検索エンジン・ビジネスにはもはや公的規制が必要だ

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この記事の筆者はインターネットの最大手企業の幹部だが、匿名を希望している。その理由は他でもなく、SEO業界全般、特にGoogleからの反発を懸念しているためだ。また、この記事と所属企業が関連づけられることも欲していない。

筆者は、現在圧倒的な市場シェアを有しているGoogleの検索と検索連動広告ビジネスについて公的な規制が必要だと主張する。あるいは、 少なくとも、有料検索の結果表示の基準に関してさらなる透明性が必要だとしている。Googleを始め、検索エンジン側が作成し、ユーザーに強制するルールが頻繁かつ予測不可能なかたちで変更されることについて、ユーザーのフラストレーションが高まっていることは明白だ。非常に興味ある記事となっている。

インターネット全体がひとつの大陸をなしているとしよう。この大陸には国や州都市がある。それらの区域は、領域を通る訪問者の行う商取引によって成立しているとしよう。ところが、この大陸に足を踏み入れる方法は、たった2つしかない。SEO(検索エンジン最適化)とSEM(検索エンジン・マーケティング)だ。しかもこの大陸の外界との境界はたった一つの企業によって管理されている。しかもSEO、SEMの運用基準はいっさい明確に定義されておらず、そのたった一つの企業の胸三寸で自由に決められる。もちろん個々のウェブサイトには、バイラル、つまり口コミによるトラフィックもある。しかし、一般的にいえば、インターネットのユーザーが個々のウェブサイトを発見する主要な手段は、有料であろうとなかろうと、検索エンジンによる結果表示だ。

特定のサイトが検索結果にどのように表示されるか、そのあり方を最適化するという触れ込みのSEOが、科学どころか、ブードゥー教のまじないのようなものだというのは広く知られている。ある検索キーワードに対してどのサイトがどの順序で表示されるかについては検索エンジン側でさえコントロールできない偶然の要素が多すぎるのだ。さらにほとんどの消費者〔一般ユーザー〕はトップの3件より下に表示される検索結果をほとんど見ないという問題もある。オンラインで運営しているサイトが検索結果のトップ3に入っていなければ、検索エンジンからのトラフィックはきわめて低いものにとどまるだろう。そこでオンライン事業の経営者は検索順位をアップさせようと検索エンジン最適化コンサルタントと契約するが、その結果は「うまくいくときもないではない」といった状態だ。しかもオンラインの国の国境警備隊―検索エンjン・サービス―は結果を表示するルールをいつなんどきでも自由に変更することができる。その結果、対象サイトへのトラフィックが壊滅的に減少することさえある。サイトの運営者にはこのルール変更はいっさい知らされない。

検索エンジン広告も上で述べた検索エンジン最適化とまったく同様の問題を抱えている。誰でも検索エンジンにアカウントを開いて特定のキーワードを広告表示のために購入することはできる。しかしそのユーザーの広告が現実にどのように表示されるかは、検索エンジン側が恣意的に定めたルールによるほかない。しかも検索エンジンは広告出稿のためのアカウントをいつなんどきでも予告なしに停止することができる。つまり、通常検索でも上位にリスティングされるだけのトラフィックがあるサイトでない限り、検索連動広告を出稿したとしても、その広告がどのように表示されるかはあらかじめ予測できない。高い出稿単価で申し込んだところで、トップに表示される保証はない。なぜなら、検索連動広告が表示される順位は広告主がつけた単価の高い順ではないからだ。通常のオークションは単純に入札価格によって結果が決まるが、検索連動広告の場合は、表示された広告のクリックスルー率が加味される。たとえば、あるキーワードに対し、A社はクリック単価$1で、B社は$0.1で申し込んだとしよう。ところがB社の広告のクリック率がA社の10倍だったとすると、検索エンジンが両社から得る収入は等しくなる。

