Rakuten―国外では無名だが、日本最大のeコマース・サービスがAmazonに挑戦中

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rakuten_logoeコマースについては世界的にまだ統一的な定義ができていない。しかし単に企業向け(B2B)、一般消費者向け(B2C)のオンライン販売を足し合わせただけでも世界で数十兆ドルの金が動く巨大マーケットであることは確かだ。Nielsenの調査 [PDF]によれば、 昨年、世界のウェブユーザーの86%がオンラインで何らかの購入を行っている。(北米のユーザーの場合、92%)。 アメリカ国内に限ってみても、一般消費者向けの売上高は、今年の$130B(1300億ドル)から20013年には$200B(2千億ドル)に増加するものと推定されている。(旅行を含む)。

北米の消費者向けオンライン市場ではAmazon圧倒的な優位に立っている。アメリカで1995年にスタートして以来、Amazonはカナダ英国ドイツフランス中国日本に子会社を展開した。しかしカナダとヨーロッパでは順調に成長したものの、アジアでは市場を支配するところまで行っていない。中国では(Amazonは2004年に現地サイトをスタートさせている)、現地のTaobao〔淘宝〕 [CN]に事実上敗北を喫した。また日本でもAmazonはトラフィックに関するかぎり、現地のeコマース・サービス、Rakuten〔楽天〕に大きく水を開けられている。

もちろんAmazonは日本で健闘している。日本政府の最新のレポート〔「平成19年度我が国のIT利活用に関する調査研究」〕 [JP, PDF]によれば、日本のB2C市場は、2007年に対前年比で21.7%増加して$55B(550億ドル)となった。(原注:こうした統計数字は国や地域によって手法や定義が異なるため、簡単に比較できない。たとえば日本の数字には旅行が含まれる)。

その楽天は今や世界へ進出する戦略を明らかにしている。(過去にも何度も計画が建てられたことはある)。ファウンダーでCEOの三木谷浩史は先週、「われわれは今年中に海外での売上で1日$1M(100万ドル)を目指す」と言明した。

この小論では、楽天の背景と日本でAmazonに対して優勢を保つことができた成功の要因を紹介し、さらに海外進出の努力についても触れてみたい。

1. 楽天 vs. Amazonジャパン
登録ユーザー4700万(日本人の3人に1人が登録している計算)を誇る楽天市場は日本でもっともよく知られたブランドの一つだ。Amazonと楽天の最大の差異は、楽天が独自の在庫や倉庫機能をもたない点にある。楽天は各種の小売業者に対してオンライン通販のプラットフォームを提供している。

Amazonの日本進出は2000年と非常に早かったにもかかわらず、楽天は成功した。下の図では楽天とAmazonを基礎的な数字とGoogle Trendsによるトラフィックのグラフによって比較してみた。
amazon_rakuten_comparison
rakuten_amazon_google_trends

2. 楽天の成功の要因:低料金と広汎な品揃え
楽天の成功の最大の要因は、現実の店舗を構える小売業者に対して、独自にカスタマイズされたオンライン店舗を構築、運営するサービスを提供するというそのアイディアにあった。早くも90年代に三木谷CEOはホスティング料金の戦略的な値下攻勢を開始している。楽天は75-85%という大幅な値下げと周到なコンサルティングでユーザー獲得に努めた。代理店や問屋などに中間マージンを支払わずにすませる代償として、小売業者は楽天に月極めで出店料金を支払う。このシステムのおかげで楽天はキャッシュフローを黒字に保つことに成功した。創立当初から現在まで、楽天は出店者の営業をサポートするためのさまざまサービス(オフラインのセミナー、電話相談、出店者専用メルマガ等々)を提供している。サービス提供の代償としてRakutenは2万8千店以上の登録業者からバーチャル家賃ともいうべき定額の出店料金を毎月徴収する。またこれに加えて業者の売上に対して2.6%のコミッションが課せられる。

その一方で、最近、楽天はオンライン通販サービスという当初の枠を大きく超えて、巨大なウェブ・コングロマリットに変身中だ。Amazonもアメリカで同様の改革を行っているが、楽天の変化はそれ以上にドラスティックだ。楽天は日本の有力なウェブ・ポータル、Infoseek(Alexa Japanで20位)を買収し、大量のトラフィックを楽天のトップページに誘導することに成功している。またオークション・サイト(すでに日本で第3位)し、オンライン証券取引、旅行代理業(楽天トラベルは現在日本最大のホテル予約サイト)、ブログ・プラットフォーム(ブログ大国日本で第3位)と多様なサービスに進出している。さらに、楽天はクレジットカード(日本で200万のユーザーを獲得)とカードローン、イーバンク(オンライン銀行として日本最大)、チケット販売、プロ野球球団(東北楽天ゴールデン・イーグルス)、ゴルフ場予約サービス、等々を運営している。〔訳注:Jリーグのヴィッセル神戸は三木谷氏の個人資産管理会社クリムゾン・グループがオーナー〕

3. 楽天市場: 3600万点の商品は$1から$100,000まで
ただし最近の急速な多角化にもかかわらず、楽天はやはりオンライン・ショッピング・サイトとしてもっとも親しまれている。Amazonとは違い、楽天では地域の農家の産直のミカンやリンンゴから、中古の4トントラック、グッチのハンドバッグ、デジタル・コンテンテンツのダウンロード(Amazonジャパンはダウンロード販売を行っていない)まで、文字通りあらゆるものが売られている。

