ベンチャーキャピタルは本当にイノベーションに貢献したのか

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SandHillRoad【編集部より:本稿は、起業家出身の学者、Vivek Wadhwaによる寄稿である。同氏は現在UCバークレー客員教授、ハーバード法科大学院上級研究員、およびデューク大学常任理事を務めている。Twitterアカウントは@vwadhwa。】

1986年、ビル・ゲイツがまだ売り込みの電話をかけていた頃、First Boston社の私のグループに対して、なぜわれわれがWindowsに全財産を賭けるべきかを説いた。リスクはあったものの、われわれは、創業間もない彼のスタートアップと契約した。これは、ゲイツのスポンサーのせいではなく(誰の名も挙げることさえなかった)、彼のビジョンとオタク度に賭けたからだった。同じようにGoogleも、LarryとSergeyの成功に便乗しようと裕福なVCがやってくる遥か前に大成功を収めていた。彼らが、すばらしいテクノロジーと必勝戦略を持っていたにすぎない。

だから私は、全米ベンチャーキャピタル協会(NVCA)の、「(MicrosoftやGoogleのような会社は)、初期段階でのベンチャーキャピタリストからの資金やアドバイスなしに、今日の成功はなかった」という主張が腹立たしくてならない。さらには、NVCAが1200万人の職と、$3Trillion($3兆ドル)(これは米国GDPの21%に当たる)の収益を生んだという彼らの言い分にも首をかしげざるを得ない。彼らはソフトウェア業界(インターネットやWeb2.0を含む)全体の81%の職を作ったと言い張る。そう、〈81%〉である。貯金をはたき、カードを限度額まで使い、家族を辛抱させてきた起業家たちを、もう少し立ててやれないものか。会社の株を分けろと言っているわけではない、ただ褒めてやってほしいだけだ。

そもそも、どこからあの数字をはじき出したのだろうか。彼らは、ベンチャーキャピタリストが一度でも出資したことのある企業すべてが2008年に生んだ収益を足し合わせている。つまり、もしJohn Doerrが1985年にビル・ゲイツにランチをおごっていれば、Microsoftは彼の帝国の支配下になる。たぶん私は誇張しすぎているのだろうが、実際NVCAの数字は、ほとんど信用できない。20年30年前に売却した企業の収益にVCが貢献しているなどと、どうして言えようか。いや、それにしても、テク系職の81%に、GDPの21%とは? さらに追求するなら、もしVCが現れなかったら、そういった仕事は、存在しえなかったとでもいうのだろうか。NVCAはどうやって因果関係を証明するのだ。

要するに、NVCAは何一つ証明できないし、一方、VCがこれらの企業に与えた影響は殆ど、あるいは全くないか、逆にマイナスだったことを示唆するデータが増えるばかりだ。最近終えた調査プロジェクトで私は、いくつかの高成長産業の549社の成功している企業のファウンダーをインタビューした。われわれが選んだのは、ガレージから出発して、本物の利益を生んだ会社だった。結果はといえば、連続企業家のうち、最初のスタートアップでベンチャー資金を得た人は10%に満たなかった。その後設立した会社については、ベンチャー資金を手にした割合は25%に上がった。つまり、最も経験の深い起業家たちの3/4が、ベンチャーキャピタルに頼っていなかったことになる(新しいレポートは10月に発表予定)。

NVCAは、VCがバイオテクノロジーなどの業界全体を生み出し、ソフトウェア開発と半導体業界を「米国経済の主要な原動力に変えた」と主張している。私はVinod Khoslaの大ファンだし、彼が本物のパイオニアであると信じている。しかし、この人はむしろ例外であって基準にならない。真相はといえば、VCはイノベーションを追いかけてはいるが、リードはしていない。彼らは血のにおいのするところへ行くのだ。

ベンチャーキャピタル資金と生産性の成長との相関については、ウィスコンシン大学マディソン校の上田正子教授による研究がある。上田教授は、いくつかの業界について全要素生産性(TFP、 イノベーションを測る目的に使われる)を分析した。その結果、VC投資が実は、TFPの成長より2年遅れていて、後期のVC投資ラウンドはむしろTFPの減少をもたらしていることがわかった。換言すれば、ベンチャーキャピタルはイノベーションを遅らせている、ということだ。さらに上田教授によれば、TFPの成長の遅れは、最初のラウンドの投資と相関があるという。ふつうの言葉で言えば、イノベーションのあるところにお金が行くのであり、その逆ではない。

NVCAレポートには、彼らの出資が経済界全体よりも高い実績を上げていることを示す、あらゆるデータが並べられている。しかし、Kauffman FoundationのPaul Kedroskyが、Inc.誌の急成長非公開企業 500リストを調べた結果は、これとは異なっている。 Kedroskyの調査によると、1997~2007年のベンチャー産業は、少額資本のRussell 2000インデックスに10%遅れをとっている(ドットコム全盛期からのリターンを含む)。さらに同調査によると、対象900社のうちわずか16%がベンチャーキャピタルの資金を得ていた。そして、米国で毎年生まれる60万の新会社のうち、ベンチャーキャピタルから資金を受けているところは1%に満たない。

NVCAのブードゥー経済学の根拠はいったい何なのか。彼らは頑に否定するが、VCの狙いは救済金と税回避だ。過去10年間、政府による支援が市場を歪めるという議論に長い時間とエネルギーを費してきた後、今度は裕福で肥大化したVC業界が、お恵みにあずかりたがっている。

VCの友人と飲んだとき、彼は最近の、やたらと賢くて手慣れた感じで群がる新人類VCのことを嘆いていた。こういう金鉱堀りたちは、MBAを持ち実務経験はないがIPOを嗅ぎ付ける能力には長けている(不思議なことに、MBAを持っていなければ、法学士を持っているから驚きだ)。このダメなVCマネーが巡り巡った結果、VCは山ほどの「ものまね」会社に出資することになる。これが、リターンの減少やスタートアップの失敗率の上昇を引き起こす。誰にとっても不幸なことだ。

今必要なのは、VCたちが出資先企業に課しているのと同じルールを、VC自身にも適用することだ。難しい選択を迫り、ビジネスモデルを整理させる。そして、中間業者に優遇税制措置をとる代りに、リスクを負ってイノベーションを創造する起業家たちに直接渡してやろうじゃないか。経済を支えているのは起業家たちであって、ベンチャーキャピタリストや投資銀行ではない。

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(翻訳:Nob Takahashi)