合衆国政府のCTO Aneesh Chopraが初めてバレーで語る: イノベーションの恩恵はそろそろ個人や企業から社会へ

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今夜(米国時間8/4)、Center for Democracy and TechnologyChurchill ClubTechNetの共催によりMountain ViewのComputer History Museumで行われたイベントで、合衆国のCTO(Chief Technology Officer, 技術担当最高役員)兼技術副長官(Associate Director For Technology)のAneesh Chopraが講演をした。彼が就任後シリコンバレーを訪れたのは、これが初めてである。

Chopraはまず、講演の皮切りに、これからは在任期間中にシリコンバレーを何度も訪ねて、対話を積み重ねなければならないと言った。次に彼は、テクノロジが個人の生活をどのように大きく変えつつあるかを展望し、彼と彼の妻が子育てのアドバイスを得るためにインターネットを使った経験を話した。しかし彼によれば、テクノロジは個人の生活に大きく貢献しているが、“グローバルな競争力の強化”や公共政策の面ではまだ十分に活用されていない。

Information Technology and Innovation Foundation(ITIF)の最近の調査では、合衆国における技術革新は絶対量の面では大きいが、成長率ではほかの国々に比べて非常に劣っている。同様に、我が国におけるE-Government(電子政府、政府の活動の電子化)の成長も、高等教育の改善も、そして次世代労働力の強化も、すべて停滞している。合衆国が比較的優位な分野においてすら、成長の持続性は衰えており、このままではその優位もいずれは崩れる。



これらの問題を解決するためには、Chopraによれば、長期的な政策と短期的な成果の実現の両方を、均衡をもって維持することが彼の務めとなる。

Chopra曰く、今は、どこにどんなツールがあるといった‘名詞’は氾濫しているが、ではそれらのツールで何をするのかという‘動詞’が貧困だ。彼は、バージニア州政府のお役人だったときの経験を話した。州の教育委員会が物理の古い教科書を更新しようとしたが、通常のやり方では4年かかる。そこで州政府は州内と全国から多くの科学者を集め、教科書の各章を無料で書いてもらうことにした。科学者たちや教授たちはそのボランティア仕事を喜んで引き受け、新しい教科書は1年で完成し、審査承認過程に入った。

もちろん合衆国が抱える課題の中には、実現までに何年もかかるものがある。しかしChopraは、今すでに実現途上にあるものをいくつか挙げた。たとえば6月30日には、政府は連邦情報技術ダッシュボード(Federal IT Dashboard)を立ち上げた。これは、前に立ち上げた政府の支出に関する総合的サイトの“出店(でみせ)”の一つだ。このサイトでは、政府のIT関連の支出とその効果を見ることができる。立ち上げから今日までで、訪問者はのべ3000万に達した。

利用者にとって親切とは言えなかった公民権行政と移民行政を、近代化するためのITツールにも取り組んでいる。新サービスはもうじき新しいオンラインサイトとして立ち上げ、申請者のステータスチェックもオンラインで行う。また通知通告はSMSやメール、そしてWebサイトで行う。

Chopraは”連邦政府にイノベーションをもたらすのは必ずしも容易ではない”と言う(その婉曲な言い方が会場の笑いをさそった)。しかし彼と彼のチームは、ブログ、wiki、相互的コラボレーションツールなど展開の容易な手法を全省庁に配備することによって、オープンな政府の基盤を築こうとしている。

Q&A:
Q: オバマ政権は医療記録のデジタル化に取り組みたいようだが、業界の反対とプライバシーの懸念、法制化がもたらす制約への懸念がある。
A: 大統領の考え方は、Webのオープン性を維持しつつセキュリティに対する脅威を排除するという点で一貫している。正しいセキュリティの枠組みがなければ、次の政策展開も不可能だ。保健医療に関しても同じことが言える。プライバシーとセキュリティの正しい枠組みがあって初めて、イノベーションも可能だ。大統領は保健医療のデジタル化に医療費支払いの改革を伴わせたいと考えている。今日の医療費制度では、予防活動を盛んにするためのインセンティブがない。医者はテクノロジが嫌いだという人が多いが、今ではどんなお医者さんでもEpocratesを使ってるではないか。良いシステムを作れば、必ず使っていただけると確信している。

Q; 私はITを教えていますが、学生に何よりもまず分かってもらうべき価値は何でしょう?
A: 顧客のニーズに耳を傾ける、ということだ。ITの人とビジネスの人は、使う言葉が違う。そのままでは意思の疎通がない。だから、質問などを相手の言葉でやっていく必要がある。ITの人たちがワークショップなどで顧客体験をすることも重要だ。

Q: 政府組織の古い文化や体質をどうやって変えていくのか?
A: 今のワシントンにはツールはいろいろあるが、その使い方が下手だ。たとえば国防総省にはdefensesolutions.govというものがあって、そこでいろんなアイデアを吸い上げたり試行することができる。たとえば、戦場で使う科学捜査キットの堅牢化のアイデアなどは、シリコンバレーの人が提案するのに向いている。こういうツールを、もっと上手に積極的に使っていきたい。また、いろんなツールの適用対象を拡大していく努力も重要だ。政府全体の中に、ほとんど忘れられているようなツールが山ほどあるはずだ。国防総省にかぎらず各省庁で、政府調達業務の改革が必要だ。〔無駄なシステム開発などが従来は多かったということ。〕

Q: 既存のソフトウェアの改革はどうするのか。政府内には大量の古いソフトウェアがあるはず。どうやってそれらを刷新していくのか?
A: 各省庁を弁護するために言えば、一部にはたいへん良質なソリューションがあることはある。今後は、必ずしもオープンソースにはこだわらないが、オープンなコラボレーションを積極的に推進したい。つまり、OracleやMicrosoftを買うこと自体には問題はないが、重要なのはその後の開発にかかる費用だ。たとえば特定の州のニーズに合わせてソフトをカスタム化する場合には、州間の互換性を損なわないためのモジュール化などが重要な手法になる。

Q: セキュリティはイノベーションの契機になりえると思うが。最近Melissa Hathawayが辞めたのは…。
A: オバマは、セキュリティは部門間のコーディネーションが重要と考えている。たとえば、政府とCTOとCIOの協調関係が欠かせない。彼女は辞めたが、仕事の手はまったくゆるめていない。

Q: 役に立つシステムにはプライベートな情報も重要だが、濫用の危険性もある。そのかねあいを政府としてはどう取っていくのか?
A: プライバシーに関しても政策枠組みを設けている。ここで詳しい議論をするつもりはないが、きわめて慎重にやっている。政策の指針になるのは消費者の選好(消費者が何を認めるか)だと私は思う。

Q: 保健医療のIT化も名詞ですね。動詞は何ですか?
A: 「有意義な使い方をする」だね。今議会は、医師たちがテクノロジを有意義に使うことを促進するためのインセンティブを検討中だ。処方箋が正しく使われているかチェックする、患者のコレステロール値を知っている、等々、有意義な使い方の定義の草案をダウンロードできるよ。

Q: 高等教育は費用が高い。積極的にオンライン化する考えはないか。断片的な試みではだめ。各大学等がローカルにやるのもだめ。全国横断的に大学卒業資格が得られるようにしてほしい。
A: いちばん有効なのは財団制のコミュニティカレッジだと私は思う。そういうところは、テクノロジの採用にもきわめて積極的だ。

下のはRobert Scobleが撮影したイベントのビデオだ:



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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))