Nexus Oneの生みの親、Andy RubinにはSteve Jobs2世のにおいがする

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キャリアが支配するケータイに終わりを告げたのはAppleとGoogleの共闘チームだ

上の写真は昨日(米国時間1/5)のNexus Oneのプレス発表会の後、ジャーナリストに取り囲まれているAndy Rubinだ。Android社を創立し、2005年にGoogleに売却したのはこの男である。最近私はRubinにある熱狂的な製品づくりの天才に通じるにおいを感じるようになった―Steve Jobsだ。

ヒット製品を次から次へと産み出し、そのジャンルをまったく違うものに作りかえてしまうJobsの驚異的な能力は知らぬものがいない。この点については私は今年の感謝祭の感謝はスティーブ・ジョブズに捧げたいという長い記事を書いた。Jobsはとことん製品づくりに取り組む。最後のどんな細部も見逃さない。そしてその結果ははっきりと現れてきた。Jobsは携帯電話業界、音楽業界、映画業界、テレビ業界を作り変えた。Macとコンピュータ業界のことは言うまでもない。

しかしJobsはおそろしく神経質でいっしょに仕事のしにくい人間としても悪名高い。彼は完璧を要求する。他人と協調するということを知らない。またJobsはメディアに対して強烈な不信感を抱いている。AppleのPR部門というのは質問にいっさい答えないことで給料を貰っているようなものだ。

しかし私はこうした欠点をすべて許す。なぜならJobsは世界を変えてきたし、今も変えつつあるからだ。ライバルは単にAppleに置いていかれないようにするためだけでも製品の大幅な改良を要求される。世界は、少なくともITの世界はJobsのおかげで彼がいなかった場合よりずっと楽しい場所になった。AppleにはJobsほどの製品のビジョンとそれを現実化する力をもった人間はいない。Jobsは現代のテクノロジー界のアレクサンダー大王のような存在だ。それに加えてJobsはステージ上から聴衆に魔法をかけるオーラを持っている。

RubinはSteve Jobsではない。彼は製品づくりでJobsのような実績があるわけではない(そんな人間は世界に一人もいないが)。 Rubinの性格はシャイで、ステージの上から聴衆を虜にするような能力はない。昨日の Nexus One発表イベントでは「…そして最後にもう一つ」というようなクライマックスは一度も訪れなかった。もっとも、そんなドラマティックな盛り上げができるのは世界でSteve Jobs一人だろう。

しかしRubinが熱狂的な製品づくりの男である点ではJobsと同じだ。New York Timesが2005年にRubinのプロフィールについて良い記事を掲載した。記事はRubinを元Appleの技術者でWebTVとDangerの共同ファウンダーと紹介し、 共同ファウンダーの一人の言葉を引用していた「Rubin氏はエンジニアが起業家になるというトレンドのパイオニアの一人です。彼は完璧なデジタル・システムづくりに強い情熱を燃やしています

念のため断っておくが、Nexus Oneの開発の成功にはチームのトップメンバー、特にMario QueirozとErick Tseng(2人ともイベントでステージに上がった)の貢献が大きい。しかしNexus Oneを誕生させたビジョンはすべてRubinのものだとGoogleの人間からたびたび聞いている。GoogleはNexus Oneのリリースを2009年のクリスマス商戦に合わせる計画だった、。今からそんなことをすれば、その締切りに間に合いそうもないとはっきり分かっていてもRubinは妥協しなかった。「Rubinがどうしてももっと薄くしろと言い続けるので…」と疲れきった表情の開発メンバーの一人は小声で告白した。「 …薄くするほかなかったんだ

RubinがGoogleのAndroidグループ内で振るう権力は異常なほどだ。Googleの副社長クラスもRubinを怒らせないよう非常に気をつかっている。部下たちが私に話したところでは、Rubinの細部へのこだわりは徹底しているという。製品を完璧なものするために絶対に妥協しない。製品が市場に出るときにはすべてが完璧でなければならないと固く信じている。そのことはGoogleがソフトウェアからハードウェアまで隅から隅まですべてを作った最初の製品、Nexus Oneにはっきり刻印されている。

Rubinの性格にはJobsとの共通点が多々ある。製品に対する強烈なビジョンを持ち、開発にあたっては熱狂的な独裁者だ。Rubinも人当たりがよいとは言えず、プレスとの関係も悪い。昨日のNexusOneのイベントのQ&Aセッションのビデオを見れば、彼が苛立ちを辛うじて爆発させずに我慢しているのが分かる。記者が同じ質問を繰り返し浴びせたのに対して「そのことについては他に話すことはない」と彼がぶっきら棒に答えているところを見るとよい。Jobsはといえば、もちろんQ&Aセッションなどやらない。

しかし私はそんなことは気にしない。取材相手が好感のもてる人間であろうと、私のような悪名高い人間であろうと、私にとっては同じことだ。人付き合いがいいとか口がうまい、などということは偉大な製品開発者になるための要件ではない。強烈なビジョンを持ち、何があっても信念を曲げず、製品を市場に出す力だけが必要とされる。

Jobs同様、Rubinも失敗の経験がある。Rubinも自分が創立した会社、Dangerから追い出された。しかし彼はJobs同様、さらに大きな仕事を成功させた。JobsはAppleから追放された後、NeXTとPixarを作り、やがてAppleにカムバックを果たした。RubinはAndroidを作った。

Nexus OneはiPhoneと同じくらい革命的な製品だろうか? 答えはノーだ。Appleはこのタイプのスマートフォン市場をゼロから作り上げた。Nexus OneはJobsが始めたiPhone革命を受け継いでいるにすぎない。しかしNexus Oneが革命的なのは製品としてよりもむしろキャリヤとの関係という別の面であり、またサードパーティーに対するオープンさだ。そしてGoogle Voiceとの機能の統合も画期的だ。それにRubinと彼のチームがいままでにやってきたAndroid関係の仕事はまだほんの序の口であり、これから本格的に驚くべき製品が出てくるような予感がしている。

10年後、Rubinはどうなっているだろう? 巨大企業の重役の一人というだけの存在だろうか? それともそれ以上のなにかなっているだろうか? 正直、私はRubinが将来Appleのトップの座についてもいいのではないかと思っている。少なくともRubinの性格はそれにぴったりだ。

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(翻訳:滑川海彦/namekawa01