Total Music―レコード業界主導のデジタル音楽配信プロジェクト、ゾンビのごとくよみがえる

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非競争裁定は、どこの州にも影響を与えない

音楽業界が自分自身のデジタル音楽配信網を構築しようという試みはできの悪いホラーストーリーのような工合になっている。どんなにむちゃくちゃに叩かれても、ゾンビのように生き返ってくるのだ。最初は2001年にNapsterへの対抗策として、大手音楽レーベルの2社がそれぞれ競合する音楽ダウンロード・サイトをローンチした。PressPlayとMusicNetという。(ちなみに、後者はホワイト・レーベルのMediaNetという音楽サービスになった。一方、PressplayはRoxioに買収され、現在のバージョンのNapsterの原型となった)。どちらも完全な失敗だった。

次に2007年にiTunesに対抗して、Universal MusicのDoug Morrisが良い考えを思いついた。音楽の定額購読料をデジタル音楽プレイヤーの料金に上乗せするというアイディアだ。さっそくTotalMusicと名付けられ、大手レコードレーベルがこぞって参加することになった。ところがアメリカ司法省が反トラスト法に基づく調査を開始したため、計画はボツになった。あるいは、少なくとも、当時は皆そう思った。

ウェブ音楽業界の複数の情報源(CEO2人に幹部1人を含む)によると、音楽レーベルは、またもや独自の、あるいは少なくとも自分たちのコントロールが及ぶようなデジタル音楽配信ビジネスを作ることを思案中だという。詳細はまだ固まっていないらしいが、「広告ベースの無料ストリーミング・サービスで他のウェブサイトにライセンスされるか、ホワイトレーベルで提供される」という噂が広まっている。それぞれのストリーミングは有料のデジタル楽曲ダウンロードにリンクされる。一部では生き返ったTotalMusicは、まさにこのプロジェクトと同一だと考えている。

TotalMusicは死んでないらしい

実際、TotalMusicは姿をすっかり変えたものの全然死んでいないらしい。LinkedInで「“TotalMusic”」を検索すると、社員として4人がヒットする。 Ted FergusonTroy DenkingerRobert BroomeDerek Reeve)。4人ともシカゴ在住で、4人とも以前は別の音楽サービス、MusicNowで働いていた。MusicNowは、Circuit City、AOLと持ち主を変えた後、最後には新しいNapsterになった。(あまりぱっとしない兆候だ)。7月15日には、バージニア州Herndon所在のTotalMusicを雇い主とする幹部ソフトウェア技術者の募集広告がいくつか出ていた。たとえば、

TotalMusic, LLC は新しいデジタル音楽のプラットフォームです。好みの音楽の検索、ストリーミング、ダウンロードを統合したサービスを広範囲なオンライン環境で提供していきます。われわれは堅実な財政的基盤を有しており、スタッフはオンライン音楽業界で数十年に及ぶ経験があります。

報酬は業界のトップクラス。多くのスタッフはオンラインで業務をこなしています。どこに居住していてもホームオフィスから仕事ができます。ただし、われわれの本社はバージニア州北部にあり、シカゴとボストンにも拠点があります。もしオフィスで仕事をしたい場合は、勤務地は北バージニアとなります。

無料音楽への道は遠い

広告ベースの無料ストリーミング音楽と有料ダウンロードを合体させるというアイディアは、近く(来月ローンチ予定)登場するMySpace Musicと同じだ。ただしTotalMusicは他のサイトからも利用可能という点が異なる。Yahoo Music、iLike、MTV.comにストリーミング・サービスを提供し、自サイトから定額購読や有料ダウンロードを行っているRhapsodyのモデルに近い

オンデマンドで全曲を広告ベースで配信する(これに対してインターネット・ラジオはランダムな選曲で再生)というビジネスモデルは、次第に有望視されるようになってきた。大手音楽レーベルは自社の全曲カタログを無制限にimeemとMySpaceMusicにライセンスした。Lalaや Last.fm始め、さらに多くのサイトがもう少し限定的なライセンス契約を結んでいる。それでも利用可能な楽曲はかなり幅広い。たとえば、Rhapsodyは毎月最高25曲までという限定版の無料音楽ストリーミングを提供している。

