MicrosoftのBallmerインタビューPart2―OSビジネスでは良いOSを一つ作って、どこまでもそれを育てていくのが正しいやり方だ

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先週私は MicrosoftのCEO、Steve Ballmerと1時間にわたる独占インタビューを行った。この記事にはビデオとインタビューのテーマを掲載した。つまり、ビジネスのビッグ・チャンス、OS/ブラウザ、携帯、検索、デベロッパーの5分野だ。

前回の記事ではむこう5年から10年の間にかけて何がMicrosoftにとってビジネスのビッグ・チャンスになるかを聞いた。

さて、今回は、ブラウザとOSをめぐる競争が激化しつつある現状をテーマに取りあげている。Ballmerはこの問題に関してはことに雄弁だった。特にMicrosoftが新しいブラウザ(IE8)を今年に入って出荷しており、新しいOS(Windows7)のリリースを来る10月22日に控えているからこれは当然だろう。

私はまず競争上の理由からMicrosoftにWindowsにIEをバンドリングすることを禁じた2001年のMicrosoftとアメリカ司法省の和解を取りあげた。

司法省との和解後の8年で環境は激変した。Microsoftのライバルは今やMicrosoftが禁止されたとおりのこと―ブラウザとOSのバンドル―をしようとしている。Googleなど名前まで同じにしている。Chromeはブラウザであると同時に、やがてデスクトップ用OSとなる。

この点に関してBallmerはOSとブラウザを別物と考えるのはすでに時代遅れだと述べた。今やブラウザとOSの間に区別はない、デバイス・ドライバを別にして、どちらも広い意味でOSなのだと主張した。これにはわれわれもまったく同感だ。 BallmerはChromeとSafariのシェアを「四捨五入の丸め誤差程度のもの」と呼んだ。しかし、GoogleがIEをChrome化するプラグインを発表したことはちゃんと知っていた。

この話題になってBallmerの雄弁に火がついた。BallmerはGoogle’が2種類のまったく異なるOS(AndroidとChrome)を作ろうとしていることを「互換性の点で大いに問題だ」と批判した。 Microsoftはデスクトップ用のWindowsと携帯用のWindows Mobileの2種類を持っているが、WindowsとWindows Mobileの互換性を高めるべく日々努力を続けていると語った。Ballmerは「GoogleがChromeを新たに開発し始めたのはAndroidを失敗作と考えたせいかもしれない」 と推測した。

MicrosoftはAndroid、Chrome、Safari、LinuxといったライバルのOS/ブラウザの攻撃に対してどのように対処していくのかという私の質問に対し、Ballmerは止まるところを知らぬ勢いでライバルのWindows/IEへの攻撃のアプローチを分析してみせた。Ballmerは説明のために図まで描いてくれた。(残念ながら持って帰るのは許してくれなかったが)。

BallmerはMicrosoftが上下左右、あらゆる方向からライバルのOSとブラウザ(これ自身も隠れたOSである)に包囲されていることを認識している。しかしMicrosoftの手は司法省との和解によって強く縛られている。しかしBallmerはライバルに脅威を感じてはいないようだ。このインタビューを終えた後でBallmerのある発言が私の耳に長く残った。

以下にインタビューのこのセクションのテープ起こしの全文を掲載する。

テープ起こし全文

ARRINGTON: Windows 7のローンチが近付いているが。何時だったか?

BALLMER: 10月22日だ。

ARRINGTON: 10月22日。10年前、連邦司法省はブラウザとOSをバンドルしてはならないと裁定した。この話を私が持ち出す理由はおわかりと思う。最近、GoogleはChromeブラウザのリリースに加えて、Chome OSの開発を宣言した。これについて感想は?

BALLMER: 分からない。というか、これは言い方が難しいのだが。Googleが何を狙っているのかさっぱりわからないというのが正直なところだ。2009年にもなって、こんなことは常識だと思っていた―つまり、OSとインターネットにアクセスしてコンテンツのレンダリングを行う機能をそれぞれ独立したものと考えるのはもう時代遅れだ。われわれが経験した長い法律論争を経て、そいうことには皆が気付いたはずだ。周知のように、われわれはその点についていくつかのルールを守ることで司法省と合意したわけだ。また、現在、ECと別途、この点に関する新たなルールについて協議中だ。しかし、細かい点は別にして、そんなルールづくりがそもそも必要なかったという点はとうの昔に常識になっていると思う。単純に市場シェアの数字が問題なのではない。どういう方法でそのシェアが達成されたかが問題なのだ。

Googleはブラウザと同じ名前のOSを開発すると発表している。誤解してはいけない。Googleはブラウザがオペレーティング・システム自体であるべきだと考えているんだ。〔Netscapeの開発者〕Marc Andreesenが90年代の末に言っていたことを今度はGoogleが繰り返している。覚えているかね? Andreesenは「Windowsはバグだらけのデバイス・ドライバのセットに過ぎない。役に立つ機能といえばNetscapeを走らせることだけだ」とか何とか言っていた。

