アメリカ自動車産業への生き残りのアドバイス―車を製造するのを止めよ

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悲惨なことになっているアメリカ自動車産業に対して、最近誰も彼も何かしらアドバイスをしている。救済せよ。組合を潰せ。自動車ディーラーをなんとかしろ。ウナギ上りの健康保険と退職者年金の負担をなんとかしろ。消費者に愛されるような車を作れ。その他その他。

ここ2、3年よく聞くのが「もっとAppleのようになれ」というアドバイスだ。iPodのような車を作れ。みんなが余分な金を払ってもいいと思うほど愛されるような車を作れ、というのだ。数週間前、Robert Scobleもこの手の忠告をどっさり与えていた。

しかし、アメリカの自動車会社がiPodのような車を作れないのには理由があるのだ。実際に車を作る以前に必要な膨大な部品調達の悪夢が足を引っ張っているのだ。

AppleはiPod にせよiPhoneにせよ、何一つ部品を内製していない。部品は全て中国の深圳地区で製造されている。大手パソコン・メーカーも同様で、自分では部品を全く製造していない。パーツは全てそれぞれ別々の専業メーカーが製造している。最終組立さえアウトソーシングされている。Dellその他何社かは、カスタマイズが容易になるとして、最終組立だけは社内で手がけたことがあった。しかしやはりこれもすぐに中止を余儀なくされた

もし自動車会社がAppleになりたいのであれば、実際に自動車を製造することを止めるしかない。

「垂直統合」は本当の研究開発を停滞させる。なぜなら、すべての企業には得意分野があるからだ。パソコンの場合、すべての部品はそれぞれが活気にあふれた競争の激しい市場をなしている。この競争市場が製品のイノベーションと高い品質、製造コストの削減を強いるのだ。大手パソコン・メーカーは最終製品のデザインをするだけで、実際の製造はすべてアウトソーシングしている。

全ての大手自動車会社は、これと逆に、エンジン、ドライブトレーンを始め、多くの重要部品を独自に製造し、自社で組立てを行い、販売店網を管理し、さらにユーザーにローンを提供するための金融サービス会社も抱えている。この間、お義理にアウトソーシングに手を染めてきたが、実情はますます垂直統合が強化される方向にある。.

インテルのように広く各社に供給するようなエンジン・メーカーが存在しないのはなぜなのか?

自動車会社が危地を脱して前進するためには、パソコン業界を見習って、自己解体していくしかない。もちろんこれによってどの企業にせよ、経営が安泰になるわけではない。それどころか、競争の激化に伴って、多くの会社が破綻の憂き目を見ることになるはずだ。しかしその状態では、どの会社にせよ、たとえ倒産してもアメリカの経済に破壊的な影響を与えるようなことはない。単により優れた企業がその穴を埋めることになるだけだ。

するとわれわれの自動車は中国で製造されることになるのか? 別にそれでもかまわない。アメリカの労働者の賃金は自動車を製造するのには高すぎるという事実に目をそむけるわけにはいかない。デトロイトは世界の自動車デザインのセンターになればよい。きわめて高い技能をもち、きわめて高い給与を支払われる専門家がiPodの自動車版をデザインすることになる。しかしパーツは他所で作られる。組立ても他所で行われる。

これに対して強力な反論がある。トヨタは世界でもっとも垂直統合が進んだ自動車会社だ。しかも世界最大かつもっとも経営状態の良い自動車メーカーである。これに対して私は、こう言いたい。こんな非効率的な市場で、中期的に利益を上げることが可能なのは世界でトヨタ1社しかない。それは規模のメリットを享受しているからだ。もし市場が効率化の方向に変化すれば、トヨタでさえ垂直統合モデルを維持することはできないだろう。

最後に重要な点―市場の通常の環境ではこうした変化が急速に進むことは決してない。それに伴って不利益を被る関係者の数が多すぎるからだ。しかし、現在、自動車メーカーはどのみち崖っぷちにいる。われわれは何もする必要がない。単にビッグ3が破綻するのを見ていればいいのだ。救済してはならない。自動車メーカーの資産をもっとも有効に利用するには、いちばん高い値を付けた相手に切り売りするのがいちばんだ。そうすれば今から10年後に、まったく新しいアメリカ自動車産業が興り、車のデザインと組立ての監督に特化することによって、多くのすばらしい自動車を生み出すようになっている可能性は十分にある。

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(翻訳:Namekawa, U)