第2の問題はこうだ。検索エンジンはA社にせよB社にせよ、広告主が申し込んだ検索キーワードをいついかなるときでも無条件に無効にすることができる。この措置には予告もなく、ユーザーが不服を申し立てる方法もない。検索エンジンはどんな検索広告アカウントでも自由に停止することができる。検索エンジンの国に自由貿易という概念はない。検索エンジンの国の広告主(ここでは「売り手」と呼ぶ)は、世界の他の国(つまり「買い手」)との取引を望んでいる。しかし、検索エンジンという税関が隙間もなく国境を固めており、あらゆる貿易を厳重に管理している。検索エンジンの税関は、どんな取引であろうとまったく恣意的に援助することできるし、完全に妨害することもできる。消費者がオンラインで物品やサービスをを購入する際の主要な手段は検索エンジン以外にない。つまり検索エンジンは毎年、消費者が支払う何百億ドルという金の流れを実質的にコントロールしていることになる。検索エンジンにはその金がどの会社に流れるかを決定する力がある。どの会社が成功するか死命を制しているわけだ。

考えてみると、これはたいへん異常な状況ではないだろうか。Googleは検索と検索連動広告の市場を支配することによって消費者の行動を支配し、その結果、ウェブ上で行われるビジネスの世界を事実上支配するに至っている。Googleの恩寵を失った企業は、その理由が自らの不当な行為にあろうと、単にGoogleと意見を異にしたせいであろうと、事業の継続が危うくなる。

検索ビジネスというシステムは無数の理由によって検索エンジンを含む既成勢力の側に絶対的に有利だ。検索および検索連動広告の表示に関するルールが非公開であり、かつ常に変更されているため、経験豊富なSEO、SEMの代理店やコンサルタントは検索エンジンのルールをリバース・エンジニアリングすることによって、ボロ儲けが可能だ。つまり、この市場が成熟するにつれて、後発組には検索マーケットで成功するチャンスがどんどん薄れていくことを意味する。逆に、オンライン・ビジネスへの新規参入企業は、ウェブトラフィックを得ようとすれば、こうした代理店やコンサルタントを雇わざるをえなくなり、ウェブ事業への参入障壁が高まることになる。

私の会社がサービスを提供した企業の多くは、「自分たちはGoogleの手のひらの上で踊らされている」と強く感じている。明文化されておらず、往々にして不可解なGoogleの意思を常に窺っていなければ、製品のデザインからマーケティング戦略まで、あらゆる決定が不可能なのだ。Googleの検索で正しく表示されなくなるのではないか、不利益な取り扱いを受けるのではないかという懸念のために、Googleのライバルとのビジネスを避けている会社を私はいくつも知っている。それと逆に、Googleの利益になるようなビジネス関係をGoogleと結んでいる企業は検索結果の表示において有利な取扱いを受けることがあると信じている関係者もいる。また私は、Googleの検索連動広告を掲載することで収益を上げながら、一方でGoogle Adwordsに出稿してトラフィックを買っているサイトをいくつも知っている。Googleとこうした2重の関係を結んでいる企業は、2つ異なる行動の基準を持つことになる。Adwordsの基準とAdsenseの基準によるダブルスタンダードの世界だ。Googleとこのような密接な関係を結んでいる企業は、AdWordsへの出稿によって有利な条件でトラフィックを集めることができ、規則の適用においても寛大な措置を得られる、つまりそういった関係を結んでいない競争相手に対して戦略的に優位な地位にある、と信じている。

自由貿易を含む経済自由主義の限界がここに現れてくる。既存の経済法はGoogleのようなまったく新しいパラダイムに基づく存在に対処することができない。噂されているような政府と検索エンジンの秘密の親密な関係があるとすればますます事態は悪くなる。この問題に対する唯一の解決法は情報の開示である。透明性の確保だ。一定のアルゴリズムに基づいて検索結果を提供し、それによってトラフィックを生成するサービスを提供している事業者に、そのアルゴリズムを公開させなければならない。そうでなければ、検索エンジンと検索連動広告を利用するすべての企業が公正かつ公平な条件で競争することは不可能だ。もしGoogleが現在のように消費者の行動を左右する巨大な存在になっていなければ、そのような規制は不必要だろう。検索エンジンに健全な自由競争が存在するなら、市場の自浄能力に期待することもできる。しかし、残念ながら、状況はそのようなものではない。検索ビジネスをこのまま放任しておくことは不可能だ。

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(翻訳:滑川海彦/namekawa01