FacebookはiPhoneと戦うデベロッパを支援すべきだ–そのほうが長期的には断然有利だよ

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去年の7月のThe New Apple Walled Gardenという記事で、デベロッパと熱心なiPhoneファンとのあいだに横たわるアイロニーについて書いた。後者は、ふだんはオープンスタンダードとかオープンソースの支持者であっても、ことiPhoneに関しては、それが閉じた私企業規格のプラットホームであっても平気なのだ。その記事が出たあと、誰かが予言した恐怖が現実になった。拒絶されたアプリケーション、そして拒絶されたアプリケーション、さらにまたまた拒絶されたアプリケーションという無限の連鎖だ。この件で本誌が報じた記事はものすごく多くて、どれにも大量のコメントやAppleに対する苦情や非難が寄せられ、しかも、長年Apple/iPhoneファンであった人が転向する例まで少なからず現れた。しかし、Appleへの苦情を寄せたブロガーやアプリケーションデベロッパの数に比べれば、Appleファン〜iPhoneファンの数は圧倒的に膨大であり、スマートフォンにおけるマーケットシェアも伸びているので、Appleはそれをよりどころとして平気な顔を続けた。しかしそれも、昨日(米国時間11/11)で終わりだ。

昨日は、高名なiPhoneデベロッパがこのプラットホームの性質にうんざりしたあげくに、そろそろ縁を切るべき時だと決断した。FacebookJoe Hewittは、そろそろ‘違うことをしたい’と言っただけでなく、Appleと手を切る理由を明言する勇気も持っていた。その理由とは、iPhoneというプラットホームの閉じた性質と、アプリケーションの承認過程に対する彼の不満だ。Joeは、iPhoneのFacebookアプリケーションを書いただけの男ではない。彼はiPhoneが発売されてからまだ半日も経っていない時点で、アプリケーションデベロッパがiPhone用のアプリケーションを書くためのライブラリをリリースした。それはまだ、いわゆる第一世代のころのことで、当時iPhoneの‘アプリケーション’といえばWebサイト(Webサービス〜Webアプリケーション)のことだった。そんな時代、しかもAppleからのドキュメンテーションもない、そういう環境でJoeは、その新しいプラットホームに対する自身の熱狂だけをエネルギー源として、AppleがiPhoneのために作ったネイティブのiPhoneアプリケーションをデベロッパたちが模倣できるためにライブラリを作ったのだ。

Joeのライブラリを真っ先にダウンロードしたデベロッパの一人としてここに明言できるのは、結局、初期のiPhoneアプリケーションのほとんどが、彼が発表したiUIライブラリを使用、または参考にしていることである。このような、Joeに対する高い信頼と彼の作品は、デベロッパを鼓舞しただけでなく、iPhoneの第一世代のソフトウェアをより容易に開発できる道を与えたのである。Joeの昨日の声明により、Appleは一人の取るに足らないデベロッパを失ったのではなく、そのプラットホームを初期から積極的に取り上げ、ほかのデベロッパたちを勢いづけた人物を失ったのだ。

iPhoneとAppleのファンの多くは、”Appleは優れた製品を作っているし、消費者が自由に選べる市場で勝利しつつある”と反論するだろう。確かに製品は優れている。この記事はMacbookで書いている。Rhapsodyにも、OS Xにも、Machの新しいカーネルにも、ユーザーランドで使われるFreeBSDのコード(ぼくのコードがそのどこかにある)にも、我を忘れて興奮した。Jobsの再来にはあまりにも感激して、最初の開発プレビューが出たときには、中でもとくにOpenSSLの導入について、彼とメールのやりとりをしたぐらいだ。一つのOSの中でUNIXの最良の部分と、優れたインタフェイスの最良の部分が結びつく…これほどすごいことは世の中にほかにない。ぼくはすっかり夢中になった。デスクトップのオープンソースという難問が、やっと解決するのだと思うと、嬉しくてたまらなかった。最大のアンチMicrosoft企業が、みんなが良いと知っていたもの(UNIX/BSD)を採用する。それによってMicrosoft/Windowsという世間のスタンダードと戦う。明白にBSDのライセンスがあることが、ぼくのその信念を裏書きした。ぼくは全身全霊、Appleのファンになった(今のファン坊や(fanboi)*たちとは違う意味で)。〔*: fanboi — Someone who is hopelessly devoted to something and will like anything associated with thier particular thing.(Urban Dictionary。〕

