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ビデオサイトへの投資でVCたちは何を間違えたのか?–彼らは真の投資対象を知らなかった

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編集者注記: このゲスト記事を書いたAshkan Karbasfrooshanは、WatchMojoのファウンダでCEOだ。彼は本誌に、オンラインビデオの現状と動向に関する記事を連載している(第一部: ビデオサイトはコンテンツで稼げ、第二部: オンラインビデオで広告が伸びない理由、第三部: ユーザはコンテキストからビデオを見つける、第四部: ビデオで稼ぐためには自サイトだけにこだわるな)。

昨日(米国時間2/11)、長年悪あがきをしたビデオサイトVeohが、7000万ドルのベンチャー資金を使い尽くしたあげくに倒産した。これまでVeohには、大量のいわゆるスマートマネーが注ぎ込まれた: 投資家たちの中は、Goldman Sachs、Time Warner、Intelのベンチャー部門、Spark Capital、Disneyの元CEO Michael Eisnerなど一流どころも多い。このほか、たとえばJoostも、Skypeのファウンダたちによる野心的なビデオサイトだったが、4500万ドルのベンチャー資金を使い果たして売り飛ばされた。次は、どこだろうか?

そもそも、今日このごろは、Web上のビデオ視聴がうなぎ登りなのに、なぜ、ビデオサイトに投じられる資金の多くが、このようなかっこ悪い死産を経験してしまうのか?

今は、VCたちをけなすことが流行(はや)っている。経営能力のない連中が金融工学のハッカーを気取っているが、しょせんは指導力のない浮き草にすぎないと。しかし、VCたち自身は問題でもなく、そのソリューションでもない。良いVCはマネー以上のものを提供し、だめなVCは企業を殺す、それだけのことだ。そして企業が殺されたら、誰もが自分を責めずにスケープゴートを探すのだ。

陸(おか)に上がった魚

去年、BrightrollのCEO Tod Sacerdotiと資金調達について雑談していたとき、彼は、“ビデオの分野はテクノロジというよりむしろメディアだな”と言った。それをフォローして私は、“だからビデオに投資するVCたちは、陸(おか)に上がった魚みたいになるのさ”と応じた。

まさしくVCたちの多くが、広告ビジネスについては何も知らないし、出版についても、営業についても、メディアの経営についても、まったく未経験だ。ソフトウェアの売り方は、ここでは通用しない。チップの作り方も、ここでは関係ない。

それどころか、テクノロジ企業を成功に導く要素の多くが、メディア企業にとっては欠点となり、ときには致命傷となる。たとえば、テク企業におけるライセンスの更新料…無料のことが多い…に比べると、広告の更新契約は売上の額がずっと大きい。このことだけで、別の記事を書けるほどだが、なにしろ、今VCがビデオに対して魅力を感じているもの…ビデオアグリゲータ、コンテンツデリバリネットワーク、コンテンツ管理システム(CMS)など…は、今や安売りの日用雑貨みたいなものであり、資本集約的で利益率が低い。しかもキャンセルされたり競合他社に移行されたりするリスクが、つねにつきまとっている。

しかもこの“狂気の後ろ向き投資”を支える理論は、10社に投資しろ、うち7社は燃え尽きるだろうが、2社はヒットする、最後の1社はグランドスラムだ、と主張する。金融の一般理論としてなら、こういう分散投資はいいかもしれない。しかしVCのホームランねらいは禁物だ。単打でも四球でもいい、こつこつ稼ぐことが重要だ。たまにあるかないか分からないグランドスラムをあてにする経営理論を、VCは忘れるべきだ。オンラインビデオに対するVCのこれまでの投資が、死屍累々で腐臭を放っているのは、その姿勢の不健全さのせいである。オンラインビデオのサイトの業態を分類すると、次のようになるだろう:

  1. CMSのプラットホームを提供するテクノロジ企業
  2. 広告の制作と管理
  3. コンテンツアグリゲーションとコンテンツ配布
  4. ビデオファイルのホスティングと共有
  5. ビデオコンテンツの編集
  6. コンテンツの製作
  7. コンテンツデリバリネットワーク(CDN)

YouTube〔上の4に該当〕のほかに、グランドスラムはどこにあるのか? どこにもありはしない。

あるようでないようなメディアVC

テクVCは前から存在するが、メディアVCは厳密に言うと存在しない。ひとつの理由は、大手メディアの役員たちは株を持たない、株で儲けたことがない、サラリーマンであることが多く、投資という水にほとんどなじんでいないからだ。テク系VCのようにその業界で稼いだ者がVCのファンドを興すという慣行が、メディア世界にはない。もちろん、例外もある。

