MP3かレコードか–音質を数値化して比較する"忠実度可能性指数"はほんとに科学的か?

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音質に関しては、それほどにぎやかな議論があるわけではない。低品質なエンコーディングのMP3が最悪で、本格的なオーディオシステムで正しくマスタリングされたメディアを聴くのが最高…これが一般的な結論だろう。しかしこの二極のあいだには非常に多様なメディアと録音方式があるので、一部のオーディオファンなどはこれらの音質の違いを数値や言葉で表現しようとして、さまざまな珍手法を編み出している。

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今回ご紹介するNewform ResearchのJohn Meyerは数値派で、蝋管からMP3に至るまでの主なオーディオメディアすべての実効ビットレートを計算した。上の画像はその一部だが、完全な表はリンク先の記事中または右の画像を拡大して見れる〔記事中のがよい〕。彼のやり方は、ある意味では科学的だが、疑問の部分もある。録音の実効ビットレートは主にサンプリングレートと周波数レンジで決まるから、計算は一応可能だ。でも現実はそれほど単純ではない。

アンプやスピーカー(またはヘッドフォン)とそのほかの音響条件によって、音質を左右する変数は絶望的なまでに複雑で多様だから、音源が千ドルもするカートリッジで拾っている33回転レコードか、それともiTunesで買ったMP3かという違いがまったく無意味になることもある。可逆圧縮コーデック(lossless codec)と高級なデジタルオーディオシステムともなると、問題はなお一層複雑だ。

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原音に忠実な録音再生は、メディアよりもむしろ録音再生の方式の問題だ。The Crystal Methodはビニールのほうがいい音だったかな? 今は彼らの音楽もほとんどがデジタル録音だし、その際想定されているメディアもCDなどデジタルメディアだ。しかし、ビートルズのサージェント・ペッパーは、シングルチャネルのレコードプレーヤーで再生したときいちばんいい音で鳴る、ということを志向して、アナログで録音およびミックスされている。だからRatatatのデジタル録音はほとんど原音そのものと言ってよいが、デジタル化されたサージェント・ペッパーは、原音にほど遠いだけでなく、録音の正しい再生にもならない(最近のリマスター盤のステレオCDはラウドネスを上げて再生装置による違いを補正しようとしている)。

アナログかデジタルかという議論は、それだけではあまりにも漠然とした概念なので、意味のある結論を導くことはできない。アナログと言っても、デジタルと言っても、どちらもあまりにもいろいろありすぎる。Meyerの記事はこの点を最後に注記しているが、いろんな録音再生形式のそれぞれの音質の“理論的上限”を求める場合にはその人の個人的な判断がどうしても入り込むということを、彼の記事は暗示しているようだ。しかし、彼はこんな正しいことも言っている:

アナログかデジタルか、ビニールかCDかといった、過去25年以上にわたる論争は、無知と誇張宣伝の霧の中で行われてきた。

技術をめぐる論争のほとんどに、上のことが言える。今後歴史家たちは、Blu-ray対HD-DVDについて何と書くだろうか? ともかくMeyerは、自分の記事には多数の要注意事項があると警告している。でも、このような一見便利な表は、インターネットの上でオーディオファンたちによる果てしない議論の素材になりそうだ。

ぼくの見方では、本物のオーディオファンは音楽のための動物園を作ると思うんだ。つまり曲をできるかぎり、それの元の生息環境とそっくりな環境に置くこと。そうしないと、本当の忠実度のテストはできない。

上の表がたぶん証明しているのは。DVDオーディオなどのビットレートの高いデジタル録音は、45回転レコードやカセットテープよりも正確な音響情報を聞き手に届ける可能性(あくまでも“可能性”)を持っている、ということ。だからMeyerは「忠実度可能性指数」と呼んでいるのだ。しかし今日の現実の音楽生産工程において、実際にそれが良い音かどうか、それは何とも言えない。アルバムの“バージョン 5.1”を出したりしているFlaming Lipsや、非常に厳しい録音環境の中で作られるSACDなどは、録音再生される音質の上限を更新しようとする試みだ。でも今のところは、録音再生の特定の方式やメディアだけを取り上げて、どっちがいい悪いと言う議論は、ほとんど意味がない。

[出典: Metafilter, ここは例によって議論がにぎやかに盛り上がっている。]

〔訳注:
Meyerの記事から、「忠実度可能性指数」の計算方法のところを、下に引用しておきます:

The bit depth times the sampling rate per second equals the number of bit per second the medium can deliver. This number divided by 100,000 for brevity is its Fidelity Potential Index. How fully the fidelity potential of each medium is exploited by the format structure and electronics limitations could be covered only by an extremely drawn out discussion so here, briefly below is a very truncated list of caveats.

[原文へ]

(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))