ARRINGTON: たしかにそんな発言をしていた。覚えている。

BALLMER: で、GoogleがChromeブラウザ、Chrome OSに関して示している考え方というのがまさにそれだ。Chromeブラウザの開発の思想というのは、「WindowsなんてオレたちのChromeを走らせるためのハードウェア・ドライバのセットに過ぎない」というものだ。そのうち連中は「おっと、オレたちはハードウェア・ドライバだって書けるじゃないか。それならこれはChromeOSだ」と考えた。 まあそうはいってもChrome OSなんてのは今のところ影も形もないわけだが。 

ARRINGTON: なるほど。

BALLMER: それにChrome OSはGoogleがすでにリリースしたOS〔Android〕とまったく互換性がない。私には、そもそもなぜGoogleが2つ目のOSが必要だったのか理解できない。たぶん、1つ目のOSが失敗だったのだろう。でなければ…まあ、わからんがね。しかし私はGoogleがAndroidが失敗作だったと気づいたのじゃないかと疑っている。OSビジネスでは良いOSを一つ作って、どこまでもそれを育てていくのが正しいやり方だ。あれこれ違うOSを作るのは褒められたやり方ではない。Microsoftが提供しているOSは1個半だ。WindowsとWindowsMobileだ。Windows MobileはWindowsと完全に同じ機能ではないから、まあ半個と勘定しておこう。しかし、われわれはこの2種類のOSの互換性の強化に日々取�
�組んでいる。

だからGoogleがなぜ最初のOS〔Android〕で確実な成功を収めもしないうちに2つ目〔Chrome OS〕に手を出そうとするのか理解できない。私はこの秋、いや秋が無理なら、この冬にでもAndroid搭載PCのブームが起きるんではないかと思っていたんだが。

ARRINGTON: なるほど。

BALLMER: Googleも今は苦しい立場になってるんじゃないのか―ハードウェア・メーカーに対して事実上AndroidはPCのOSとしては死んだと宣言してしまったわけだからね。OSの本命はChromeだ、と。いやChromeが本命なのかどうなのか知らないが。やはりAndroidが本命ということになるかもしれない。しかしこの混乱はわれわれにとっては大局的に見て良いことだろう。報道された情報を見る限り、いったいGoogleがなぜこんなバカなことをやっているのか理解に苦しむ。ここにはGoogleのお家の事情が大いにからんでるのじゃないか。よくは知らんがね。

OSビジネスでは良いOSを一つ作って、どこまでもそれを育てていくのが正しいやり方だ

ARRINGTON: ではWindows 7の話に移りたい。最近リリースされて、若干の批判も浴びているSnow LeopardやChrome OSと比較してWindows 7はどのような位置付けになると?

BALLMER: 存在しない製品と比べろといわれても難しい。

ARRINGTON: たしかに。

BALLMER: そうだろう? それじゃAndroidとLinuxと比べてみようか?

ARRINGTON: どうぞ。

BALLMER: 競争上の観点からちょっと整理してみようか。われわれのWindowsは非常に成功した製品だ。それじゃどうやってWindowsに攻撃を仕掛けたたらいいいか? 一つは上からだ。専用ハードウェアを含めたハイエンドの製品だ。これは有効だ。SnowLeopardによる攻撃というのは正確ではない。Macによる攻撃だな。Snow Leopardはその一要素に過ぎない。これに対して横から、下から攻撃してみようというのがChromeとFirefoxだ。いや、横からではない。下からだ。安物による攻撃だ。具体的にはLinuxやAndroid、まだよく分からんがChrome OSなどが取ろうとしているアプローチだ。携帯電話という側面からの攻撃もある。電話がPCそのものになってしまえばよいんだが、そうさせない事情がいろいろある。そこでその方面からの攻撃もある。そういうさまざまな方向から攻撃を受けてわれわれがどう感じているかというと、全然心配していない。まったく自信を持っている。

ARRINGTON: ほほう。

BALLMER: つまり、われれは事実シェアを伸ばしている。Appleは高価だ。こういう不景気の時代にユーザーはそのことに気付き始めている.。Appleの製品は本質的に高い。この1年、われわれはMacに対してシェアを維持している。あるいはほんのわずかだがシェアを増やしたかもしれない。SnowLeopardがどうのという問題じゃない。あくまでWindows PC対Macだ。

ここにトレードオフがある。われわれは Linuxマシンに対してもAndroidに対しても非常に強い。その理由はわれわれが的確なソリューションを提供しているからだ。特に価格の面でそうだ。もともと高かった競争力がWindows 7でいっそう高まることになると思う。

ARRINGTON: いわゆるネットブック市場も含めて?

