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インターネット広告の未来: メディアはもはやメッセージではない, 人がメッセージなのだ

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編集者注記: このゲスト記事を書いたSeth Goldstein (@seth)は、socialmedia.comの協同ファウンダだ。socialmedia.comは、ページではなく、世界で初めての、人を使う広告サーバを作っている。そのプラットホームは、複数のいろいろなタイプのソーシャルメディアを横断するオーサリング、サービング、それにリポーティングをを提供する。同社の広告はすべて、ほんものの人間のほんもののメッセージだ。Sethはまた、IAB(Interactive Advertising Bureau)のSocial Media Committeeの議長でもある。

ソーシャルメディアとそのアイデンティティ

今われわれの目の前で、メディアと広告産業の根底的な変化が起きつつある。それは、ソーシャルメディアの登場がもたらした変化だ。10年前には存在しなかったFacebookやTwitterのような企業が、注目経済(attention economy, 人びとの注目を争う経済)の大きなシェアを従来のメディアから奪ってしまった。このことを象徴する事件が、まったく同じ時期に、Businessweekが$5M(500万ドル)足らず(+債務の肩代わり)でBloombergに身売りしたのに対し、Foursquareの美形のいとこである GowallaがSand Hill Roadをちょいとドライブしただけで、少数持ち分として $8.4M(840万ドル)を集めたことだ。

この大変化のさなかにメディア企業は、“自分たちの”オーディエンスの尻を追いかけて、彼らの注目をマーケターたちに売ろうとしている。しかしメディアがブログの書き方やSEOやCPMを稼ぐ術などをやっとおぼえたころには、彼らの企みをすり抜ける新しい消費者行動が生まれている…モバイルデバイス、位置対応サービス、そしてソーシャルグラフだ。

消費者行動のこのような変化を生み出している源泉は、ソーシャルメディアがコンテンツ製作の手段になりつつあるという傾向だ。ソーシャルメディアは10年前に、Evite、Shutterfly、Blue Mountain Artsといった、個人がオンラインでコミュニケーションするためのツールとして始まった。しかしその後徐々に、もっと多様できめ細かいソーシャルな対話的活動(ソーシャルインタラクション, social interactions)をサポートするシステムが作られていった。それを実現したものは、個人が自分に関する情報を容易に表現できるための新しい形式(ステータスアップデート、トウィート、チェックインなど)と、そういう個人的な情報をフレンドやフォロワーたちと容易に共有できるための新しい配布形式だ。

ソーシャルメディアの拡大によって、インターネット経験の中心がページから人へと変わった。その結果、マーシャル・マクルーハン(Marshall McLuhan)の理論とは逆に、メディアはもはや単なるメッセージではなくなった。従来、言葉や映像、そしてそれらの文脈と意味は恒久的なものと考えられ、それがメディア理論の基盤を成していた。しかしますますリアルタイム性を強める環境においては、コンテンツは人間のアイデンティティに道を譲る。そしてこれまでの文脈分析は動的なソーシャルインタラクションに脇へ押しやられる。

メディアはメッセージであり…..メッセージはメンバー(人)である。だからソーシャルメディアに関する議論は、アイデンティティの議論なしには成り立たない。FacebookやTwitterのようなソーシャルネットワークの成長は、オンラインのアイデンティティシステムの成長ととらえなければならない。この理論を軸として、さまざまな技術とビジネスのトレンドが収斂しつつある。

その中でも来るべき2010年に向けてとくに重要と思われるのは:

