状では携帯電話にダウンロードされたソフトウェアはほとんどの場合、ROMに格納されて機器の寿命が来るまでそのまま変更されないので、これはなかなか困難な課題となる。携帯電話の中のソフトウェアをデスクトップ版と同様、容易にアップデートできるようにすることは、携帯アプリを最新の状態に保つために必須な条件となる。

アプリケーション開発に関しては、Adobeは次第にウィジェット利用のアプローチに比重を置いてきている。Wadhwaniによると、ウェブページ中で小さなモジュールとして実行されるウィジェットと携帯アプリの小さい画面は大変よく似ているということだ。彼はこう説明する。

〔ウィジェットと携帯のUIは〕どちらも必要に応じて拡張すればよい。デベロッパーはこの小さいサイズでアプリケーションをまず最適化する。開発しながら小さな画面を拡大していくことは、その逆にデスクトップPCの大きな画面全体を圧縮していくよりもやさしい。

同じことがセットトップボックスのような他のデバイスの場合について言える。

Open Screen Projectが掲げる目標は古くからある「アプリケーション開発者の夢」の実現だ。つまり一度アプリを書けばあらゆるデバイスで同じように作動するようにするというもの。この目標に向かってAdobeと多数の企業が協力している。(Nokia、Sony Ericsson、Qualcomm、Samsung、Motorola、LG、Toshiba、NTT Docomo、Chungwa Telecom、ARM、Intel、Marvell、Cisco、NBCUniversal、MTV Networks、BBC)。しかしこのパートナーのリストからApple、Google、Microsoftの3社が抜けているのは目をひく。この3社はそれぞれ独自にデバイス間の互換性を実現しようとしているからだ。

Appleの製品ではすでにシームレスな統合が実現されている(Mac、iPhone、Apple TV)のだから、単にそれを買えばいいというのがAppleの考えだ。SteveJobsはiPhoneにFlashを搭載することを拒絶してAdobeにけんつくを食わせたことが記憶に新しい。たぶんAppleのエンジニアは彼らの要求水準に合うようなバージョンを開発しているのだろう。

GoogleもFlashのファンではない。Googleのウェブ・アプリでは速度が速い利点を生かしてAjaxが利用されている。また携帯分野ではGoogle独自の携帯OS、Androidに掛けている。また携帯用アプリの分野ではそれぞれのデバイスに1つずつ開発するという古典的な方法を取っている。。

しかしこの分野でもっとも幅広く、Adobeともっとも異なるアプローチで臨んでいる企業はなんといってもMicrosoftだろう。Flashと真っ向から衝突するな独自プラットフォーム、Silverlightを開発している。(しかしSilverlightがモバイル対応になるまでの一時の間に合わせとして、Windows Mobile向けにFlash Liteを採用している)。さらに根本的なことだが、Microsoftは異なるデバイス間で同じようにアプリを作動させる独自のプラットフォームづくりを行っている。Microsoftの最終的な成果物はLiveMeshとなるだろう。 私は先週、Microsoftが公式にLive Meshを発表した際にこう書いた。

Meshの基礎はこのフィードをベースにしたプログラミング・モデルだ。ウェブ・デベロッパーはどんな言語でも(Python、Ruby o
n Rails、Flex、etc)、開発ツールでも自由に使ってアプリケーションをプログラミングすることができる。それから双方向フィードを基本的なコミュニケーション手段として、ネット上のどこかにある別のデバイス、または別のアプリケーションと同期を取るようにすることができる。Microsoftのプロダクト・ユニット・マネージャー、Abhay Parasnisはデベロッパーに次のにように約束する。「皆さんはMeshに合わせてアプリケーションを書いてくれればよい。そうすれば後はわれわれが他のデバイスでも動くようにしてあげます」。

このMicrosoftのアプローチはいろいろな意味で、われわれが今まで詳しく見てきたAdobe AirやGoogle Gearsと正反対のものである。AirやGearsはブラウザー・ベースののアプリをオフラインでも作動させようというアプローチだ。MicrosoftはMeshでクライアント・ベースのアプリケーションの優位性をを再構築しようとしているに違いない。デベロッパーは最初、どんなデバイスに対して開発を始めてもよい。PC、スマートフォン、セットトップ・ボックス、何であっても、ウェブを通じて他のデバイスと同期させることでいわばそのアプリケーションのウェブ化ができる。

各種のデバイスとそのスクリーンの間を結ぶ架け橋となるような仕組みの提供に関して競争が激しくなればなるほど、われわれが現に使っている人気ソフトが、ノートパソコン以外のデバイスに本当に移植される可能性が高まるのではないだろうか。

(写真:AMagill

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(翻訳:Namekawa, U)