[jp] 「Amebaなう」の真のライバルは、Twitterではなくアメブロだ

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10月にサービス開始を明言して話題になったサイバーエージェントのTwitterクローンである「Amebaなう」が、12月8日に携帯版、12月10日にPC版と続いてリリースされた。

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私自身、過去に個人ブログで「AmebaなうはTwitterにとって、かなりの強敵になり得るんではなかろうか」という記事を書いた経緯もあるし、この2社の今後の戦いはグローバルのデファクトスタンダードになっているサービスと、日本のネット事業者のサービスの戦いという意味でも興味深いので、実際にサービスを使っての感想をまとめてみたい。

Amebaなうの機能自体は、APIが公開されていないために外部アプリが全く存在しないことを差し引いても、メッセージの保存期限が1ヶ月だったり、フォロー数が500人で制限されていたり、一つ一つのメッセージのPermalinkが存在していなかったりと、正直Twitterとは比べるべくもない。

サービス開始初期に、かなり基本的なセキュリティのトラブルも発生するなど、システム面でのスケーラビリティだけでなく、セキュリティ面で懸念する声もある模様。現状においては、地球の神経システムを目指しているTwitterとは、ビジョンも思想も全く違うサービスだといえるだろう。

ただ、この点は開始してからまだ2週間もたっていないことだし、今後変更される可能性はあるので、現時点で評価するのは酷というものだ。

逆に、細かいAmebaなうの機能自体を見ると、日本人向けにTwitterの分かりづらい点をうまく修正してきている印象を受ける。@によるコミュニケーションを、Reというよりメールの返信に近い形にし、コメント一覧を手軽に表示できるようにしているし、投稿方法は面倒な印象があるものの画像添付ができるようになっているのも興味深い。日本のケータイ文化向けに絵文字に対応しているのも地味に重要なポイントだろう。

ただ、気をつけなければいけないのは、Twitterとの戦いにおいては、機能差というのは実はほとんど意味を持たないということだ。過去を振り返ってみると、「Twitterクローン」と言うのは、カテゴリとしての名称が存在する割には、完璧というほど類似サービスが駆逐されてきた歴史を持っている。

例えば、JaikuというTwitter類似サービスがあり、Googleに買収されて話題になった2009年1月には開発を打ち切られているし、Diggの創業者であるKevin Roseが招待制で開始して話題をさらったPownce2008年末に終了している。2008年の春にTwitterの再来と期待されたFriendFeedをもってしても、Googleトレンドの検索数は誤差に過ぎない。

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日本においても、TimelogやWassr、もごもご、Haru.fmなど多数のTwitterクローンが存在するが、Twitterに圧倒的な差をつけられてしまっているのが現状だ。

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ブログサービスが複数乱立する状況になったのとは、全く違う。Twitterのタイムラインは、非常に排他的なネットワーク効果を持つハブページとなっており、Twitterに人が集まれば集まるほど、他のサービスとの両立や、共存を難しくするのだろう。結局、Twitter的なタイムラインを持つサービスは、一人に一つで十分なのだ。

単純にサービス単体での機能を比較すると、Twitterに敗北したサービスは明らかにTwitterに機能で優っているようにみえる。だが、Twitterは早期にプラットフォームをオープンにすることで、サービスの魅力は外部の協力者のツールで補い、多様な利用者を早期に獲得してネットワーク効果を確立し、他者が追いつけない状況をつくりあげることで勝利を収めてきたのだ。

その視点で日本市場を振り返ると興味深いのは、実はAmebaなうを提供しているアメブロこそが、現在はブログ、特に携帯で閲覧し、更新するブログの分野でネットワーク効果を発揮しているサービスだという点だろう。当然、多数の芸能人ネットワークを保有するAmebaなうが、芸能人の間でネットワーク効果を発揮できる可能性も高い。

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ただ、現時点では、話はそう簡単ではない。

ITmediaの記事によると、「Amebaブログを利用する著名人のうち200人以上がすでに利用しており、開始から1時間で1万人にフォローされた人もいる」とのことだが、実際にそれらの芸能人のAmebaなうを見ると、1時間で1万人にフォローされたらしいマオさんが記事執筆時点で15638人のフォロワーで、アメブロで殿堂入りしている辻希美さんでも8000人弱。現在、Amebaブログの芸能人・有名人総合ランキング1位の北斗晶さんも5000人台という状況。開始直後の勢いと比較すると、落ち着いてきている印象も強い。

特に注目したいのが、つぶやきの数だ。

辻希美さんが現時点で4件しかつぶやいていないのは論外としても、比較的つぶやいている北斗晶さんや押切もえさんでも一日1~2件程度。3名ともアメブロの方は、一日平均3~10件はアップしているのに、である。

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ブログの「日」記に対して、Twitterは「分」記と呼ばれることもあるが、現状の芸能人におけるアメブロとAmebaなうに限って言えば、この状況は逆転してしまっているのだ。要するに、Amebaなうに参加している芸能人からすると、まだアメブロとAmebaなうの使い分けのイメージが出来ていないのだろう。

上述の個人ブログに以前書いたように、実はアメブロというのは携帯でいつでもどこでも更新できるというTwitter的なサービスだ。ある意味、日本のマイクロブログの先駆者だったといえる。

そもそもアメブロ自体をそうやってTwitter的に使っていた芸能人からすると、Amebaなうもアメブロも、現時点では利用目的が同じになってしまっている。そうなると、当然アメブロのほうが芸能人ランキングで上位になればメリットも大きいし、記事マッチと言う記事広告サービスで収入も見込めるのだから優先度として高くなってしまうのは当たり前。

つまり、Amebaなうにとって、最大のライバルはアメブロなのだ。

そういう意味で、Amebaなうが今後力をいれるべきは、アメブロと異なるAmebaなうならではの利用シーンを芸能人・有名人に対して強調していくことだろう。おそらく、そのヒントの一つはTwitterで成功している広瀬香美さんにある。広瀬香美さんは19万人以上のフォロワーを獲得しておリ、Twitterの女王の座を手にしたといえるが、すでに7月にTwitterを開始してから5ヶ月で7200以上のツイート数がある。つまり一日平均50回近くつぶやいている計算だ。

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それを引き出しているひとつの要因が、勝間和代さんとの掛け合い。つまり芸能人・有名人同士の掛け合いなのだ。

現在のAmebaなうに登録されている芸能人は、ほとんどの場合数名しかフォローをしておらず、極端な場合はフォロー数が0人という人も多い。これではせっかくAmebaなうにログインしても、自分の発言しか見えないわけで、自分の独り言を不特定多数に向けて一方的に発信する、という芸能人ブログと使い方が全く同じになる。これでは、すべての利用者がフラットにタイムライン上に存在するという、Twitterクローンの特徴を芸能人に理解してもらえないだろう。

そういう意味では、Amebaなうで今後推進するべきは、芸能人に他の芸能人をフォローしてもらい、Amebaなう上で積極的に雑談をしてもらうようにすることだろう。

例えば鈴木杏さんのAmebaなうは、芸能人を中心に20人をフォローしておリ、一日に10件以上投稿している日もある上、他の人と何度かやりとりをしているようだ。鈴木杏さんの場合は、ブログの更新は一日一回程度というペースが決まっているようなので、その隙間のコミュニケーションにうまくAmebaなうがはまっているのだろう。そういう意味では、アメブロの人気ランキングに登場しないような芸能人の中に、Amebaなうの原動力になる芸能人がうもれている可能性が高いともいえる。

こうした芸能人同士のコミュニケーションがAmebaなう上で実施されるようになると、当然その芸能人のファンの人達は芸能人同士の可視化された楽屋トークをみに、Amebaなうに押し寄せることになるはずだ。

当然、Twitter Japan側が今後取り組むべきことは同じ。すでに原田知世さんが12月にTwitterを初めてフォロワーが8000人を超えるなど、Twitterに芸能人が多数流入してきそうな気配もある。そうなったら、Twitterが、アメブロにとっての強力なライバルになるのは間違いない。

そうなる前に、Twitterへの芸能人流入をAmebaなうが阻止できるかどうかは、まずAmebaなう自身が兄弟であるアメブロの影を乗り越えて、独自の存在意義を示せるかどうかがポイントになりそうだ。

(徳力基彦 ブログ/Twitter