iPhoneテレビがほしい

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合併の影響現れる―CBS InteractiveとCnet、新デザインをテスト中

〔日本語版編集部:この記事の執筆者はSteve Gillmorです〕

八月のしつこい猛暑のために、世界中が寝ぼけている。Web 2.0の棲み分け社会でぼけているのは、全国ネットワーク局各社が競う夏の番組戦争のハイテク業界バージョンだ。パイロットプロジェクトの失敗、すでに飽きられているバラエティ用に悪あがきのリアリティ番組を試作、またまた脚本家のスト、視聴率がひどすぎるのでテスト期間だけでボツになる新番組などなど、ぼけの見本市がWebの上でも横行する。

しかしDVR(デジタルビデオ録画)がすべてを変えた。DVRの登場によって、特定時期の番組競争や季節ごとの編成更新は無意味になった。その代わり、どの月も“ほやほやの上演初日”だ。良質な視聴者とは、すぐに番組をぽいしない人たち=その番組のまじめな視聴者としてつかまえることのできる人たちだ。そして視聴者のリアルタイムのリアクションが多ければ多いほど、彼らの注意を引くために無駄な小細工をする必要はなく、広告主に自信をもって番組を売り込める。こういう新しい状況の中では、番組の再放送はもはやヒマな時間帯の穴埋めではない。むしろ、視聴者がいつその番組を見たか。その時間帯にはほかにどんな番組や行事が行われていたか。そういったメタデータが視聴者の意思を明確に示す。そして一定の嗜好性を持つユーザたちの共通の視聴パターンが、貴重な指標になる。

というよりも、テレビや音楽のコンテンツは、もはや、ソフトウェアとは違うものではなくて、ソフトウェアと同じようなものになった。そしてiPhone App Storeのリリースは、これまで二つの全く別のジャンルと思われていた両者が交わるための、新しい重要なプラットホームの出現だ。一部のアプリケーションはおなじみのもので、FacebookやMySpaceのようなソーシャルメディアの拡張版、New York Timesのような出版物、あるいはコンテンツを見るためのコンピュータや装置から音楽や番組を仮想的に制御できるAppleのRemote Controlなどだ。このようなアプリケーションがメディア側から提供される。

しかしコンテンツ・サービスばかりでなく、Jottのような“純粋な”アプリケーションもある。Jottは音声をネットワーク上でテキストに変えてくれるサービスだ。あるいはAnnotator、これはユーザがPDFにマークアップできて、その結果をサーバから再配付できる(MacのPreviewやAdobe Readerで見る)。このようなアプリケーションをダウンロードし、ソフトウェアとして使い、結果をユーザのデスクトップから元のプラットホームへ再びアップロードする。こう言ってよければ、それはソフトウェアとしてのサービスだ。

しかしさらに破壊的なものは、上記の二つの種類の境界がはっきりしないような形で登場する。それは、ユーザ~視聴者の積極参加と従来型のコンテンツをブレンドした新しいメディアだ。PandoraやAOL Radioのようなアプリケーションは、まさに、ソフトウェアが使われる範囲をモバイル空間に拡張するが、これらのアプリケーションの最近の利用データを見るかぎり、なお一層の質の向上のための投資も、そしてさらに新たなチャネル専用にメディアを作るための投資も、完全に是認されるのだ。

では、既存のコンテンツのこういった新しい目的多様化を背景とする第二の波として、これからはどんな番組が登場するのか? たとえばそれは、携帯向けのリアリティ番組だ。出演者や競技者は現実世界を歩き回り、各人の携帯電話がトランザクション(ありとあらゆるやり取り)の道具になり、製品、イベント、人間等々への関心の有無がすべてその道具で表現される。番組によっては、複数の個人の行動や意思表示がチームのそれとして集積されることもある。その日のニュースやTwitter上のいろんな話題の群、ホワイトハウスを目指す競争などへの反応や質問への答えが、いろんな層的特性(年齢、性、等々)によって分析される。

ていうか、むしろ、ハイパーリアリティ番組という新しい番組が可能になると言ったほうがいい。App Storeが、家庭(従来の一般視聴者)を捨てて仮想コミュニティに侵入したAdsense的ビッグブラザー(番組提供者)のためのゲートウェイだ。装置と帯域の費用を番組が持ち、Appleは同社の電話機製品(iPhone)のビデオの側面を新たなビジネスチャンスとして生かし、コンテンツを作る。コミュニティも積極的に参加し、アプリケーションと電話機製品の両方を使って、番組の分類や編集を手伝う。

それを「対話型ビッグブラザー」と呼ぼう。完成製品をストリーミングを使ってユーザに送り戻すマーケティング活動を通して、放送ネットワークのリーチを生かした有意義なループが出来上がる。App Storeのダウンロードから始まったものが、ネットワーク番組のいわば「ドングル」になり、さらにそれが、その番組の上に浮かび出てくる「個人」たちの市場を作る。サーバ上のDVRを認めた連邦控訴裁判所の判決は、今後上級審で覆されることもあり得る。しかしApp Storeを見るかぎり、この小鬼を瓶に戻すことはもう不可能である。TV-I(TV-Interactive,対話型テレビ)は、もうほとんど私たちの社会の既成事実だ。

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(翻訳:hiwa)