New York Timesのオンライン従量課金プラン―メーターの針は大きく振れそうにない

次の記事

久しく目にしていなかったFail Whaleが帰ってきたね(ハイチの大規模余震とも関係あり?)

New York Timesは来年、ウェブサイトに従量制課金システムを導入する意向を明らかにした。これはサイトを頻繁に訪問するユーザーに課金しようとするもので、現在Financial TimesがFT.comで行っているのと同種の方式になるものとみられる。FT.comでは月に10回以上サイトを閲覧するとそれから先の閲覧が有料となる。しかし、この従量課金方式でNew York Timesのデジタル収入のメーターの針が大きく振れるとは思われない。

まだビジネスモデルの詳細は明らかになっていないが、それでもおおまかな試算は可能だ。comScoreの統計によれば、NYTimes.comの訪問者は2009年12月時点で、同年9月の1540万人からややダウンした1240万人だった。New York Times傘下の他のサイト、About.com、Boston.com、その他ローカル紙などをすべて含めるとアメリカでの12月の訪問者は5280万人に増える。しかしNew York Timesは従量課金制の導入をNYTimes.comそのものに限って計画しているようだ。そうだとすると、対象はやはりアメリカで1240万、全世界合計で2000万の訪問者が対象となる。

アメリカの訪問者の平均訪問回数は月3.7回で、これは上昇傾向になる。議論を簡単にするために、仮にNYTがFTと同様のシステムを採用し、月に10回以上訪問する読者から課金することにしたとしよう。大いに太っ腹に見積もって、読者の20%が毎月10回以上サイトを訪問するとしよう。これはだいたいアメリカで300万人、全世界で400万人に相当する。ここから印刷版の定期購読者100万人を差し引く(定期購読者はオンライン版を無料で読める)。

さてこの残りの200万(世界で300万)の読者のうち、オンライン課金に応じるのはどのくらいの割合で、いくらぐらいを支払うだろうか?  2005年から2007年にかけてNYTはTimesSelectという部分的有料制を採用していた。TimesSelectの購読者は21万で、年額$50を支払った。つまり年間総額$10.5M(1050万ドル)に相当する。FT.comは頻繁な訪問者に月$25を課金している。しかしFTは経済専門誌で、Wall Street Journalと同様、読者は情報のために金を惜しまない層だ。しかしNYTは一般紙であり、読者層も多様だ。そこで料金は月$10ないし$15というのが限度だろう。

New York Timesが既存の購読者以外の頻繁な訪問者の10%に月$10を支払わせることに成功したとしよう。世界では月$3M(300万ドル)、(300,000 X $10)、四半期では $9M(900万ドル)になる。ところで2009年の第3四半期にNew York Timesは全ニュースサイトを合計して$39M(3900万ドル)のインターネット広告収入を計上している。これに900万ドルがプラスされるなら大したものだ。しかし注意しておかねばならなないのは、2009年のインターネット広告の売上は不況やら案内広告の引き続く不振やらで前年に比べて$8.8M(880万ドル)も減少していることだ。

つまり1人あたり$10の購読者を集めても、New York Timesには昨年のオンライン広告の減少分を補う程度の収入しか入ってこないことになる。もし月$15で30万人を集められればなるほどかなりの金額になる。またこの従量課金制度のせいで(オンライン購読が無料になる)印刷版の定期購読者を増やすことができればなおさら好都合だ(私は従量課金制の本当の意味は印刷版の読者拡大ではないかと考えている)。

しかし、この算術には大きな穴がある。そもそも300万人なりの頻繁な訪問者のうちのかなりの部分が、従量課金制が導入されれば、NYTimes.comに来るのを止めて、他のサイトでニュースを読むようになるのではないか? 全体として訪問者が減れば、オンライン広告収入も減る。有料化による収入増大と広告の減少による収入減をどうバランスさせていくのか、難しいかじ取りになりそうだ。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦/namekawa01