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eMusicが新推奨エンジンを試験導入、ホームページもデザイン刷新

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MySpaceのData Availabilityが受けそうな名前に改名し新パートナーを獲得

インディーズ音楽のサブスクリプションサービスを提供するeMusicが大改造中。アーティストおよびアルバムページは既にAJAX風味に表示されるようになり、YouTubeの動画やFlickrの写真と連動するようになっている。金曜日にはサイト全体もMediaUnboundの新しいレコメンドエンジンを採用してデザインを一新した。メンバーになってログインすると、レコメンドエンジンによる「Music You’ll Love」(きっと気に入る音楽)群が表示される。「New Arrivals」(新着)で気に入りそうな音楽を新着順に表示することもできる。通常は「Best Sellers」(ベストセラー)やeMusicのエディトリアルスタッフによる「New and Noteworthy」(新着注目曲)が表示されている。

会員が気に入る音楽をきちんとレコメンドすることこそがeMusicビジネスのキーとなる。そして現状ではまだまだ不満を感じる。eMusicには有料会員が400,000人いて、2003年以来2億5000万曲をダウンロードしている。メンバーは固定料金で30-75曲をダウンロードすることができ、以降は曲毎課金となる。気に入った曲が見つからなければ、メンバーはいなくなってしまう。レコメンド機能を向上させれば、退会するメンバーも少なくなる。

eMusicの狙いは、最新の素晴らしい音楽情報をあなたより先に入手してあなたに教える「ヒップな友人」というところ。「ヒップな友人、あるいはナイスなレコードストアのような関係を築くにはどうすれば良いだろう」と自問したのはシニアVPのJack Welde。新しいレコメンドエンジンが答えになるだろうとのことだ。

音楽のレコメンドというのはなかなか難しいものだ。サービス提供側が、メンバーについての情報を入手していない場合にはとくに難しい。eMusicにこれまでレコメンドエンジンを提供していたChoiceStreamは、新会員に対するレコメンドは行っていなかった。MediaUnboundレコメンドエンジンはプログラムと人力を組み合わせて、最初からただちにレコメンドを試みる。もちろん情報が集まるに従ってレコメンドの精度は向上していくものとしている。

プログラムでは、検索、30秒プレビュー版の試聴状況、後に聴くためにアルバムに保存した曲、そしてダウンロードしたアルバム等、eMusic上でのすべての挙動をモニターしている。ダウンロードは試聴よりも重要な判断基準となっている。メンバー毎に好みのジャンル、流行への関心度、新着曲への興味、新しいもの好きか権威好みかなどということをモデル化しておいてレコメンドの際に利用する。またMediaUnboundはP2Pネットワーク、ウェブラジオ、ブログ、および他のMediaUnbound利用者からの情報もレコメンドの際の参考としている。

人力面では、MediaUnboundには40人以上の音楽アナリストがいて、日々レコメンドエンジンの調整や、新たなレコメンド曲の追加を行っている。アナリスト達はレコードショップにいた昔日の専門店員のような位置づけだ。実際、アナリストの中にはかつて店員だった人もおり、他にもDJやミュージシャンだった人もいる。

MediaUnboundの音楽アナリストとPandoraで振り分け作業を行っている人の間に違いはあるだろうか。MediaUnbound CEOのMichael Papishが電子メールで回答してくれた。

Pandoraはヘッドフォンに人々を繋いで、これまで生み出されたすべての曲の客観的レーティングをさせる分類工場を作ったわけです(いや、まあ正確に言えばすべての曲ではなくて20万曲程度ですが)。私たちから見れば、これはクリエイティブで建設的な、自立的で、ときに理屈っぽい音楽ギークな人的資源を無駄遣いしていると思えてしまうのです。

まあMichael Papishは、iTunesからiLikeなど競合するすべてのレコメンドエンジンを何かしらの理由で批判している。

    —Pandora エキスパートを使って、音のみですべての曲を分類しようとしている。スケーリングはもちろん不可能。ある曲が別の曲に似ているかどうかを判断するだけで、利用者の属性情報などを利用したレコメンドを行っていない。

    —iLike 他のiLike利用者から収集したデータのみに基づいて判断するレコメンドプログラムを使っている。ウィジェットでエンベッドすることを目的にしていて、音楽サービス全体からする全機能を備えたレコメンドプラットフォームの構築を目指しているわけではない。

    —Last.fm 他のメンバーの情報およびスクロブル(scrobble)のみを利用するプログラムを利用しているだけ。

    —AmazonMP3 主に共同フィルタリングを使うAmazonのレコメンドプラットフォームを利用している。人力による調整を行っていると思われるが、Amazonはこの事実を認めていない。Amazon本体で利用するレコメンドエンジンは直接的に関係するアイテムに着目するようになっているので、AmazonMP3のレコメンドも全く使えない(Bob DylanのBlood on the Tracksに関係するのはBob DylanのBlonde on Blondeになる。なんてこった)。

    —iTunes Genius 独自に開発した半端なプログラムを利用している。iTunesのデータのみを利用。スティーブ・ジョブズの周囲にはJohn MayerやJack Johnsonに一目惚れする変な人がいるようだ。

    —MySpace Music 友人のページを訪問して、ぴかぴか点滅する黄色のボタンをクリックするとBuffalo Springfieldの曲をランダムに演奏し始める。

Michael Papishの批判が全く的はずれであるわけではないと思う。ただ彼がよりすぐれたレコメンドエンジンを使っているというわけではなさそうだ。まだきちんとテストできていないが、eMusicのレコメンドも当たりはずれがある。最終的な判断はもう少し試してみてからにしようと思う。まあ、取りあえずもう少し使ってみようと思わせるだけでも進化とは言えるのだろう。

但し、eMusicには不満なところが2点ある。eMusicでは音楽情報が網羅されておらず(メジャーのものはない)、プレビューでは30秒しか試聴できない(アーティストページをチェックしてYouTubeの動画が貼り付けられている場合は別だ)点だ。全部をストリーミングしているところとeMusicを行ったり来たりしてアルバムをダウンロードするかどうか決めなければならない。広告なしの無制限ストリーミングが標準となった現在、eMusicの音楽プロバイダーとしての立ち位置はニッチにならざるを得ない。しかし他のサービスで提供していない新しい音楽を発見することができるなら、ハードコアな音楽ファンにとって重要なリソースとして売り込むことができるだろう。

ところで。読者の方のお気に入りのレコメンドエンジンはどれで、理由はなんだろうか?

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(翻訳:Maeda, H)