中国のインターネット:「模倣」が勝つ理由

次の記事

Facebook、世界平和のためのハブサイトを開設

grow-black-hair-longSong Liは、一見中国ウェブ起業家のステレオタイプのようにみえる。成功した米国サイトを食い物にして、世界最大の消費者インターネット市場を舞台に魔法のように成功企業を作り出す。やはり彼も、ChinaHRに投資して、少なからぬ金を手にしている。2回取引を通じてMonster.comに計$200M(2億ドル)で売却した求人掲示板サイトである。そして今は、Digu.comなるTwitterクローンと、Zhenai.comという、中国版Match.comになるかもしれないオンライン出会サイトを運営している。

しかし、この出会い系サイトを少し堀り下げると、いかにLiの発想が人と違うか、またいかにその発想が、欧米人が忘れがちな中国消費者ウェブサイトの側面を反映したものであるかが見えてくる。中国のウェブ起業家が異彩を放つのは、既存のビジネスのアイディアを ― 盗む、と言いたければ言ってもよいが ― そのビジネスモデルとプロセスを全面的に見直し、作り直すところである。これは、会社がいち早く利益を上げられるようになるだけではなく、中国内地産サービスが、中国進出を試みる米国企業を負かし続けている大きな理由である。

シリコンバレーの起業家にとっては、誰かのアイディアを改善して、手柄を全部自分のものにすることは、アンフェアであるか、倫理にもとることですらあるように思える。しかし、Googleは検索エンジンを考え出してはいないし、Facebookはソーシャルネットワークを考え出していない。重要なのは「実行」である。言い換えれば、中国がシリコンバレーから、独自のウェブのアイディアを一つ二つ学ぶことができるのなら、シリコンバレーのWeb 2.0世代は、稼ぎ方について中国から学べることがたくさんあるはずだ。

では、その中国版Match.comとはどんなものだろうか。Li自身の言葉を借りれば、非常に「実用的」である。中国には、結婚仲介の長い歴史があるので、オンラインで気にいった相手を見つけて、メッセージを送るというだけでは、多くのユーザーを引きつけることはできない。気楽にそれができる人たちは、ソーシャルネットワークを使えばいいのだ。そうでない人たちのために、すでに確立されたオフライン版サービスが、20万社からのきわめて地域的でさまざまなマッチメーキング専業企業から提供されており、サービスによって6ヵ月間で2000~60,000人民元の料金を取っている。比較的物価の安い中国だが、かなり高額の顧客獲得費用がかかっている。これは新しい独身者を入会させ続けるために、従来型の三行広告を多用しているからだ。

そこでウェブの出番なのだが、事情はもう少し複雑だ。中国の難しいところがこれ。消費者向けインターネット全体が ― パッケージ製品やエンターテイメント等の「旧世界」産業と並行して ― 成長、発展を続けているのだ。米国では、ソーシャルネットワークがWeb 1.0オンライン出会系サイトに対する、Web 2.0による回答であると言ってよいだろう。しかしそれならどうして、既に無数のMySpaceやFacebookの盗作が存在する世界で、出会い系企業で利益を上げることができるのだろうか。

Liは、興味深い中道路線に切り込んだ。サイトは、登録無料、検索も無料で、収益は350名からなる強力な人力マッチメーカーセンターによるものだ。気に入った相手をサイトで見つけたら、マッチメーカーに電話をしてデートをアレンジしてもらう。このサービスを利用するには、6ヵ月間で3000人民元(約$430)の定期料金がかかる。これはおよそ従来型結婚紹介サービスの最低価格に相当し、そこで出会う人の少なくとも1人は有料利用者である必要がある。マッチメーカーは、両人が会いたいかどうかを確認して、必要なら同サイトの2200万登録ユーザー(毎日4万人ずつ増えている)の中から代わりを紹介する。マッチメーカーはデートを設定し、その後のフォローアップも行う。

マッチメーカーはお友だちではない。自分の仕事をしているだけだ。もし不相応な相手を要求すれば、まあ適切に導いてくれることだろう。「現実的になっていただきたいだけです」とLiは言う。断わられた場合は、スタッフが詳しく質問して、どうして一方が2度目のデートをしたくないか理由を明らかにする。次に相手方に電話をして、詳しく正確に、何が悪かったのかを伝える。「少なくとも、断わられた理由と次回直すべき箇所を知ることができます。」とのこと。残酷に思えるかもしれないが、これがこのサービスの価値を明確にしている。Zhenai.comは黒字で、月間平均約$2M(200万ドル)の収益をあげており、前月比2桁成長を続けている。

人力頼みで革新のない中国、とも感じるかもしれないが、それは違う。Liは、専用のCRM(顧客管理)システムを一から作り、マッチメーカーをプロセスを通じて見守るとともに、心理学者を雇って、どんな質問をすべきか、傷心の人にどう接するかを訓練している。Li自身は、コーネル大学で財務のPhDを取得しており、進化生物学と分子遺伝学も学んでいる。

そして、統計データである。PayPalとSlideのファウンダーで、元カノたちのブラのサイズをはじめ、何もかもグラフにしたMax Levchinでさえ、Liのグラフと統計好きにはかなわない。出会いが成功したか失敗したかについての、残酷なまでに誠実な会話のすべてが、マッチメーカーからの出会い前のアドバイスに役立つ統計データの宝庫である。

何か例を見たいって? 長いストレートヘアーの女性の60%が、2度目のデートに持ち込んでいる。これは、長くてストレートな髪の多い中国人女性にデータを正規化した上での結果である。最悪のグループは? 短くて縮れっ毛は、わずか5%しか2度目がない。(自分宛のメモ:結婚していてよかった)。「マッチメーカーには、どうするべきである、とは言っていません。情報を与えているだけです」と素っ気ない。さらに男性は、黒いパンストと無色で光沢のある爪を好むという。(パンストの話をする時、Liは少し赤面した)。

このほかLiは、男性が統一的に「ヒップ・ウェスト比」0.7の女性にひかれることを発見し、これは彼が繁殖特性として違伝子に組み込まれていると信じていることだという。「太っている女性にしてあげられることはありませんが、ウェストを強調する服を着るように言うことはできます」、と冷静に語る。ちなみにこれは双方向に働く。女性はスーツを着た相手を好むが、これは女性に「甲斐性のある男性」を探す傾向があるからだ。Liは、月収が1000人民元増えると、平均的女性にとっての魅力が何%増えるかを統計的に追跡できると言っている。「これは数学的事実です。」「モデルを作ることもできます」とLiは言う。

Liが、いわゆる優越論者的人物ではないことは書いておくべきだろう。彼は賢い、メガネをかけた、ウォール街と香港の元デリバティブ商品取引会社幹部で、そう、既婚者である。彼は単に、物事を数字に変えて、一見定性的にみえる行動パターンを定量化することに熱中するタイプであるにすぎない。そして、これこそが彼を、中国市場向けに言語を変えるだけで、無分別に「ローカライズ」しようとする米国の消費者向サイトとは正反対の人物にしている理由である。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi)