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オバマのオープンな政府は悪用に対して無防備か?

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[jp] 橋本岳衆議院議員、津田大介、山崎富美、3氏が「政治とTwitter」をディスカッション

国民が情報を持つことが国民の政治的な力であるためには、まず、国民が正しいデータを入手できることが重要だ。オバマ政権は、政府のデータをデジタル化して公開することにたいへん熱心だ。今日(米国時間6/30)、ニューヨーク市で開催されたPersonal Democracy Forum(6/29-30)で、政府のCIO(chief information officer) Vivek Kundraが、政府の支出に関する情報をグラフや表で見せるサイトUSAspending.govを発表した。ここでは主な政府契約企業(Lockheed、Boeing、Northrop Grummanなど)や助成対象機関(Department of Healthcare Services、New York State Dept. of Health、Texas Health & Human Services Commissionなどなど)に対する個別の支出状況も知ることができる。このほかにData.gov というサイトもあり、ここでは各種の政府データを未加工の原始データの状態で一般に提供している。

政府の公開データはすべてオンライン化すべきだという説にKundraも同意するが、しかし彼によれば、現実はなかなか厳しい。まず、政府のデータは1万以上ものいろんなシステムに散在していて、それらのシステムの多くがCOBOLで書かれていたり、あるいはデータの多くがほこりまみれの紙の山の中にある。しかし少なくとも、政府がこの問題への取り組みを開始したことは事実だ。政府が豊富なデータを収集してそれらを一般公開すれば、政府はより透明になるだろう(そういうデータをもとに新しいサービスを提供するスタートアップも生まれるだろう)。国務省も今ではインターネットを利用しており、とくにオバマ大統領やクリントン国務長官が外国を訪問するときにはYouTubeからそれらの国の人びとに向けたメッセージビデオを提供している。それらのメッセージビデオは、複数の言語のバージョンが作られる。これぞまさに、YouTube外交だ。

オバマ政権はデータを公開するだけでなく、国民が政府に直接、意見、要望、提案などを述べる場として、Open Government事業を展開している。また、意見、要望などの一部はOpen Government blogWikiなど個別のサイトやツールでさらに詳細に議論されている。Open Governmentを担当する政府の情報担当次官Beth Noveckは、この政権は選挙時に行った情報のブロードキャストと増幅から一歩前進して、今では国民からフィードバックを受け取り、それを政策に生かすために、インターネットを利用していると言う。彼女はこう言う、“ホワイトハウス内部の少人数のグループではとても思いつかないような、よく考え抜かれた意見等が大量に寄せられている”。

デジタルなツールによって、民主主義は参加を取り戻しつつある。いや、少なくともそう思われている。しかし、政府のデータへのアクセスが完全に自由になり、また政策に影響を与えるための、これらの新しい方法(==インターネットとその各種アプリケーション)の有効性が実証されたら、データを操作したり、システムを悪用する者も現れるだろう。資金力のあるロビイストや圧力団体などが、この”open government(オープンな政府)”と呼ばれる新生児を、まるでGoogleに対するSEOコンサルタントのように、もてあそび利用するかもしれない。当然、二大政党もこの種の“利用”に手を染めるだろう。共和党のニューメディア担当部長Todd Hermanも、そのことを認める。共和党はオバマの選挙戦術から“コミュニティの新しい育て方と新しい活用方法”を学んだ、と彼は言う。彼によれば、この前の選挙での共和党の敗北の原因は、デジタルな組織化とデジタルな到達方法を駆使するための“ツールを使わなかったこと”だそうだ。

SEOといえば、Hermanの説では、Google Newsに記事が載るためのSEOテクニックでは民主党の活動家のほうが共和党より上手(うわて)だそうだ。彼は、「全米医師会(American Medical Association)がオバマのヘルスケア政策案(“Obamacare”)に反対している」というニュースを例に挙げた。彼はGoogle Newsの検索結果のスクリーンショットを見せてくれたが、検索結果の上位にあるのはGoogleが単純に記事の見出しをスキャンして選んだものではない、と彼は言う。だからこれは、左翼の連中のSEOの成果だ、と彼は主張するのだが、ではその“左翼”たちが一体何をどうやったのかという説明はない。彼が示した例には、問題がある。今すぐGoogle Newsへ行って“AMA Obamacare”で検索すると、トップは”Will Doctors Buy Obamacare?(医師たちはオバマ案を受け入れるか?”というForbes誌の記事だ。共和党のSEO担当が反撃したのか、それとも、Google Newsが自己修正したのかな。

彼のこのコメントが明かしているのは、政治的な工作員や活動家たちが、すでにかなりの程度、オンラインの政治的意見や政策形成過程に影響を与え始めている、ということだ。彼らは”open government”に対しても同じことをするだろう。彼らには、それをやるだけの組織力と強力な動機がある。ロビイストたちや政党は、過去にもデータの不足に悩んだことはない。新たにデータが公開されることによって、彼らも一層強くなると同時に、一般市民も強くなる。情報がそのための力であるなら、われわれはそれを得るための場の公平性と公正性を、今後は強く意識しなければならない。

そしてさらにもう一つ、無関心という問題もある。データをもらったって、何の役にも立たないという人は多い。これから公開されるデータに対して最大の関心を持つのは、ほかならぬ、今のワシントンを牛耳っている圧力団体等の人びとだ。彼らは、新しいデータや、オバマ流の双方向的政策形成過程を利用して、自分たちの(あるいはお金持ちの顧客たちの)目的を達成する方法を工夫するだろう。われわれ一般市民が、彼らに勝てるだろうか? 政府がオープン性の拡大に向けて一歩前進したこと自体は、それが悪用されない保証にはならない。ありとあらゆる、悪用の手口が編み出されるだろう。

私たちは、ありとあらゆる、防戦の手段を編み出さなければならないだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))