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用心のコスト

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官僚主義がイノベーションを妨げる。みんな知っていることだ。しかし、それはなぜだろうか。理由のひとつは、官僚主義が、用心深さから、即ち過去の失敗を繰り返してはならないという強い意志から生まれたたものだからだ。たとえば現在の経済危機の中、今後さらに多くのチェックが導入されることは間違いない ― 政府においても企業トップにおいても、今の状態を引き起こした不節制が再び行われることがないように。政府も企業も、危機に直面すると規則や規制を増やして対応しようとする。

チェック機構を設けることは、たしかに用心深いやり方だ。しかし、官僚主義とそれが企業に課すチェックは、意図されていなかった結果をもたらす。Paul Grahamが最新の評論の中で、こうした代償について解説を試みている

あらゆるチェックにはコストがかかる

・・・政府が制定するチェックが一国の経済全体を機能不全に追い込むこともある。1400年頃まで、中国は欧州よりも豊かで技術的にも進んでいた。欧州が追い越した理由のひとつは、中国政府が遠距離貿易を禁止したからだ。その結果、欧州の人々の手に探究が委ねられ、ついには世界を制することになった。中国を含めて。

最近では、SOX法が米国のIPO市場を事実上破壊した。それは、この法案を書いた人たちの意図したことではなかった。ただ公開企業のチェック項目を少し増やしたかっただけだ。しかし、そのコストを考慮することを忘れていた。上場を控えた企業が一杯一杯の状態にあり、General Electric社にとってはどうということのない程度のチェック項目の増加が、若い企業の上場自体を阻みかねないことを忘れていた。

大企業における官僚主義も同じく問題だ。Grahamは、サプライヤーの入札を許可する前に支払い能力があることを確認することや、また大規模なソフトウェア購入を委員会が承認することを例に挙げている。表面上、これは慎重な予防措置だが、結局は無視できないコストを強いることになる。

委員会の目的は、企業が無駄な金を使わないためであるはずだ。しかし、その結果企業は10倍の金を使っている。

購入に関するチェックは必ず高くつく。それは、何かを売りにくくなればなるほど、値段を上げなくてはならないからだ。

サプライヤーは、プラスチック製造業であろうとソフトウェア開発であろうと、官僚機構に合わせるためのコストを価格に反映させる。しかも、この計算をするのは外部ベンダーに限らない。社員も同じだ。自社の製品を作る従業員に対して多くの規制をかけすぎると、最も優秀な社員の意欲を失わせかねない。所属するスタートアップが規則の多い大企業に買収されてから、公開スケジュールが引き伸ばされたことにいら立つソフトウェアプログラマーの例をGrahamが挙げる。

そして、売りにくさの最大の脅威は、支払い額が増えることではなく、最高のサプライヤーから売ってもらうことさえできなくなることであり、プログラマーに多くのチェックを課することの最大の脅威は、彼らの生産性を落とすことではなく、そんな優れたプログラマーが、会社にいたいとさえ思わなくなることだ。

これが用心のコストだ。価値があることも、ないこともある。ちゃんと動くソフトウェアを作ることは、早く出荷したり、頻繁に出荷するよりもいいこともあり、それはソフトウェアの種類にも、不具合に対する顧客の耐性にもよる。信用派生商品の買売に対する規制の強化が、「価値あり」の部類に属することは間違いない。SOX法を大企業にも中小企業にも等しく適用したのはやりすぎだった。

規則を考えるときは、それが果たそうとしていることや、防ごうとしているものだけで判断するのではなく、規則に従う人たち全員にかかってくる隠れたコストも見る必要がある。

(写真提供:redjar

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(翻訳:Nob Takahashi)