  • Facebookの唯一の対抗馬はTwitterである。ユーザ数ではTwitterはFacebookよりかなり小さく、そのソーシャルグラフは非対称であり、したがってゆるい。しかしTwitterは、ユーザ数の少なさをブロードキャスト型のメディアモデルの提供によって埋め合わせている。セレブたちは、Twitterを使って大きなオーディエンスに容易に直接到達できる。TwitterはFacebookに比べると相当にメディア的だが、しかし同時にまた、Googleによってアイデンティティの世界へ引っ張り込まれている。いかなる条件下でもFacebook Connectを組み入れることはありえないGoogleは、TwitterのAPIを武器に戦おうとしている(一方YahooやMySpaceは独自性を捨ててFacebook Connectを嬉々として取り入れている)。ここでおもしろいのは、Microsoftがどう出るかだ。MicrosoftがGoogleと何かで提携することは考えられないが、Facebook Connectの組み入れは、何年も前にMicrosoft自身がIBMに対してやったのと同じこと*を、Windowsに対してやることになるだろう。〔*: 世界標準機IBM PCに対してMS-DOSを提供したことにより、結果的にMicrosoftの世界制覇となった。〕
  • 広告代理店たちは企業の便利屋としてこき使われることにうんざりしている。彼らは、メディアにデータを提供して需要側プラットホーム(demand side platform, DSP)*になることによって、利益率を大きくしたいと望んでいる。たとえばIPGのCadreon部門やVivakiの”audience on demand network”はどちらも、クッキー交換やリターゲティング(re-targeting)データベースなどからの独自データの提供をねらっている。そういう新しいデータを利用して既存のクリエイティブ資産のターゲティングを改善するだけでなく、代理店たちは毎回そのときだけで終わる“なにかすごいキャンペーンアイデアはないかね“タイプのビジネスから卒業したいと願っている。消費者たちは、従来のオンラインマーケティングの、帯域を大食らいし、ホームページを乗っ取る「お邪魔虫」たちをますます無視するようになっている。ソーシャルメディアの平均的ユーザは、今では本物の人間からの本物のメッセージしか相手にしない。広告代理店は、多様なソーシャルグループによっていろんなやり方で共有され配布され、しかもブランドの基本的な価値を維持できるような、低帯域の広告コンテンツの作り方を学ぶ必要がある。〔*: DSP, 精度の高いターゲット消費者/購買者像==需要者データを提供するプラットホーム。〕
  • パブリッシャー*は自分の上質なオーディエンスを自分のサイトの外部に安売りしたくない〔*: publisher, コンテンツや広告の掲載者、ページのオーナー〕。代理店は彼らの貴重な…営業コストのかかっている…オーディエンスを、クッキーデータのばらまきなどによって、大量の広告在庫を抱える広告ネットワークにはした金で売り飛ばそうとするが、それはパブリッシャーにとってまったく割に合わない。それに対し上位100ぐらいの有力パブリッシャーは、クッキーの消去を要求する消費者保護団体と提携してユーザの匿名化を図るだろう。ESPNやWSJは、すべてのユーザがクリック直後に匿名化されることを喜ぶはずだ。これは、Googleのインデクスから自分のコンテンツを外したいと考えるMurdochの意図に似ている。情報の配布者がユーザのアイデンティティを情報の消費のコンテキストから切り離せるようになったら、“無料”配布の価値も大きく損なわれるだろう。
  • 広告主たちは自分自身のソーシャルグラフを作って維持する信認義務を認識する。これまでのソーシャルメディアはブランド(企業や製品)にとって、いろんなやり方をROIとは無関係に試せる遊び場(プレイグラウンド)だった。FacebookやiPhoneのアプリケーションを作ったマーケターは、配布が無料ではないことを知る。そこで彼らはTwitterのアカウントやFacebookのブランドページを利用してスケールアップをねらうが、しかしそのやり方をマーケティングのそのほかの部分に応用できない。一方消費者たちは、たえずブランド(企業や製品)のことをコミュニティでおしゃべりしているし、どの製品やサービスが好きだ嫌いだという声があちこちで飛び交っている。広告主たちが、このような対話に関する知識を、それが生じているソーシャルネットワークの中だけに放置するとしたら、それはとても、もったいないことだ。むしろ必然的に今後の企業は、自分たちのブランドに関するすべての言及と、その発言者(とそのフレンド)たちのアイデンティティに関する情報を、自分自身のソーシャルグラフとして持つ必要に迫られるだろう。

以前は単なるオーディエンスだった者たちが、自分のソーシャルなアイデンティティを梃子(てこ)として、コンテンツの創造へと向かっているとき、ではメディア企業や広告主たちは何をすべきか? メディア経済においてこの変化に対応するためには、企業はFacebook ConnectやTwitterのAPIなどを組み込んだアイデンティティフレームワークを確立する必要がある。そしてそこから経済的利益を得るためには、本稿で述べた、代理店やパブリッシャーや広告主が直面している課題に、挑戦していただきたい。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))