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シリコンバレーとサクラメント:起業家たちがカリフォルニアのITシステム再構築に力を借すべき理由

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多くの人たちが気付いていないが、実はカリフォルニア北部には巨大テクノロジー拠点が2つある。シリコンバレーとサクラメントだ。シリコンバレーは世界の起業家の中心地であり、サクラメントはカリフォルニアの州都である。2つの地域は互いに100マイルと離れていない。シリコンバレーの労働者たちが、次のテクノロジー革命を育んでいるのに対して、サクラメントの労働者たちは、テクノロジー中世紀時代に作られたコンピューターシステムの保守に明け暮れている。どちらも互いに依存している。サクラメントの労働者は州のインフラストラクチャーと公共サービスを維持し、シリコンバレーの労働者はサクラメントの給料を払うために収益を上げている。皮肉なことに、シリコンバレーの起業家たちが、解決すべき問題を必死に探している一方で、サクラメントには問題がふんだんにあり、救いの手は見当たらない。

この州が昨年11月に遭遇した問題を見てほしい。議会が支払い延長を承認する前に失業保険が切れた失業者に対して、州が小切手を発行できなかったのだ。その人たちは小切手を受け取るまで2ヵ月間待たなくてはならなかった。雇用開発局のコンピューターシステムの修正が間に合わなかったためだ。州のシステムの殆どがそうであるように、これらは70、80年代に、今や時代遅れとなったCOBOL、Adabas Natural、アセンブラ、PL/1などのコンピューター言語で作られたものだ。こうしたプログラムは、CICSやIMSなどのオペレーティングシステム下で動作している。

これは氷山の一角にすぎない。カリフォルニアには約130の局または省がある。それぞれが専門のIT要員と専用システムを抱えている。それぞれが独自に情報を収集し、独自のデータベースを維持している。各システムは通常相互に統合されていない。データを共有する際は、バッチモードでファイル転送するのが普通だ。これは州民や企業にとっては悪夢である。企業の住所変更という簡単な業務を例に挙げてみよう。企業主は、複数の機関、例えば、雇用開発局、平等化委員会州税務局州国務長官その他いくつもの許認可局に通知しなければならない。信じられないだろうが、州には、州民に関する同じ個人情報や人口統計情報を収集するために、40を超えるコンピューターアプリケーションが存在する。メールのような日常的なものでさえ、この州では100以上の個別のシステムが維持されている。

こうした旧式システムと困難を持っているのはカリフォルニアだけではない。恐らくこの州のシステムは他のどの州よりもましだろうし、コスト削減と基盤整備への投資も行っている。そして大企業の殆どが、10年単位の昔に作られたシステム上で操業している。政府に限らず産業界でも、時限爆弾の残り時間が刻まれている。

かつては、こうしたエンタープライズシステムと、シリコンバレー起業家の作ったPCやウェブのアプリケーションとの間に大きな違いがあった。エンタープライズシステムには、大規模なトランザクション処理能力が必要であり、厳格なセキュリティー要件があり、高い可用性が必要とされていた。しかし、それはTwitterやFacebookやZyngaの要件と変わりがない。

シリコンバレーの駆け出しのスタートアップでさえ、一部のエンタープライズシステムが子どもの遊びに見えるようなシステムを構築している。例えば、Real Time Matrixが、Twitterのグループを作るための機構を開発した。このシステムは、高度なリアルタイム分析に加え、Twitterやブログ、ライブフィードなど複数のソースを統合し、情報を「起きたその場で」処理する必要がある。Real Time Matrixが開発したウェブシステムは、1秒間に数万件のトランザクションを処理し、結果を多数のさまざまなクライアントに対して正確かつリアルタイムに発信している。

Cearadactylus atrox1月21日にカリフォルニアの幹部協会で行った講演で、私は州CIO(最高情報責任者)Teri Takai、CTO(最高技術責任者)のP.K. Agarwalと共に、聴衆の200名のITマネージャーとこれらの問題について議論した。ITマネージャーたちは、シリコンバレーの同胞らと同じテクノロジーを使いたくて仕方がないように見えた。TakaiとAgarwalは、彼らが各部門を統合、整備し、システムを新時代へと移行するために、いかに必死で取り組んでいるか説いた。また彼らは、ITプロジェクトに出資するための購買手続きの合理化にも取り込んでいる。つい最近まで、1つのプロジェクトの承認を得るまでには平均3年かかっていた。今日では、1年でできている(これはシリコンバレーでは一生だが、政府の世界では速いとされる)。こうした取り組みによって、州は$400M(4億ドル)の経費を節減したと彼らは主張する。にもかかわらず、TakaiとAgarwalには大きな課題が残されている。どうやって恐竜に空を飛ばせるか、である。恐らく必要なのは、その恐竜たちを絶滅させ、身軽な鳥類や哺乳類で置き換えることだ。

私が州に最優先でやるべきだと提案するのは、システム基盤の再構築にシリコンバレーの起業家たちを起用することだ。彼らなら、旧型システムを継ぎはぎする何分の1かの費用で、新システムを作ることができる。失業者向けの小切手を処理するシステムを考えてみよう。州はこのシステムの改修に$50M(5000万ドル) の予算を組んだ。古いやり方では、最後に出来あがるのは、保守しやすくなったCOBOLシステムにすぎない。州は、通常こうした契約に入札して落札する大きな規政府請負業者ではなく、シリコンバレーの起業家に接触を図ってシステムを再構築させるべきだ。彼らに詳細な仕様を渡し、この事業で競争させるのである(このためには、入札プロセスをさらに簡素化する必要がある。VCでさえ、決断に1年もかからない)。私は、シリコンバレー起業家たちがこのシステムを一から作 っても$5M(500万ドル)以下で済むことに賭ける。そう、1/10のコストだ。こうした古いモンスターを維持するのと比べて、遥かに少ないコストと時間で、ウェブ上に高度なシステムを構築することができる。新システムの方がずっと簡単に使え、保守にかかる費用も比較すれば無いようなものだ。しかも、政治的繋がりの強い州の請負業者を潤す代わりに、地域経済をあと押しするのである。

中には、特に複雑に他と絡み合っているために、容易に修正や置き換えのできないシステムもあることはわかっている。しかし、大部分がそうではない。殆どのシステムはレポートと分析を行うだけであり、年ではなく月単位で開発が可能だ。何故私にわかるかと言えば、私の最初の仕事がCOBOL/CICSのトランザクション処理システムを書くことだったからだ。その後私は、大企業システムの開発プロセスを自動化するソフトウェアを開発し、それを販売する会社を共同設立した。2番目に作ったスタートアップでは、旧型システムの現代化プロセスを自動化するテクノロジーを作った。私はテクノロジーの世界が進化、発展する様を見てきており、自分が提案しているのがロケット科学ではないことを知っている。

必要なのは、これらの問題をシリコンバレーの起業家たちに自由にやらせ、彼らにマジックを使わせることだ。カリフォルニアにとって純益は膨大だ。現代の世界はウェブベースのテクノロジーで動いている。サクラメントには、ひとっ走りの距離に世界最高水準の技術者たちがいるという利点がある。彼らは手助けしたくてウズウズしている(そして彼らはお金を使える)。

【編集部より:本稿は、起業家出身の学者、Vivek Wadhwaによる寄稿である。同氏は現在UCバークレー客員教授、ハーバード法科大学院上級研究員、およびデューク大学常任理事を務めている。Twitterアカウントは@vwadhwa。】

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(翻訳:Nob Takahashi)