音楽業界がなすべきことは楽曲のストリーミング再生を無料にすることだ。ストリーミング配信はデジタル・ダウンロードやコンサート・チケット、各種グッズ販売の広告手段と考えるべきだろう。 しかし当面そういった動きにはなりそうもない。しかし、起こりうる、
つウェブ音楽業界のスタートアップが望んでいるのは、音楽レーベルがストリーミングのライセンス料金を今よりも下げることだ。

少なくともライセンス料の画期的な値下げを―$1 CPM

現在のストリーミング音楽の一般的なレートは、1曲あたり1セントだ。広告のCPM(クリック1000回あたり単価)に換算すると$10になる。つまり音楽のストリーミング配信を行うウェブサイトは1曲あたり$10のCPMで広告を取らないとライセンス料金を回収できない計算だ。$10のCPMというのはとうてい安いとはいえない。$1 CPMなら常識に合致する

ある音楽スタートアップのCEOは「レーベルと価格の交渉ができるのは、訴えられた連中だけだ」と言った。なるほど、これはimeemとMySpaceに当てはまる。他の弱小スタートアップの場合、訴えるぞというレーベルの脅しだけで言うなりの条件を飲まされることになる。もっとも、最近の興味深い動きとしては、imeemとの提携の後、おそらくその一環として、Warner Musicがimeemに$15M(1500万ドル)を投資している。この事実は今日(米国時間8/7)発表されたWarnerのSECに提出された四半期報告で明らかになった。(WarnerはLalaにも$20M(2千万ドル)を投資している)。

しかし、comScoreによれば月間2600万のユニーク訪問者があり、ウェブ全体に散らばったウィジェットを通じたトラフィックも勘定に入れれば7千万から1億のユニーク訪問者があるとされるimeemでさえ、ストリーミング音楽に直接付随する広告だけで利益を上げようとはしていない。imeemはビデオや写真を含めた総合的なコンテンツを提供し、それに伴ってバナー広告を含めた多様な広告を販売しようとしている。MySpace Musicも似たような手段で規模の経済を追求する。

しかしこれらの巨大サイト以外では、ライセンス費用が劇的に低下しないかぎり、オンデマンド・ストリーミングはビジネスとして成立しそうにない。TotalMusicが関係者を満足させる回答になるのかどうか、今後に注目だ。しかしあまり期待し過ぎない方がいいだろう。既成業界というものは、めったに自己革新ができたためしがない。

ホラーストーリーの結末はだいたい後味が悪い

TotalMusicが取り得る、もっとタチの悪い戦略は、従来通り他のストリーミング・サービスの営業をできる限り邪魔し、自らは〔中間マージンを省いたことによる〕価格的優位で勝負するというものだ。この場合はiTunesと真っ向から対決することになる。

噂ではここ3月から半年でオープンを目指して開発が進んでいるというものの、TotalMusicはまたもある種のリスク・ヘッジ・プロジェクトのままで終わる可能性もある。ある情報源によると、TotalMusicはまだ音楽 レーベルのトップからのゴーサインを受け取っていないという。

もし仮に、TotalMusicが画期的に安いライセンス料金で発足したとしても、反トラスト法というやっかいな問題をクリアする必要がある。なにしろこの業界には有力企業グループが4つしかないので、価格協定や競争の抑制に類する行為はたちまちアメリカ司法省によって断罪されてしまう。音楽レーベルはこの点、非常に慎重に行動する必要がある。(以前私が聞いた話だが、音楽レーベルが共同でMusicNetを作ったとき、関係者はホテルの1フロアを借り切って、レーベルごとに別の部屋に陣取ったという。そして弁護士が各部屋を走り回って交渉をまとめた。音楽レーベルの社員が同じ部屋に集まることは反トラスト法違反になるおそれがあるからだという)。

TotalMusicは反トラスト法違反となる談合の疑いをなんとか交わしながら、なおかつ楽曲の網羅的なリストを提供しなければならない。音楽業界は物理的媒体の販売からデジタル・ファイルの販売へとビジネスモデルをシフトさせる方法を求めて必死になっている。こういう方向の努力はいくらやってみても最終的には無駄に終わるのではないかと思うが―しつこく続編が作られるのが人気ホラー映画の常ではある。

(写真:darkpatator).

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(翻訳:Namekawa, U)