検索市場に競争は必須だ

次の記事

FriendFeed、前途は遠い

Microsoftが検索市場で競争を挑み、自らを広告企業に転身させようとするビジョンも所詮は昔同様「お山の大将」になりたいという願望の現れに過ぎないのか? Microsoftもヤフーもその他全員、検索市場を放棄して、すべて後はGoogleに任せるべきなのか? Tim O’Reillyの今日(米国時間5/25)のブログ記事によるとそういうことになるらしい 。私にはこれ以上間違った意見は考えられない。

O’ReillyはMicrosoftは同社が長年目指してきた「会社のすべてのデスクとすべての家庭にコンピュータを」という夢が実現してしまった後、目標を見失ったのだという。彼によるとMicrosoftは漂流しており、目標というのはやみくもにナンバーワンになろうとする欲望だけだなのだという。Googleの弁当を横取りして食べようとするのもこの兆候なのだそうだ。Googleは早くから「世界中のすべての情報を組織化する」という任務を自らに課し、それに成功したか、ほとんど成功したといってかまわないぐらいのところに来ている。だからMicrosoftは何か別の勝ち目のある分野に移るべきだ、という。

そこでO’ReillyのMicrosoftに対するアドバイスは検索をGoogleに外注して別の何かに注力すべきだ―たとえばウェブOSのようなものを開発すべきだ、というもの。

Microsoftがウェブ・サービスのインフラとソフトにもっと注力すべきか否かについてTimと議論しようとは思わない。それはそれで良い考えかもしれないと思う。しかし私が理解できないのは、なぜTimがMicrosoftはそのために検索市場を放棄しなければならないと主張するのか、だ。私は彼の提案しているもの―検索市場の絶対的な独占―がインターネット全体にとって災厄以外のなにものでもないと信じる。

検索分野の技術革新は今始まったばかり

インターネットの商用化が始まってわずか10年少々しか経っていないのに、Tim O’Reillyともあろうものが、インターネットの検索戦争は終わったなどとどうして言えるのか理解できない。親友のJohn BattelleのGoogleの誕生を描いたノンフィクション、ザ・サーチを読んでいないのだろうか? しかし、「検索戦争は終わった」と主張する専門家はTimだけではない。先週のGillmor GangでもDanny Sullivanが同じようなことを論じた。しかし私には現状が検索技術の発達の行き止まりであるなどとは信じられない。。

検索分野で解決を迫られている分野は山積している。セマンティック検索、自然言語/AI検索、ディープ・ウェブ、メディア検索などなど。今日、検索は基本的にウェブ文書を返してくる。しかし私が欲しいのは私の代わりに検索を最後までやってくれるようなサービスだ。そういったサービスの実現には未だはるかに遠い。

われわれはやっと検索というビジネスを始めたばかりだ。今日、検索がすでに頂点を極めたなどと考えるのは、第一次世界大戦の前に飛行機が発達の頂点を迎えたと考えるようなものだ。当時からたった1社だけが航空機の製造を任されていたとすると、われわれは今でもジェット機で世界中どこへでも、こんなに気軽に旅行ができるようにはなっていないだろう。

イノベーションは競争がなければ急速には起きない。もしGoogleなりが独占的に検索分野をコントロールしてしまったら、検索テクノロジーや検索ビジネスモデルに中期的に何らかの革新が起きる可能性は非常に低い。

たしかに、あれこれ何社かのスタートアップが生まれて、新しい試みに挑戦しようとしている。しかし検索ビジネスは巨大なインフラを必要とする。ウェブ全体をインデックスづけし、すでにGoogleが存在している市場でビジネスを確立するためのコストとノウハウはとうてい普通のスタートアップの手に負えるような種類の問題ではない。マーケットが成熟していけば新たな参入はさらに困難にになっていく。独占を打破するために政府の介入が必要なのも、ここに理由がある。市場の力ではひとたび確立した独占を排除することは一般的には困難なのだ。

検索市場の独占とインターネットの健全性は互いに相容れない

検索は重要だ。なぜならインターネット上のあらゆる商業的な動きはすべて検索から始まるからだ。先週私が書いたように、オンラインでの商品購入の68%は検索エンジンかショッピング比較サイトから始まる。これにともなって巨額の金が動く。オンライン広告の総売り上げ$40B(400億ドル)の約40%、すなわち$16B(160億ドル)は検索から生じている。またこの$16B(160億ドル)の80%はオンライン販売関係の検索から生じている。

オンライン広告市場は依然急速に成長している。2010年には全世界で$80B(800億ドル)に拡大するという予測もある。もしGoogleが引き続き検索市場での優位を保つなら、ここ数年のうちに売り上げでMicrosoftを抜くかもしれない。利益では間違いなく抜くだろう。Microsoftがデスクトップ・アプリケーションの販売の高い利益率にいつまでも依存していられそうにないという見通しはさらに事態を悪化させる。

オンライン検索とオンライン広告は互いに鏡像のような関係にある。検索マーケットに1社しか存在しなくてもかまわないというのは、実質的に、広告マーケットに1社しか存在しなくてもかまわないというのと同じだ。

われわれは検索マーケットに支配的な企業が存在した場合、どういうことが起きるかすでに知っている。イノベーションにはさして力が注がれず、システムの改善を図る企業が現れてもそこへ十分な売り上げが回らないことになる。全エコシステムが危機に瀕するのだ。

たとえば、CPC(クリック単価)モデルには根本的な欠陥がある。しかしGoogleにとってクリック詐欺は利益になるので、対策を手ぬるいままに放置してしてきた。これに対して広告主は検索エンジンの
レベルでは対策しようにも打つ手がないのだ。CPA(成果単価)のほうがずっと良いモデルだが、Googleはテストしてみる以上のことをしようとしない。現在のシステムはGoogleにとって有利で、広告主にとっては不利である。しかし広告主にとっては実質的にGoogle以外の選択肢がない。Googleが60+%の検索市場(そしておそらく90%くらいの検索売り上げ)を独占しているので、我慢して付き合っていくしかないのだ。Microsoftの最近のLive Searchキャッシュバックプログラムは競争こそがより効率的なシステムを作ることを改めて実証した。

サイト運営者の側から見ると、状況はさらに悪い。Googleは広告料金のうちから掲載者に対してはしみったれた割合しか分配しようとしない。Googleをまずまず正直にさせるのはYahooとMicrosoftが時折サイト運営者のところに来て競争をしかけるときだけだ。もしそれさえなくなってしまえば、Googleはサイトから上がる広告収入のほとんどを独り占めしてしまうだろう。(Googleの競争相手はそうなると検索以外の〔バナーなどの〕広告となるが、これははるかに低い収入しかもたらさない)。こういったことはすべて、インターネットの健全性という見地からした場合、最悪である。

オンライン広告市場はあまりに巨大で重要なのでMicrosoftはとうてい無視することができない。われわれインターネット・ユーザーはMicrosoftとYahooの努力を応援しなければならない。もし彼らが興味を失ってしまえばインターネットは重大な悪影響を被るからだ。競争こそがイノベーションを生む。競争こそが価格の引き下げを生む。競争を放棄せよと説くのは無責任以外のなにものでもない。

アップデート: Timがビデオでコメントしてくれたので下に貼っておく。彼のこの問題に関するフォローアップはここに

[原文へ]

(翻訳:Namekawa, U)