ニュース

Pandora:頻死状態から1年で黒字へ

次の記事

[CG]インテルのLight Peakインターフェイスにはアップルが決定的役割を果たした

stacks_093私はPandoraのTim Westergrenの歯に衣着せぬ物言いが、前から好きだ。この人は、これまでさんざん見てきたような、何もかもうまくいっていると得意げに言い訳しながら、その実、ユーザー数が落ち込んでいたり、ライバルに蹴落とされていたり、という連中とは一味違う。会社に問題がある時 ― Pandoraの場合は会社生涯の大半 ― 彼は悲惨な内情を、従業員訴訟の醜態にいたるまで話してくれるのである。

そして、それがPandoraに有利に働いた。Westergrenは自サイトの過激なファンたちに対して、RIAAが自社を倒産に追い込むかもしれない、と警告したことが功を奏し、そんなファンたちが送った苦情によって、連邦議会のFAX機が本当に通り壊れてしまった。Westergrenは、多くの起業家にないものを持っている。大切なのは、生き残ることであって、エゴではない。オンライン音楽の会社をやっている人にとっては、特にそうだ。

もちろん、今日のPandoraがあるのは、不断の努力と、予期せぬ3連続パンチのおかげだ。パンチその1:iPhoneアプリ。インターネットラジオがモバイルになったことで、その本質が変わってしまった。パンチその2:一流投資家らによる、嬉しい$35M(3500万ドル)の資金調達ラウンド。パンチその3:ようやく実現したRIAAとの妥当な合意

Pandoraには3500万人の登録ユーザー(昨年から倍増)がいて、$40M(4000万ドル)の収益をもたらしており、今年末には黒字になる見込みであると、NBCの報道番組「Press:Here 」でWestergrenが語った(番組は日曜日に放映されるが、ネットでは今見られる)。

中でも興味深いのが、広告についてのWestergenのコメントだ。下に貼ったビデオクリップにあるように、番組のホストであるScott McGrewと、私と同席したコメンテーター、NPRのLaura Sydellは、共に大のPandoraファンを自認しているが、そんなに広告を聞いた記憶がないと言うと、Westergrenがこう答えた、「それは、われわれのやり方が正しかったということですね」。

Westergrenによると、Pandoraユーザーに聞くと、口を揃えてあまり広告を聞いていないし、サイトにもあまり行っていないと言うそうだ。現実には、ユーザーはかなりの数の広告を聞いているし、多くの人が1時間に6回はサイトで広告の好き嫌い(サムズアップ/ダウン)を投票して、そこでまたビジュアル広告を見ている。録画の後で彼がこう言っていた、「本当のデータを聞くと(ユーザーは)みんなショックを受けます。たぶん操作が苦にならないからでしょう。これはリスニングに影響を及ぼす本能のようなもので、しかも見返りがありますからね。」また、クリックスルー率は業界平均よりはるかに高く、それは各ユーザーの好みをよく理解しているおかげだという。商品によっては、業界平均の〈10倍〉になることもある。

Pandoraには、もっとクリエイティブな広告手法がある。Westergrenが、最近ロサンゼルスで行ったAimee Mannの単発公演について、これもオフカメラで話してくれた。彼女の曲のファンだとわかっているユーザーの中で、会場のクラブまで車で来られる距離にいる人たちにPandoraからメールを送ったころ、たちまち会場は満員になったという。「これ、毎晩できないかな」とクラブのオーナーに墾願されたそうだ。

Pandoraは今回クラブから一切手数料を取らなかったが、もちろん今後その可能性はある。この種のプロモーションはPandoraの強味を直接生かすものだが、iPhoneやPalm Pre、Androidに載ったことで、さらに強化された。Spotifyの方がどのデバイスでも音楽が聞けるし、UIもすばらしいとまくしたてる人たちもいるが、Pandoraから出てくるものには、必ず発見がついてくる。Pandoraの中心にあるのは「音楽ゲノムプロジェクト」であり、ユーザーがなぜその曲を好きなのかを分析し、その曲の遺伝的特性に基づいて曲を推奨する。同じ曲を聞いた他の人の好みによるのではない。

もしこれを、現実世界の公演に応用できれば、TravelocityやExpediaが最初に航空会社に対してやったことを、会場オーナーやアーティストに対しても行える、つまり、公演が終れば用の無くなる空席を埋めることができるのだ。これは「広告」だけに価値を認めるのではなく、モバイルウェブならではのインタラクティブ要素を実用に供しているわけだ。Westergrenがこう言った、「これが私の一番楽しみにしているPandoraの未来です。私がバンドのいた頃にあればよかったのですが」。

Pandoraは、語られることは多いが捕えどころのないオンライン広告の至高の目標、「ユーザーが真に望む広告」に手が届きそうなところに来ているのかもしれない。もしうまくいって、満杯のオンラインミュージックの墓場に行かずに済めば、Pandoraは、なぜテク業界では画期的なアイディアより地道な作り込みが成功への近道であるかを示す教科書通りの事例になるだろう。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi)