キャリアが支配するケータイに終わりを告げたのはAppleとGoogleの共闘チームだ

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Nexus OneがVerizonとVodafoneにも対応, それは単一機種の名前ではなく将来の多様なシリーズ製品の総称だ

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Googleの今日のイベント(米国時間1/5)は、Nexus Oneという一つの製品の発表会だと誰もが思った。ところが、そこで聞こえる言葉は、”製品の多様化”とか”複数のメーカー”、”複数のキャリア”、”これは始まりにすぎない”といったものばかり。今日発表されたのは一つのデバイスではなく、合衆国のモバイルのあり方を根底から変えてしまおうとするGoogleの戦略の、その第一歩だ。しかもそれはAppleがかなりの部分ですでに地ならしをしているから、きっとうまくいくだろう。

5年前のケータイとそのサービスの姿はどうだったか。どちらも、ひどいものだっただろう。でも、ほかに良いものがないから、みんなその悲惨に耐えていた。そしてそこへ、iPhoneが登場した。それはすごくいいモバイルデバイスだったから、ぼくも含む多くの人たちがそれまでのサービスプロバイダを捨てて、iPhoneが使える唯一のキャリアであるAT&Tに乗り換えた。そしてそれはAT&Tを強くしたというより、モバイル業界の権力の大きな部分がAppleに移行したのだ。Appleに、誰もが欲しがるデバイスがある。Appleはその強みを生かして、独占キャリアであるAT&Tから巨額なマージンをせしめた。これまでのモバイル業界では地味な裏方さんにすぎなかったデバイスメーカーが、突如舞台の真ん中で照明を浴びる派手なヒーローに変身した(後述)。これが、AppleとiPhoneが成し遂げたモバイル革命の第一幕だ。

もちろんこれまでにも、Motorola RAZRのように、ベストセラーのケータイというものはあった。しかしiPhoneと、Appleのそれに対する姿勢は、従来の単なるベストセラー機のメーカーとは全然違う。(1)Appleがソフトウェアを含めてデバイスを完全にコントロールしたため、RAZRなどにない強力なユーザ経験が作り出された。(2)App Storeという単一チャネルにユーザを閉じこめたため、ユーザはこれまでに購入したアプリケーションを無駄にしたくないから、ほかのメーカーの機種に移行する動機を失った。

iPhoneによってAppleは、合衆国のすべてのキャリアにとって垂涎の的となるようなデバイスを作り出した。そしてそれが、GoogleがAndroidを推進するための下地になった。1年あまり前にG1が発売されたときには、初めての“iPhoneキラー”として期待された。期待は期待に終わってしまったが、Googleは気にもかけなかった。モバイル業界への本格的な参入をねらっているGoogleにとって重要なのは、そのための足がかりとなるデバイスを市場に投入することだった。その目的は達せられた。キャリアたちはこぞって“iPhoneキラー”を求めるようになり、iPhoneという地震によって起きたインターネット対応スマートフォンという津波の波頭に乗るために、進んでGoogleとの交渉の席につくようになった。

その間(かん)、AppleとAT&Tとの蜜月関係は安泰のように見えたが、Googleはその牙を研ぎ澄まし、ソフトウェアを磨き上げていた。製造を担当するメーカー企業も研鑚にはげみ、その一つの成果がMotorolaのDroidとして昨年おそくに発売された。そしてそのデバイスもまた、当時の本誌記事にも書いたように”iPhoneキラー”ではなく、Google自身もそう考えてはいなかった(GoogleではなくVerizonの製品だったが)。Googleにとって重要なのは、市場をAndroid機で満たし、さまざまなパートナーシップを獲得することだった。そしてAndroid機の機種が20種類ぐらいになったあたりが、Googleにとっての好機となり、今日の発表へとつながる。今日Googleは、いよいよ自己製品でもって、合衆国の旧態依然たるモバイル業界を、吹き飛ばそうとしている。

と、まあ、おおげさな言い方をしたけど、でも今日Googleがやったことを振り返ってみよう。アンロックの電話機を発売し、それをGoogleから直接買えるようにした。その529ドルという値段は高いし、一方、合衆国での既存のサービスプロバイダはT-Mobileだけだ。しかし制約のように見える今の形は、あくまでも最初の第一歩にすぎない。重要なのは、下の画像のようなページだ。Googleが何をやろうとしているのか、お分かりかな? これまでこの国では、ユーザはまずキャリアを選び、それから機種を選んだ。Googleは、それを逆にしようとしている。なによりもまず、機種を選ぶ。それはiPhoneが、革命の第一歩として成し遂げたことだ。しかしGoogleはさらにそれを推し進めて、一つの機種を複数のキャリアに対応させようとしている(現状ではT-Mobileと、今春予定のVerizon(ヨーロッパではVodafone))。

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じゃあ、キャリアはこれから何をしたらいいのか? 彼らには、選択の余地はほとんどない。AT&T以外のキャリアはみんなiPhoneを欲しがっているが、今のところは持てないから、次善の製品、すなわちAndroid機に飛びつかざるをえない。Android機をコントロールしているのはもちろんGoogleだ…今後ますます。今ではハードウェアの仕様や機能まで、Googleがメーカーに指示しているのだから。

そして今日のイベントにGoogleが招いたのは誰だったか? メーカー2社…HTCとMotorola…のCEOだ。この2社はGoogle側だと言ってよい、なぜならAppleと組んで何かを作ることはありえないからだ(Motorolaはかつてトライして失敗した)。それに、そのほかのパートナー、たとえばMicrosoftなどは、iPhoneの世界では相当影が薄い。むしろ今は、メーカーと組むことによってGoogleはキャリアを自分の下位に置くことができる。だから今日もメーカーのCEOたちが、モバイル世界の新秩序を担う一員になっているのだ。今のところ合衆国ではT-MobileとVerizonだけだが、Googleはほかのキャリアとも交渉中だと言っている。たとえばSprintやAT&Tだが、とくに後者は、iPhoneの独占契約を失う運命の日に備えなければならない。

近い将来は、Webでケータイを買おうとしたら、すべてのキャリアのリストを示されてそこから選ぶ、という買い方になるだろう。CDMAやGSMがLTEに移行すれば、それはより簡単になるし、より一層普遍的なデバイスの誕生を誘う。Googleは今日、それに先鞭をつけたのだ。そしてiPhoneがマルチキャリア化すれば、Appleもその後を追う。しかも、その後をさらに、BlackberryやPalmですら追うだろうが、しかし彼らはキャリアに対してAppleやGoogleほどの力は持ち得ない。遠い将来は分からないが、近未来に先行者利得をがっぽり手にするのは、明らかにGoogleとAppleだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))