生き残るためには、売ることがすべて

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Devito--Tin Men起業家に必要なスキルの中に、ビジネススクールでは教えてくれないことが一つある。それは「売る」こと。たしかに「販売」ということばには、中古車セールスマンがポンコツ車を売り歩く悪いイメージがつきまとう。しかし、自分を信じてもらうよう相手を説得する能力は必須だ。それは、販売が金のために商品を売ることだけではないからだ。販売とは人生である。理想的なパートナーをデートに誘うのは販売活動である。子どもに野菜を食べる気にさせるのは販売活動である。ボスに昇給の交渉をするのは販売活動である。そしてもちろん、会社をGoogleに売ることは、間違いなく販売活動である。人の言葉に耳を傾け、相手の欲しいもの必要なものを探り、その人が喜ぶ形でそれを提供する、という販売活動。では、技術系企業の中で最高のセールスマンは誰だろうか。開発者たちだ。

私がそう信じる理由を説明しよう。

私のキャリアは技術オタクとしてスタートした。最後にはSeer TechnologiesというソフトウェアスタートアップのCTO(最高技術責任者)となり、会社はわずか5年でゼロから収益$120M(1億2000万ドル)の企業へと成長し、株式上場を果たした。その後、大成功した自分の会社であるRelativeity TechnologiesのCEOになった(自分が燃え尽きて方針転換が必要になるまで)。この上昇の期間、数多くのスキルが私を助けてくれた。私より時には賢い人たちのモチベーションを高めて管理したり、市場や効率的なコミュニケーションを理解するさまざまなスキル、そして、経理や融資や法律等の退屈なものもいくつかあった。しかし、もし私がどうやって売るかを習得していなければ、会社は部屋にいた3人と電話と何台かのノートPC以上にはならなかっただろう。

若い頃、私はこれを信じていなかった。コーディングは販売の正反対の仕事だと思っていた。「営業」といえば、必要のないものにお金を使わせるよう人々を説得するための、人をだますつまらない仕事を連想した。そして、カモに逃げられないうちに必死に急いで集金しなければならない仕事だと。

PCWeenies on Sellingある日私はプロジェクトマネージャーに昇格した。居心地の悪い打ち合わせをいくつか済ませた後、私はすぐに、プロジェクトをうまく回すためには、同僚や上司たちに対して、一種の営業をする必要があることに気付いた。さらには、営業とは決して単純ではないことにも気付いた。実際、自分が良いと思った考えをメンバーたちに納得させることは、きれいなコードを書くよりも遥かに難しかった。そして、アイディアを実現するのに必要な要員と予算をもらえるよう経営陣を説得することはさらに難しかった。

プロジェクトマネージャーとして成功するということは、人の話をよく聞き、参加意識を持たせ、彼らが成功するために欲しい物や必要とする物を与えることだ。そのためには、誠実かつ繊細なニュアンスで、定常的にコミュニケーションを取る必要がある。大変な仕事だったが、非常にやりがいがあった。人が目標を達成するのを助けるために話を聞き、集中すると同時に、実に簡単に自分を高めることができた。会社が成功するためにグローバルな視点を持つことに焦中できたとき、部門間の有害な政治を容易に避けることができるようになった。私は昇進を続けて、ついには世界の5大投資銀行で技術担当VPにまで昇りつめた。

そして私は、自分のチームが作った技術を販売するスタートアップのCTOになる機会を得た。営業は、さらに重要なスキルとなった。与えられた時間は少なく、それを延ばす唯一の方法は、物を売って会社の金庫にお金を入れることだった。われわれは、本当にすばらしい、ライバルより遥かに優れた製品を持っていた。しかし厳しい現実は、自分たちがよほど多く売らない限り、ライバルたちが遥かに優位にあることだった。彼らは既によく知られていた。明日倒産することもない。一緒にゴルフもするしビールも飲むしランチも食べに行っていた。