BALLMER: そのとおり。ネットブック市場は新しい戦場の入口だ。

以前はLinux PCが騒がれた。それからMID、モバイル・インターネット・デバイスというのが提案された。それらはネットブックの前史といってもいいだろう。そうしてネットブックがいよいよ市場に参入してきた。ここでもMicrosoftは圧倒的な強みを発揮しているし、今後も強みを維持していけると考えている。

携帯電話というのはやっかいな領域だ。今まで誰も携帯を本当のコンピュータにすることに成功していない。逆にコンピュータを本当の携帯にすることにも誰も成功していない。しかし、この領域でもわれわれは競争しなければならない。〔WindowsMobile〕6.5はいい製品だ。私はこの分野での将来も楽観している。この分野での競争がたいへんな社会的大騒ぎを引き起こすまでになってきたのが面白いところだ。

ARRINGTON: では、まだ競争は始まったばかりだと考えている?

BALLMER: もちろん、まったく初期の段階にある。皆がそのことに気付かないのは電話自体が非常に古くからあるからにすぎない。しかしスマートフォンはまったくの初期段階だ。この側面からの攻撃は、これは決して悪い意味で言うんじゃないが、われわれにとっていちばん油断がならないものだ。というのは、これが実はOSの戦いであることに気付いてない人間が多いからだ。スマートフォンはそれ自体が独自のOSだ。そこに多数のアプリケーションを囲い込んでいる。われわれはそういう相手と競争しなければならない。

ブラウザでもっとも成功したのはもちろんFirefoxだ。Chromeなんてものは、今のところ四捨五入の丸め誤差くらいのシェアしかない。Safariも似たようなものだ。しかしFirefoxは違う。ブラウザ市場に大くの参入者がいるのはおそらくMicrosoftにとって有利に働いているだろう。われわれはおおまかにいって、現在ブラウザ市場の74%握っている。われわれは新たな機能を多数備えたIE8を送りだして非常に強い立場にいる。われわれの競争相手もいろいろ思いがけない方向から攻撃をしかけてくるようになった。たとえば、Googleは昨日、IEをChromeに置きかえる(だがそうは言わない)ようなプラグインを発表した。

つまりこう言ったらいいだろうか。ライバルはIEに対していろいろ攻撃を仕掛けてくるるが、皆、単なるブラウザではない。それぞれがOSなんだ。ブラウザの仮面をかぶったOSだ。今回Googleが発表したのはIEのプラグインの仮面をかぶったOSだ。われわれはこうしたさまざまな攻撃を全力を挙げて迎え討たねばならない。そして市場がどこへ向かうか的確に見通す必要がある。その点で、いまひとつ私に分からないのは、ブラウザ戦争でわれわれに戦いを挑んでくる連中のビジネス・モデルだ。彼らの経済的動機はどこにあるのか? 単に検索ボックスを自分たちの支配下に置きたいのか、それとも他に隠れた目的があるのだろうか? たとえばFirefoxだが、彼らの収入のほとんどすべては結局検索ボックスから上がってくる。

ARRINGTON: やはり検索ボックスだろう。

BALLMER: そう、例のGoogle検索ボックスだな。

ARRINGTON: MicrosoftのSilverlightはすでに35%のコンピュータにインストールされていると聞いたが?

BALLMER: そのとおりだ。

ARRINGTON: するとSilverlightもWindowsと競合することになりはしないか? つまり先ほどから出ているブラウザも隠れたOSだという話からするとSilvelightもやはりOS的なものではないのか?

BALLMER: いや、それは戦略による。IEはWindows OSでなければ動かない。つまりIEのユーザーは100%、Windowsユーザーだ。IEがWindows�
�競合するなんてことはない。むしろ逆にIEはWindowsの競争力を高めている。

ところが逆に Windows以外のOSでも動くアプリケーションに人気が出れば、それはWindowsを特に有利にする要素にはならない。われわれは標準規格ベースのアプリケーションを支持している。これは重要なトレンドだからだ。しかし一方でわれわれはデベロッパーにWindows専用アプリを作るよう呼びかけてもいる。ご承知のように、Silverlightを使うと、クロスプラットフォームのFLASH風のアプリが作れる。しかしWindows専用で作り込めば、さらに使いやすく高機能なアプリになる。しかもWindowsのインストール・ベースは10億台だ。つまりWindows専用に最適化を図ってもデベロッパーにはその努力に見合う価値が十分あるというわけだ。

〔日本版注:今回はBallmerの生の発言が興味深いため、テープ起こしの全文を翻訳しました。これにともなって引用部分の重複を避けるためArringtonのコメントは冒頭にまとめました。〕

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(翻訳:滑川海彦/namekawa01