iPhoneの発売とともに、ぼくの熱はさめた。ぼくは、裏切られたと感じた。ぼくはハックしたかったのだ。ぼくは、市場を手中に収めつつある巨人の肩の上でそれをやりたかった。その巨人は、ぼくの旧友だ。ぼくは、オープンな市場というものをかたく信じている。それは、少なくとも理論のレベルでは、反論の不可能なものだ。iPhoneは、競合他社…既存の携帯電話メーカー…が完全にぼーっと間抜け面(づら)している市場に乗り込んで易々(やすやす)と勝った。iPhoneを認めたのは、今の業界の外にいる、既製の業界人よりも優秀な人たちだ。それなのに、オープンな市場というものに対するぼくの信念を揺るがしたのは、良質な企業であるはずの会社が一つの市場〔携帯電話〕に参入し、より優れたやり方の見本を示し、しかしそれを、全体的なエコシステムを損なう形でやったという事実だ。しかもそれを、思想的にはそれを本来なら認めないはずの人びとからの支持を得て行ったことだ…単純にその会社がアンチMicrosoftで、そして、そう、セクシーだ〔‘いかす’、‘かっこいい’〕からという理由で。

ぼくは、Microsoftが悪だと思ったことはない。ユーザにもデベロッパにも、自由な選択権がある…Microsoftから何かを無理やり押しつけられたことはない。それに、Microsoftは過去に、プログラミングを学ぶためのツールを無料で提供してくれた。そして最後に、Microsoftはデスクトップを支配している立場でありながら、ぼくが書くコードを決して‘審査’したりはしなかった。Microsoftがぼくに書簡を送ってきて、漫画のような吹き出しをアプリケーションで使ってはいけないと命じたことはない。Microsoftは、ぼくがどんなボイスメールハンドラを使っても文句を言わない。またMicrosoftは、ぼくに思い出せる範囲内では、ユーザにユーモアのセンス*を禁じたことはない (あの皮肉なオーウェルの1984はすでに取り上げた…ご指摘ありがとうJon)。今のデベロッパはモバイルのアプリケーションについてもプラットホームを選択できるし、iPhoneの人気は自分たちが作るアプリケーションがベースになっていることに気づいたら、Appleに対してもっと冷静になれて、もっと別のプラットホームの繁栄に貢献することもできる。〔*: Appleのユーモアのセンス(のなさ)に関するもう一つの記事。〕

HewittはFacebookという大企業の模範的なiPhoneデベロッパだから、彼の今回の声明はある種の臨界点を示している。今爆発をかろうじて押しとどめている唯一のものは、Facebook自身だ。Facebookは、Hewittをならず者として無視し、Appleとのビジネス関係を維持しようとしている。Facebookは今日(米国時間11/12)、企業としてのその姿勢を明白に示した。‘デベロッパ’としてではなく、会社の‘広報’として公式に“FacebookのAppleとの関係ならびにiPhoneプラットホームへの取り組みは今後も変わることなく強力であり”、“Joeのコメントに関しては相当量の混乱と思惑があり“(笑っちゃうね)、そして、“FacebookにはiPhone関連の開発を担当する優秀な技術者チームがある”(Hewittなんかどうでもいい)と声明している。Joeはまさに今、彼の雇用主から何らかの圧力を受けているかもしれないが、彼自身あのコメントを書く前にそれは承知していただろう。Facebookは単純に彼を別のプロジェクトに移してもよかったはず(Androidならいいね)。誰も、そのことに気づかなかっただろう。でも今回彼は立ち上がって信念を述べた。それは、これまで、多くの人が思っていたことだから、Facebookはむしろ彼を完全に支持し支援するのが当然である。Facebookが、透明性と、個人が意見を述べる自由を信ずる人びとの側ならば、今日のように、iPhoneをめぐる考えの違いぐらいで優秀な社員を露骨に疎外すべきではない。

Facebook vs iPhoneというレベルでは、Facebookの勝ちだ。Appleがあくまでも門番役に固執するなら、デベロッパは「ノー」の一言でそれに対して勝つ。デベロッパが完全にノーと言ったら、プラットホームとしてのiPhoneは陳腐化する。消費者も魅力を感じなくなる。Appleのブランドは無力化し、製品のデザインがどれだけかっこよくても誰も買わない。

Facebookはこのことをよく認識してJoeを完全に支持すべきだ。そうすれば今後は、たかがデバイスのメーカー一社の主張することよりも、大量のユーザを抱えるネットワークの言い分が通るようになる。今Facebookは、Joeの問題を好機として、そのしっかりとした前例を作らなければならない。Appleは、少人数のデベロッパならつぶせるかもしれないが、大きなデベロッパ(Facebook)が、短期的な企業利益をちょっと脇に置いて、Joeの側につくなら、長期的にはFacebookも含むデベロッパ側が大勝利する。今、われわれ全員が目をつぶらずにしっかり戦えば、自由な市場が再び機能するようになるだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))