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BitTorrentでの異常事態

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「こんなのは見たことがない」と、シリコンバレーにある法律事務所の企業法務担当者も言っていた。昨日記事にしたBitTorrentの$17M(1700万ドル)の資金調達取り消しと資本再構成の話だ。

今回の件でBitTorrentの銀行口座からは$10M(1000万ドル)が引き出され、評価額は$177M(1億7700万ドル)から、わずか$35M(3500万ドル)に引き下げられた。

評価額を低くしておいて新調達ラウンドを行うために、既存株主の株式をほぼ無価値とする資本再構成を行うことはないではない。とくにこのような市場状況では普通の話だと言える。初期投資者は自己分を確保するために、再出資を強いられることになる。新たなストックオプションは現在の従業員に割り当てられることとなり、通常ならオプションの行使で大金を得られるとしても、企業を去っている場合には設立者であっても何も得ることはできなくなる。

資本再構成はキャッシュ不足に陥った肥大化したスタートアップ企業を立て直すための唯一の方法だ。しかしこれはキャッシュを必要として、他に取るべき手段がない場合に行われる。企業の取締役は株主を守る信任義務がある。資本再構成は既存の株主には不利益であり、企業に他の手段がない場合にのみ受け入れられるものだ。

しかしBitTorrentで行われたのは通常の資本再構成ではない。実のところ、今回の資本再構成は何から何まで異常なものだ。BitTorrentは三分の二以上にあたるスタッフをレイオフし(65人から19人になった)、内部情報に詳しい人物によれば、再構成の前には銀行に2000万ドルを預けていた。ツールバーのインストールや機器の設置から得ていた収益は多いものではなく、年間500万ドル程度ではあった。しかし少なくともBitTorrentには他の道も多く残されていたのだ。


取締役のBitTorrent株主に対する信任義務はほぼ完全に無視されたということだ。

株主向けのレターには「DAGがシリーズCの資金調達の見直しを要求してきた」とある。しかし入手した情報によればAccelが見直しに固執して他社を従わせ、それをDAGの発案であるかのようにし向けたのだとのこと。DAGの投資は常にAccelやSequoiaというトップファームに続いて、高い評価の後発ラウンドで行われている。DAGとしてはトップファームのご機嫌を取っておく必要もある。それでDAGは非常識な行動について誰かが責任を取らねばならない状況で身代わりになったというわけだ。

しかし取締役たちは、なぜ資本再構成を受け入れたのだろうか。取締役には株主の利益を守る厳格な信任義務がある。今回の資本再構成で、既存の株主は利益は事実上吹っ飛び、信任義務などは無視されてしまったことになる。

取締役たちが、この非常識な行為に賛成票を投じた理由は何だろうか。取締役のうちPing Li (Accel)とDavid Chao (DCM)の二名は、BitTorrentに出資している立場でもあり、資金調達の見直しと資本再構成によって利益を受ける立場にある。CEOのErik KlinkeはAccelの人間で、以前はAccelの出資したInternapで仕事をしていた。あとは設立者のBram Cohen、同じく設立者のAshwin Navinおよび社外取締役のBrad Templetonが取締役の地位にある。

Navinは今回の資本再構成に反対票を投じたとのこと。Templetonは賛成票を投じたが、資本再構成が会社および株主にとって最善であると判断した理由については回答してくれなかった。Cohenも賛成票を投じ、これにより普通株式数で賛成票が上回ることとなった。彼が賛成票を投じなければ資本再構成は行われなかったことになる。

Cohenがなぜ賛成票を投じたかについては種々の憶測がなされている。しかし今回の資本再構成に伴うひとつの条項がもっともらしい。すなわちタームシートでは一般株主からの買い戻しに75万ドルを計上するしている。これはCohenにとって非常に意味がある。Cohenは社員持ち株用の株式のうち30%を保有しているらしい。Cohenは最近、金銭的問題を抱えているとも報じられており、結局金が必要だったということなのだろう。

株式の買い戻しは行うべきではない。1700万ドルの資金調達を取り消すという前代未聞の事態を正当化するほどに会社がひどい経営状態にあるのなら、残った金を設立者への支払いに使うなどというのはもってのほかだ。

BitTorrentおよびAccelは、本件に関するコメント要請を無視している。今のところ、誰もが口をつぐんでいる。

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(翻訳:Maeda, H)