多くの商品に関して、価格はおおむね割安だ。これは
同一のアイテムを販売る多数の業者の中からユーザーが最安値を簡単に見つけることができるシステムになっているからだ。送料は書籍、DVD、CDその他類似のメディアに関しては原則無料だ。楽天はスーパーポイントというシステムを用意しており、楽天サービスの利用者にポイントが還元される。(これに対してAmazonがAmazonポイントを導入したのは2007年になってからだった)。

以下に楽天市場の巨大なトップページを翻訳してお目にかける。(クリックすると拡大表示される)。
rakuten_top_page_translated_2

4. Amazonジャパンの強み
この一見おそろしくごたごたした楽天のトップページ(日本ではこのようなデザインは特に異例なものとみなされない)を見ると、Amazonが日本人の趣味に迎合せず、世界的に統一されたサイトデザインを守っていることに注意が引かれる。(Amazonの場合、アメリカのサイトのデザインがそのまま各国版の青写真となる)。

しかしAmazonも日本で手をこまねいているわけではない。子会社を通じて巨額の投資を行うことが決定されている。来月、Amazonジャパンは大阪に巨大な流通センターをオープンさせる。(日本におけるAmazonの最大の物流センターとなる予定)。また先週、Amazonジャパンのサイトには、 3種類の新しいカテゴリーに13万点の商品が追加された。また2006年以降、日本の小売業者はAmazon上にオンラインショップを開設することができるようになっている。

規模の点で楽天に及ばないとはいえ、全体としてみればAmazonは日本への進出に成功したといってよいだろう。海外のウェブ企業が日本市場で成功し得ることを実証する貴重な例といえる。またAmazonジャパンは、トラフィックと売上が必ずしも直線的に比例するものではないことを示す例でもある。Amazonの親会社は国別の売上高を公表していないが、あるソースによると [JP]、世界での売上の10%程度が日本からのものと推測されている。仮にこれが事実とすれば、日本での売上は$1.9B(19億ドル)、利益は$84M(8400万ドル)という大きな数字となる。(ただし、報道によれば、最近、日本の税務当局は$119M(1190万ドル)に上る追徴課税処分を行った)。

5. 楽天の国際化戦略と英語版サービス
楽天は何年も前から国際化を目指すとしてきた。また事実、数カ国でそのテストを行っている。楽天は、4年前にニューヨークに本拠を置くeコマース企業、LinkShareを$425M(4250万ドル)で買収している。(ただしRakuten USAはボストンに本社を置いている)。Rakuten TaiwanとRakuten Europe(クルセンブルグ)は昨年創立された。 Rakutenトラベルは韓国、グアム、タイ、中国に進出している。

海外のユーザーはアジア圏の多数のホテルをRakutenトラベルの英語版サイト (日本の楽天が直接運営しているが、非常によく機能している)を通じて予約できる。一部の国のユーザーは、Rakuten International Shipping Servicesを利用して楽天市場で販売されている商品のほぼ4分の1を注文することができる。日本語以外の言語のユーザーには商品説明がGoogleの機械翻訳で提供される。(現在24か国語が利用可能)。クレジットカードで支払を行えば、商品が日本から送られてくる。(海外ユーザーもスーパーポイントを獲得できる)。

もちろん、Google翻訳など、いささか間に合わせの措置という感がする。しかし海外対応をまったくしていない他の多くの日本サービスに比べれば、ずっとましだといえるだろう。

6. 結論
楽天では海外での売上は現在総売上の10%以下だが、毎月20%増加していると述べている。三木谷CEOはアジア、特に中国が楽天にとってもっとも重要な市場になると年来述べてきた。

しかし、現在世界を覆っている経済危機は、アメリカを始めとする世界のオンライン巨大企業に戦略の見直しを迫っている。その結果、国際化の絞り込みともいうべきトレンドが広がっている。MySpaceでは最近、海外支社の社員の大量解雇に踏み切った。Facebookでも中国進出戦略の見直しが行われるという観測がある。ドイツのビジネス・パーソン向けSNSのXingは、先週、アメリカと中国への進出計画を棚上げした。

このような情勢を考えると、楽天はAmazonの本拠であるアメリカですぐに正面から戦いを挑むとは考えにくい。これまで三木谷CEOは海外進出に関してアグレッシブな発言を繰り返してきたが、現実的にはニッチな国やカテゴリーを狙うのではないだろうか。(たとえば、昨年1月、楽天は2013年までに27か国への進出を果たすという計画を発表している。三木谷氏は常々自分の最終目標は世界最大のインターネット企業を作ることだと語っている)。

楽天は日本市場では非常にうまくやっている。しかし海外展開となると、苦労が予想される。ラテン・アメリカ、アフリカ、インド、東南アジアなどの各地ではすでに優位を築いた既存勢力が容易にその地位を譲らないだろうし、アメリカやヨーロッパではAmazonが圧倒的に強い。中国ではTaobao〔淘宝〕が1億2千万のユーザーを獲得している。

当面、こういった市場に外部勢力が進出して成功を収めるチャンスはきわめて少ない。楽天のようなカリスマ・リーダーが率いる巨大企業グループにしても例外ではあるまい。また国内的にみてもAmazonとの激しい競争が続くことを考えればなおさらだ。

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(翻訳:滑川海彦/namekawa01