企業はブログで財務情報の開示ができる―SECの新方針

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〔日本語版編集部:この記事の執筆はBrian Solis〕

SunのCEO、Jonathan Schwartzは数年前から、企業が財務情報をブログ上で開示できるよう、SEC(証券取引委員会)を説得してきた。昨日の画期的な発表によって、Schwartz氏の願いはやっと実現したようだ。それは、企業の情報開示を従来型のメディアと配付チャネルに限定していた長年の制約を、やっと外した、歴史的な決定でもある。

昨日のスピーチでSECの法律顧問Kim McManusは、企業が重要情報の開示をブログなどのWebサイトを使って行ってもよい場合の指針をかいつまんで説明した。それによれば、少なくともこれまでの形のプレスリリースは寿命を終えることになる(詳しくは後述)。

IR Web Reportは次のように説明している。「一定の状況下では、企業はSECの規則Regulation FD(公正な開示のための規則)に基づく財務情報の開示を、企業のWebサイトやブログで行うことができる。そのための新たな指針が、今日SECにおいて満場一致で承認された。」

Christopher Cox委員長は会議の冒頭で、Webは投資家たちに重要なサービスを十分提供できるまでに成熟した、と述べた。「電子的コミュニケーションにおける今日進行中の技術進歩は、よりタイムリーな企業情報に対する市場と投資家の需要と、情報を市場の参加者たちのために捕捉し、処理し、配付する企業の能力の両方を増大させた。」

SECは、情報共有化の範囲と、持ち株会社やその社員がブログやフォーラムに情報を投稿する場合の制限事項を定めている。

公正な公開規則(Regulation Fair Disclosure)とソーシャルメディア
SECが従来からの通信社などに加えて、人びとに直接届く、新しいツールやサービスを採用したことは正しい一歩だ。ブログを情報開示のための法的に有効な形式と認めたことにより、もちろん一定の状況下ではあるが、SECはソーシャルメディアを公認したことになり、ある意味ではRegulation FDの規則のソーシャル化を進めることになる。

SECのこの新しい方針から生まれる最も重要な変化は、Web上の情報開示が、従来の紙の上の情報とは異なる(自由な)形式を持ちうることだ。もちろん、SECの一定の制限はあるだろうが。

これはまさに、プレスリリースがソーシャルメディア化されることを意味するから、私にとってはとても嬉しい。

ここ数年間、Todd DefrenとChris Heuerと私は、プレスリリースのソーシャルメディア化(Social Media Release, SMR)の普及活動に努めてきただけでなく、金融業界やIR(Investor Relation,投資家に対するPR)の方面からの、SMRの企業情報開示への適性やRegulation FDへの合法性を疑う感情的な声にも対応してきた。もちろん、そのような適性や合法性がなければ、企業がソーシャルメディアを使う意味もない。

SMRの実現可能性や、実現した場合の形式について、さまざまな議論がある。私の考えでは、SMRはWordPressやMoveableTypeのようなブログ専用のプラットホームにその住まいを限定すべきだ…つまりそれらのプラットホームが、いわばソーシャルメディアの公開閲覧室になる。そしてSMRは、従来からのプレスリリースや情報公開活動を駆逐するのではなく、それらをあくまでも補完する立場であるべきだ。

SMRは元々、Tom Foremskiのプレスリリースの死の呼びかけに応えてTodd Defrenが提唱したものだが、それは、ニュースになる事実とネット上のソーシャルな資産を一つに結び付け、分かりやすく、いろんな目的に利用しやすいツールとして、従来型/SEO型のプレスリリースを補完するソーシャルメディアならではの形式を持つことになる〔SEOについては後述〕。

人びとの多様な情報ニーズに応えるためには、提供の仕方も多様でなければならない。しかし今日発表されているプレスリリースにはビデオやオーディオが付くことはないし、付録のようなコンテンツや、参考情報のリストすらない。

SMRはもちろんマルチメディアを多用することになるが、しかしより重要なのはマルチメディアよりもプレゼンテーションの方法だ。ネット上のソーシャルメディアの一つの号は、さまざまなソーシャルネットワーク上の情報やコンテンツと、それらを求めている人びとを結び付ける。それらのコンテンツには、人びとをつなぐ会話も含まれる。