私が師と仰ぐ先輩は、ボスのGene Bedellだった。Geneが会社を立ち上げた時、最初にやったことの一つが、全員を営業特訓コースに送り込むことだった。Geneには、10億ドル規模の事業を運営し、投資銀行の幹部クラスまで務めた経験があった。そして、Credit Suisse First Bostonのソフトウェアスピンオフだった私たちの会社に、シード資金を出すようIBMを説得することもした。当初私の技術チームは、見込み顧客を絞ったり、販売契約をまとめる方法を学ぶよう教えられ、なぜ最新のバージョン管理ソフトウェアツールではないのかと抵抗したものだった。

数ヵ月のうちに、わが社は世界中の一流企業を相手に数万ドル規模の営業成績をあげた。これをやってのけたのは、わずか2名のベテラン営業と、パートタイムで手伝った開発スタッフたちだった。これは、営業の訓練を受けた開発者が、営業プロセスの中で非常に高い価値があることを示すものだった。彼らに、人を説得する上で不可欠な2大要素を持ってい。信用と信頼だ(大部分においては)。例えば、見込み顧客が営業担当を深く信用していない場合でも、一目置く開発者を信用する可能性はずっと高い。これは営業プロセスにおいて、きわめて強力な要因であり、われわれが頻繁に行なった方法だ。当社は世界最大級のソフトウェア会社と競合することもあったが、ほぼ毎回販売競争に勝った。戦略的パートナーには、自分自身もCTOとして出向いた。私の最大の成果は、日本IBMとの$8.6M(860万ドル)の契約だ。

カスタマーサポートと営業を何よりも重視するという文化によって、われわれは年商$120M(1億2000万ドル)の黒字会社へと成長した。わが社の開発者たちは、顧客との間に長期的な信頼と友情の関係を築いた。彼らは、顧客の要求を理解して売れる商品を作るための努力を惜しまなかった。新しい開発プロジェクトに対して、直接顧客から資金提供されたことも一度ならずあった。カスタマーサービスの問題が起きた時には、技術者のリーダークラスが、夜遅くまで献身的に働き、世界中を飛び回って自らサポートした。

では、どうやって営業を学ぶのだろうか。簡単だ。販売・営業に関する本は文字通り何百冊もある。方法はさまざまだが、どの本もつきつめれば、言っていることは顧客のニーズを理解して自らのメッセージに磨きをかけることだ。さらには何百という「営業セミナー」も世界中で開かれている。ただし、顧客の望まない物を売るようにと教えるセミナーには要注意。その人が必要としているものを買うように説得することと、人を騙すことは別物だ。私のお気に入りの本は(多少偏見もあるが)Gene Bedell自身の書いた『Three Steps to Yes: The Gentle Art of Getting Your Way』だ。

ちなみに、この種のことを言っているのは私だけではない。Lean Startup Methdology(スリムベンチャー手法)の大御所たち、Dave McClure、Brad Feld、Eric Riesらは揃って「今すぐ営業」のアプローチを支持している。「再生ベンチャーキャピタリスト」Healy Jonesは、WhartonのMBAでの失敗の経緯ブログに書いている。それでも、シリコンバレーでのネットワークのイベントで少し話してみれば、殆どの技術系労働者が、営業は自分の職務ではないと考えていることがわかる。賢明な技術系起業家は、社内の全員が営業担当であることに気付き、すぐにその現実を受け入れる。スタートアップが成長し成功するためには、その方が容易だ。プログラマー、事業開発、広報、品質管理、みんなノーだ。全員が営業。生き残るためには売るしかない。

編集部より::本稿は、起業家出身の学者、Vivek Wadhwaによる寄稿である。同氏は現在UCバークレー客員教授、ハーバード法科大学院上級研究員、およびデューク大学常任理事を務めている。Twitterアカウントは@vwadhwa
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(翻訳:Nob Takahashi)