iPhone App Store

App Storeの過剰ブームに現実をつきつける

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Google Analyticsのデータが公開できるようになった

昨日(米国時間5/24)デベロッパーのRick Stromが、驚くべきApp Storeのハイプと題したブログ記事の中で、これまで彼が公開してきたiPhoneアプリケーション(App Storeでトップランク入りしたアプリもある)で見てきた収益データの一部と、他のデベロッパーがどれほどの収益を期待できるかについて、詳しく書いている。彼の結論? App Storeにある3万6000本のアプリの殆どが全く売れていない。多くのアプリは、1本も売れない日が殆ど。

驚いた? そうでもないだろう。

マーケットプレイスの常として、App Storeの障壁は非常に低く、誰でも簡単に自分のソフトを売ることができる。つまり、アプリで溢れかえっている。Appleが、ユーザーを萎縮させることなくこの3万6000本のアプリケーションを目につくよう提示する方法は存在しないので、殆どのアプリは出すやいなや闇の中に消えてしまう。評判を立てる手段を見つけられなければ、自力でアプリを見つけてくれる人はどこにもいない。

さて、日頃からApp Storeのサクセスストーリーを好んで記事にしている者として、私はこのことが他のデベロッパーにとっても至極明白だろうと思っていたので、成功例が典型例ではないという注意書きを入れるのを忘れていた。しかし、Stromの記事が書かれたという事実を踏まえると、少しはっきりさせておく必要があるようだ。

というわけで、たぶんApp Storeでは金持ちにはなれない、のはじまり。

論点を明確にするために、Stromが出したデータをおさらいしてみよう。彼のアプリケーション、Zen Jarは、ソーシャルネットワーキング部門のトップアプリ34位にランキングされている。この位置に付けるためには、少なくとも毎日100回以上はダウンロードされている、と多くの人が思うだろうが、現実は驚くべきものだ。Zen Jarは1日当たりわずか30~35回のダウンロード(99セントのアプリなのて1日約$20)で34位に入っている。同じくSprint Board Proはボードゲーム部門で95位に入っているが1日のダウンロードは6~8件だ。たしかにどちらも大人気のカテゴリーではないが、ダウンロード10件以下でトップ100に入れるというのは、〈どんな〉カテゴリーであれ、考えさせられてしまう。



StromはApp Storeを宝くじにたとえて、アプリケーション開発に要したお金と時間はくじの代金だという。当たっていると私も思う。要するに、多くの専門的な職業で、金持ちとエリートだけがメディアに大きく扱われ、それ以外の全員が誰にも知られることなく、あくせく働いているのと何も変わらない。これはエンターテイメン業界全般に言えることで、役者たちは、限られた数の役を奪い合うために何年もかけて稽古に励む。殆どのライターは、有名になるどころか本を出すことにも四苦八苦していている。基本的に、金持ちになれる可能性のある仕事というものには、必死の努力と才能、運のすべてが必要だ。参入障壁が低ければ競争は恐ろしく激しい。誰もが金持ちにならないことには理由がある。

Stromによると、概してソフトウェア起業家は、市場の可能性を測るモノサシとして「大成功」を使い、平均的な結果を見ようとしない。たしかにそういう起業家もいるだろう。まるで、簡単にスポットライトを浴びられると思ってハリウッドに飛び込んだ俳優のタマゴたちが、気付いたらレストランでウェイターをしていたように。しかし、大半のデベロッパーはそこに関わるリスクも、自分たちのアプリが大ヒットする可能性がいかに低いかも承知していると思う。私がこれまでに会ったウェブ起業家たちにも同じだ。何ヵ月も何年も努力を重ねてきても、新しいオンラインベンチャーの殆ど全部が失敗に終ることはみんな知っている。

そんなわけで、やる気をそぐようなこの人生の現実をご存じなかったiPhoneデベロッパー諸君に対しては、これまで私が(およびメディア全体が)、App Storeで大金持ちになる確率が低いことを強調してこなかったことをお詫びする。それを承知で開発を続ける人たちには、思う存分がんばってもらいたい。

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(翻訳:Nob Takahashi)