ブログ上で発表される企業情報の姿をここで想像してみよう。それは従来のプレスリリースの上の財務情報と違って、まずYouTube上のビデオがある。Flickrの上のグラフや取締役たちの写真がある。iTuneの上のオーディオ・ポドキャストや会議の録音もある。Docstockが提供するマーケット情報もある。Deliciousが提供する多様な関連リンクもあるだろう。コンテンツはさらに、Twitter、Identi.ca、Friendfeedのようなミニミニメディアサービスにも広がっていき、企業のブランドストリームを支える。つまり、多様なメディアを踏まえたブログとして提供されるSMRは、ブランドイメージを構成する多様な指標が一か所に集まるハブのようなものだ。また同時にそれは、コンテンツの各片を複数のソーシャルネットワークがアクセスし共有化するわけだから、そのSMR自身を指すポインタ(リンク、言及、など)が爆発的に増大することも意味する。

また、SMR自身のタグや外部リンクによって、ソーシャルネットワークやブログを対象とする検索エンジンのヒット数も増大する。

情報公開は高くつく
もちろんそれは、従来型の通信社などにとっては脅威かもしれない

これまでの市場関連情報や売り上げ/収益情報などは、主に通信社を経由してマスメディア上に流れた。SECの基準を満たす開示情報の発表費用は、一件あたり数百ドル(ときには千ドルを超す)だ。これまで、多くの企業が予算に計上してきた情報公開費用では、ニュースの共有化をサポートする活動に必要な人的資源を確保できない。そこでどうしても、通信社を利用してPRやIRのための情報を流すことになる。

しかし、PRやIRの専門家の多くが認めている。通信社を介する情報開示は、従来的なツールを使ってのニュースの作成と配付活動なので、むしろ高くつくのである。あなたの会社が株式を市場に公開している企業で、マーケットウォッチャーたちが絶えずモニタしているとしよう。しかし会社のプレスリリースは、通信社を経由して彼等のシステムに届くことが圧倒的に多い。

今日では、ジャーナリストやアナリストたちは通信社から配付されるプレスリリースを見て記事を書いたり分析をしたりする。だから肝心の読者は、あなたの会社が最近新しいニュースを発表したことを、発表の時点では知らない…読者たちに電話やメールをしてお知らせしないかぎり。しかしPRやIRのプロたちは、重要な金融情報や企業情報が新たなニュースとして発表されるたびに、それらをいち早く事前に入手するルートを持っている。

しかし、必要とされる情報を、それを必要としている人びとに正しく結び付けるためには、人と人との現実的な関係以外に良い方法はない。

SECのこの新しい指針によって企業は、通信社に払っていた予算の一部または全部を、ニュースを自力で社会に向けて発表する活動に振り向けることが、できるようになるだろうか?。

情報公開vs.IR/PR
情報公開は市場に向けられている…人びとはそれを見て売り買いなどを決断する。Regulation FDは投資家を保護し、情報の発表の仕方を企業に教えることによって、市場の公正化を支えようとする。公開されるよりも前に誰かがその情報を知る、ということがないようにするのである。

たしかに、企業のニュースをジャーナリストやアナリストたちに結び付けるための戦略的な方法には意義も利点もある。しかし今では、あえて通信社を擁護するために言うならば、前にも書いたように、マーケットの上がり下がりを左右するそれらの人びとをバイパスして通信社は人びとに直接情報を届けることもできるのだ。

通信社が情報公開を手がけるだけでなく、〈検索エンジン対応のプレスリリース(search engine optimized press release, SEO release)〉というテクニックを使って、市場に参加している人が検索に使うキーワードに、あなたの会社のプレスリリースを結び付け、彼等がキーワードを入力するたびにその案内リンク(広告)が表示されるようにする。PR Newswire、MarketWire、Business Wire、PRWebなどのサイトは、SEOの機能を付けたニュースの配付サービスを企業に提供している。上手に書かれた、SEO機能付きのプレスリリースに通信社の情報配付機能が結びつけば、あなたの会社のニュースは、それを求める人びとに直接届くことができる。

さらに通信各社はここ数年、第二の配付チャネルの開発に投資してきた。それは、私の考えでは、Webが今後急速に変化し進化しても、利用価値を失わない。

プレスリリースが発表されると、多くの検索エンジンとその金融財務部門(finance.yahoo.com、finance.google.comなど)、市場関連のハブ、ポータル、ダッシュボードなどがフィードを受け取り、自動的に“最新ニュース”のところに入る。通常のRSSフィードと同じく、投資家、アナリスト、プレス、さまざまな意思決定者たちが、売買状況、カバレッジ(営業利益/支払金利比)、関連ニュース、巷の噂や議論、などなどを一か所で見る。それはWeb 1.0のころからすでにあり、今広まっているソーシャルWebの発端だった。

通信社のサービスは今日でも、財務情報の主要な情報源なので、それがなければ、ダッシュボードを情報で満たすなどの機能は実現困難だろう。

しかしSECの今回の指針は、企業のサイトやブログの上の企業情報を、既存の強力な財務情報オンラインハブにつなぐ機会を提供するから、重要な企業ニュースがこれまでと同じチャネルで人びとに届くこともできる。

