[jp] ヤミ金と振り込め詐欺: マネーの健康とフェアプレイについて

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加藤和彦の自殺は個人的にはMJの他殺(?)よりも残念だけど、ニュース等でその自殺について、もっともらしく、「あーだこーだ、あーだろうこーだろう」と言う連中ばっかし多い。シンプルにすっきりと唯物論的に「鬱病の兆候に気づかずに早期治療を強制しなかった私/われわれが悪かった」と言う人は、私の比較的雑な報道メディア接触の中では一人もいなかった。ことほどさように、物事の物理的な本質をずばり明快に把握することは、四六時中落ち着きなくにぎにぎしき(近視眼的でくだらない雑念の多すぎる)村人日本人にはなかなか難しいことなのである。

さて今回の私の記事はまず、「読者へのお詫び」なのである。英語版TechCrunchは毎日のように、スタートアップ(業態はほとんどWebサービス/Webアプリケーション)への「投資」のニュースがやたら多いのである。xyzがこのほど、VC(ベンチャーキャピタル)abc社、def社、ghi社からの合計ウン百万ドルの資金調達ラウンドを完了した、というワンパターンのニュース。非常に多いにもかかわらず、読んでおもしろいニュースではないので、日本版にはほとんど訳出していない。でも、ほんとうは、この手のニュースを毎日すべて訳出しないと、アメリカの(というかアメリカのVCの視野中にある)インターネット産業の灼熱のマグマの沸騰ぶりが、日本版の読者のみなさまにきちんと伝わらない。

ところで、日本で、こういう生まれたてほやほやの赤ちゃん企業への投資を毎日にぎやかに報じるサイトって、どこかにあるかな? ないよね。そういうニュースサイトがないというより、そもそも、そんなに豊富なネタ(投資事案)が日本の場合ないわけでしょう? だいたい、日本語で、いや、日本人が「投資」と言うと、なにか、既存の大きなものへの投資という意味合いが強い。しかも、「投資する」とはあまり言わないよね。一般的な言い方は「株を買う/売る」だ。今日の日本社会で株を売ったり買ったりしている人たちには、“投資をしている”という自覚も意思もないことが多い。

株で大損をしたら相手企業を訴えるとか、なさけない。資本主義社会の劣等生ですよ。今、株をもてあそんでいる日本人の一部は。

でも、現代英語では、いちばん日常的な日常語が「investする」で、どこのおじさんおばさん、おねーさんおにーさんでもこの語をふつうに使っている。逆に「buy/sell stock」は、日常語としてはやや稀少だ(あんまし使わない)。アメリカン日常感覚では、株はinvestしたことに対する…くっついてくる…レシートみたいなもんにすぎない。ここでちょっと、われわれ日本人一般庶民のあいだで「投資する」が日常語になってる状態を、想像してみてほしい。それを、今の日本人/日本社会の状況と比較して感じてみてほしい。「投資する」が庶民の日常語になってる日本は、個人が本当にempowerされた、とっても元気な日本と言えるのではないか(VCは、そういう人たちからも原資を集める)。

これまでに大量のTechCrunch記事を読んだり訳したりしてきたし、関連して、オベンキョウのために、そのほかのベンチャー関連やアメリカ経済関連のニュース記事なども読んできたが、TechCrunchにかぎらず経営関連の記事で特徴的なのは、fund raising(資金調達)に関する記事は非常に頻繁にあるが、借金(負債、債務)に関する記事はほとんど皆無であることだ。借金が、企業経営の話題にならない(アメリカ的に考えると当然なのだが)。

これと関連するかどうかわからないが、ニュース記事(アメリカの英語ニュース)の中に、日本の「ヤミ金」とか「振り込め詐欺」に相当する言葉がまったく登場しない。類似の現象はアメリカにも皆無ではないだろうが、日本みたいに大々的かつ頻繁な現象ではない、という感じだ。

そもそも振り込め詐欺というたまたま顕在している現象は、世の中の金の血流が悪いという不健康現象の現れの症状の一つだ。とくに日本では、若年層に向かっての金のflowが極端に悪い。彼らは慢性的に酸欠状態なので、あえぐがごとくに、犯罪によって金をmobilizeしようとする奴らも出てくる。しかもそれは、“珍しい現象”ではなくなってしまった! 恥を知れ、日本の経済担当為政者たちよ。

ヤミ金もまた、日本の同じ不健康現象の現れの一つだ。年利1800%(!!)の金を借りる、借りざるをえない、経営者がいる国が、日本のほかにもあるだろうか。とうてい、想像できない。日本の中小企業もほとんどが、資本の酸欠状態だ。

TechCrunchの記事などでおなじみのfund raisingは、言うまでもなく、借金ではない。投資の受け入れである。さらに言うまでもなく、投資者は投資先が成功しないかぎり自らの利益もない。金貸しは、相手の状態==投じた金のパフォーマンスとは無関係に利息と元本返済を取る。だから投資者は金を投じるということに自己責任があるし、利益の上げ方もフェアプレイだと言える。ヤミ金は、これまた為政者の痴呆で放置されている超アンフェアなマネープレイにすぎない。

で、結論としては、今の民主党に次ぐ、次の第三の政権は、今金貸しが運用している金と年寄りが無為に死蔵している金のほとんどが「投資」に向かうよう、大規模な荒療治を行う必要がある。正しい健康的な…元気活発な…マネー文化の啓蒙も必要だ。今実質95歳ぐらい(動脈硬化症)である日本経済の血流年齢を、熱い血が末端までとうとうと流れる20代30代にまで若返らせないかぎり、このニッポン国の明るい未来はない。

なんで民主党はだめやと言うかというと、彼らは「雇用雇用」と言うでしょう。でも、雇用なんて、ないところにはそもそもないよ。今、日本の既存企業は、人、足りてんねん。既存企業による「雇用」よりも何百倍も重要なのが、若い人たちによる「起業」ですよ。「起業」なら、社会や人間の、既存企業によって充足されていない新しいニーズを無限に掘り起こせる。主に、地域密着型で。インターネットやハイテクばっかしとはかぎらない、食い物系でも、ローテクのガテン(←最近廃刊)系のでも、アイデアはなんぼでもある。問題は、現状は資金への(‘借金への’ではない!)アクセス性が、超悪すぎること。

たしかに、大量の新貧民層(の自民党痴呆政権による創造)とか、慢性生活不安をベースとする子どもの虐待殺とか、たいへんな世の中になってるけど、そこで、無いものねだりの「雇用雇用」と念仏を言うのは、和彦の自殺にもっともらしい感想をぐちゃぐちゃ言うのといっしょや。今の日本経済社会の、緊急の治療を要する病気が具体的に何か、それはものすご単純にはっきりしてまっせ。

[写真クレジット: [ulasfilm.wordpress.com]], [barbarawilder.com]]

(筆者:iwatani(a.k.a. hiwa))