Twitterのジレンマ―金を稼ぎ始めるべきか否か?

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ベンチャーキャピタリストなら誰でも心得ているが、一般にはほとんど知られていない問題がある。急成長しているスタートアップの収入に関する問題だ。今日(米国時間9/9)、共同ファウンダーのBiz StoneがBloombergのインタビューで「われわれは鳴り物入りの急成長を遂げてきた」と語っていたが、大きな注目を集めているスタートアップには大勢の買収希望者が現れる。

Twitterは今年に入って驚くべき急成長を経験した。経営陣はこれにどう対処してよいか戸惑っているにちがいない。

そこでいろいろな問題が生じる。そのひとつが、Twitterは金を稼ぎ始めるべきか否かという問題だ。一見、馬鹿げて聞こえる。しかし実はここで重大な決断が迫られているのだ。ひとたび金を稼ぎ始めたら、市場のTwitterに対する価値評価に劇的な変化が起きる可能性がある。

インターネット関連のスタートアップが巨額で買収された例の多くは、金を稼ぎ始める以前の段階のものだった。2006年にYouTubeがGoogleに$1.65(16億5千万ドル)で買収された。1998年に遡れば、HotmailがMicrosoftに$265(2億6500万ドル)で買収されたのもその例だ。どちらのスタートアップも買収の時点ではこれという売上は立っていなかった。ただ、両者とも急速に拡大する市場を支配していた。こうした例は他にも多数ある。

買収対象のスタートアップに収入が皆無の場合、会社の価値を収入に基づいて計算することはできない。普通ならそんな会社は買収の対象にならない。しかし問題のスタートアップがまったく新しいマーケットを開拓し、その市場を事実上支配している場合(Hotmailの場合はウェブメール、YouTubeの場合、オンラインビデオ)、買収を希望する側は潜在的な売上と潜在的な利益を推測しなければならない。

その証拠に、2006年のYahooからリークされた内部文書についてのわれわれの記事を読んでいただきたい。その文書によればYahooはFacebook の価値を$1.62(16億2千万ドル)と推算している。その根拠となる売上と利益の数字は、Yahoo側がさしたる根拠もなく算出したものに過ぎない。Facebook側で申し出た数字ではない。YahooがFacebookにはこれぐらいの可能性があると考えただけなのだ。しかもこのときの計算の根拠ときたら、2009年時点でのFacebookのユーザー数を 実際の数字の10分の1にしか見積もっていなかった。

YouTubeやHotmailの場合のような「金を稼ぎ始める前の買収」には往々にしてこうした価値評価のインフレが起こりがちだ。

しかし金を稼ぎ始めた後だと…

大手公開企業は重大な買収を決断する際には上にリンクを張ったような企業価値の表計算モデルを作らねばならない。そうしなければ取締役会は株主から訴えられてしまう。しかし本当の問題は、スタートアップ側がすでに収入を得ている場合、買収側で勝手な推測に基づく価値評価を行う余地がなくなってしまうことだ。表計算モデルは実際の収入と実際の成長率に基づいたものにならざるをえない。それと別の推測をするなら、別途、はっきりした根拠を示さねばならない。

スタートアップがひとたび金を稼ぎ始めると、買収の際の企業価値評価が下落する危険性があるのだ。もしその収入が周囲が期待したほどではなかったり、それ以外に、なんというか、クジラ…のような問題を抱えていたりすると、トラブルはいっそう深刻なものになりかねない。

つまりTwitterが特定のビジネスモデルを発動して実際に収入を得はじめるかどうかというのは、非常に重大な決断なのだ。検索エンジンにデータを販売するにしても、バナー広告や検索広告の掲載、有料プレミアム・アカウント、企業向けアカウントにしても、そこから実際にどれほどの収入が得られるか、フタを開けてみるまで分からない。そもそもこの分野自体、Twitterが作り出したものなので参考になるような前例は一切ない。

もちろん、もし幸運に恵まれて物事が非常に順調に運べば、買収されずに独立企業として運営を続けることによってはるかに巨額の金を稼ぐことができる可能性もある。(たとえばGoogleは無収入時代にYahooに買収される可能性があtった)。

しかし、この「もし」は大きな仮定だ。ことに、Twitterはまったく新しい世界的規模のコミュニケーション・サービスでありながら、非力なAPIと信頼性に欠けるウェブサイトが重大なボトルネックとなっている。はたして単一のサービスとしてこのまま順調に規模を拡大していけるのか、どこかで根本的な限界に突き当たりはしないかという懸念もある。しかしこれは別の話題だ。そのうち別の記事で検討してみたい。

画像: Million Clues

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(翻訳:滑川海彦/namekawa01