そういう既存のサイトで企業ニュースを見ていた人びとに、これからは企業のブログを見ろと言うのは、非現実的である。

視聴者の数が増えるチャンス
SMRはコンテンツをソーシャライズし、ソーシャルWeb上の会話をリンクするだけでなく、ブロガーやオンラインジャーナリストたちも、必要なすべての情報に一か所でアクセスできるから、リッチメディアを使った投稿や記事をより効果的に書けるようになる。

しかもフォームやデザインは今や自由だから、たかが企業の財務情報といっても、今後どんなに面白い表現形式が登場するか分からない。そしてそれがどんな形式であれ、従来型のプレスリリースや、外部リンク、マーケット関連の電話会議などを補完して、情報の提示と共有化を行う。

SMRはブログを使うべきだ、通信社のサービスではなく、という私の信念からすると、Regulation FDをめぐるSECの新しい規則も相まって、デフォルトのSMRそのものが、情報開示のための十分な適性を持っていると言える。ただしもちろん、ホストのサイトは企業の財務情報開示のための基準を満たしていなければならない。

SMRは単に財務データを共有化するだけでなく、そのデータと、そして全体的な企業像を強化するソーシャルなコンテンツを、メインの売り物にすることができる。

検索、Web上の記事、ブログの投稿、財務情報のポータルなどなどを通して、情報はマーケットに、投資家に、同業者たちに、そして顧客に届いていく。検索エンジンはSEO化(検索エンジン対応化)されている。ソーシャルメディアはSMO化(ソーシャルメディア最適化)され、その見られ方(目的、時期など)によって結果が変わる。ただし多くの場合SEOは、ソーシャルネットワーク内部のコンテンツの結果に影響を与えない。しかし、特別なタグやキーワード、参加人数の多さなどの要素が、ソーシャルWeb内のコンテンツの“発見されやすさ”を増幅する。

SMRはソーシャルコンテンツをビジュアルに表現し、真正なストーリーを提供し、情報を共有化するにとどまらない。SMRはまた、人びとがお互いになお一層ソーシャライズし、対話するためのツールを提供する。

SMRの読者にとって、対話の可能性は事実上無限だ。既存のオンライン金融財務フォーラムと同じような、モデレータのいるコメントシステムを使うこともある。あるいは、ページに任意に埋め込めるタイプのビデオ、オーディオ、ドキュメンテーション、画像などなどを、ブログの投稿やその他の投稿に利用することもある。そこからトラックバックを送って対象範囲を広げることもできる。そのSMRに重要な関心を持つ人びとは、ニュースストリームの全体や、必要なマーケット情報に対してRSSフィードを設定できる。読者はさらに、diigo、deliciousといったブックマークサービス、あるいはDigg、Mixxのような参加型ニュースサイトを通じて、リリースをソーシャルWebの全体へ広げることができる。既存のソーシャルツールが進化し、新しいサービスが導入されると、SMRすなわちブログの投稿は、PR、マーケティング、そしてコミュニティにとって、その読まれ方や共有のされ方を自由に定義できる真っ白なキャンバスになる。

経営者やマーケティングの専門家たちは、自社のWebサイトやブログが本当に情報流通のチャネルとして認識されているのか、そしてもっと重要なこととして、これらのオンライン資産がSECの新方針のもとでのRegulation FDの情報開示要件を満たしているのか、検討すべきである。

今回の新方針は、さまざまな承認されたチャネルを使っての、情報の共有化の能力を拡大するだけだ、と私は思う。財務情報の開示を正しく行うための費用が安くなるかどうかは未知数だ。しかしその過程をソーシャライズして、投資家や関心ある人びととのコミュニケーションをより効果的にすることは間違いない。それによって、IRとPRのインフラは確実に改善される。

何が目に見える現実か。それは、企業は通信の形式を一つに限定しないことによってのみ、利益を得るということである。人びとが情報を探し、発見し、共有化する方法は千差万別である。したがって、通信社、Web、ブログなどなどの総合的な併用こそが、情報の到達性と可視性を増幅するのである。

この記事を書くきっかけを与えてくれたJennifer Leggioに感謝します。

SECについてはTwitterのこの記事を

(写真:Terence T.S. Tam

編集者注記:Brian Solisは、シリコンバレーのPR会社兼ニューズメディアエージェンシー、FutureWorksのトップ。彼のブログはPR 2.0。彼のTechCrunchへの投稿は、PR Secrets for Startupsプレスリリースの進歩と効果的な書き方

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(翻訳:hiwa)