しかしメディア世界で儲けた例外的人物は、その金を自分の新しい企業に投じてしまうことがほとんどで、それと競合するであろうスタートアップに投資することは少ない。メディア世界の大物たち、Rupert Murdoch、William Randolph Hearst、Sumner Redstone、SI Newhouseなどは、自分の稼ぎを自分の帝国につぎ込むことしかしない。そして大きな既成勢力となった彼らが、現在の体制を壊すようなものに投資するはずがない。

私の会社を買った会社を買ったこともあるMurdoch氏は、Googleとの取引からの棚ぼたのような、安易な形でMySpaceを買ったが、今その将来は危うい。彼はメディアスタートアップから手を引きつつある: 最初はPhotobucket、次がRotten Tomatoesだ。

今のVCのほとんどがテク企業のファウンダや役員だった人たちであり、彼らは会社を売ってキャッシュを手に入れた。その金で彼らは、VCを立ち上げたり既存のVCのパートナーになったりした。だから、既成勢力を破壊するようなスタートアップにも投資ができるのだ。

Webはコンテンツの大量消費の時代へ

メディアとテクノロジのあいだには、強力なウェッジがあるようだ。お互いに相手を理解しないので、その結果、金をドブに捨てるような投資が平気で行われる。

“レコード会社に技術系の人間はいない”、Universal Musicの会長Doug Morrisがかつてそう説明した。”レコード会社が技術の分かる人間を必要としている、という説はウソだ。必要としたことはない。技術者を何に使うのか、それすら知らない。彼らに技術分野を開拓せよと言うのは、あんたに犬の腎臓の切除手術をしろと頼むのと同じだ。あんたに、できるかね?”

逆に今のVCは、メディアでは広告の金がどこへ行くのかすら全然知らないくせに、ビデオのGoogleに投資しようと躍起になっている。ここでついでに言っておくと、そもそもGoogleも、最初は検索技術のライセンスをビジネスモデルにするつもりだった。当時はそれで、数億ドル程度の収入があった。しかし今では、Googleは何よりもまず、広告に支えられている企業だ。ただし、テクノロジの世界で、広告に支えられる企業として成功したのは、Google一社のみである。

Googleの場合は100年に1度の大嵐のような強運に恵まれたが、今では“広告に支えられて無料”という基本線がむしろ足かせになっている(Appleは、人間がいちばん大好きなのは金を使うことだ、ということをよく知っている…これも別記事のテーマだが)。

今後インターネットが伸びるのはモバイルかPCか、それはよく分からないが、いちばん重要なのは、そんなことはどうでもいいということだ。重要なのは、コンテンツの内容と質、そしてコンテンツの収益化の方法だ。おそらくそれは民放無料誌モデル、すなわち広告が基本だ*。今、姿勢がふらふらしているメディア企業は広告に背を向けようとしているが、しかし消費者は今後も永遠に、コンテンツに金を払うなんて絶対ノーよ、と言い続けるだろう。〔*: 一般的には民放無料誌モデルは、広告、有料イベント、物品販売(仮想グッズを含む)の三本柱が収益源。〕

VCたちはこれからもがらくたに投資し続けるだろうが、投資すべき本当の対象はコンテンツだ。広告がオンラインビデオの収益源として安定確立するためにも、そのいちばん重要な鍵はコンテンツである。

コンテンツが王様だ

“乗り越えるべき最大の課題は、コンテンツとそれを量産するためのモデルだ。ケーブルテレビも、最初はそれで悩んだ”、Broadband EnterprisesのMatt Wasserlaufはそう言っている

オンラインビデオという業界はまだ若いが、しかし歴史は繰り返すだろう。初期の映画産業は、ただ単に演劇をカメラで記録しただけだった。初期のテレビは、カメラ付きのラジオのようなものだった。オンラインビデオのコンテンツにも、これから切り開くべきそれ独自の表現の道がある*。しかし今の時点で欠けているのは、“投資は強力なコンテンツを作るための投資だ”というはっきりとした認識だ。VCたちは毎日のように陳腐な決まり文句を繰り返しているが、かんじんのことを理解していない。Veohのようにアグリゲータとして急速に伸びたところもあるが、しかし守備が弱かった。…今やこんなひどい状況になっているというのに、VCたちは相変わらず同じ間違いを何度も何度も繰り返している。技術に投資し、コンテンツに投資しないという間違いを。

〔*: 余計な訳注: オンラインビデオ独自の表現の開拓となると、Webの特性やインターネットの特性がコンテンツの素材として使われるわけで…YouTubeなどのビデオにあるリンクはその素朴な例…、Web〜ネット技術者がビデオ技術をよく知ると同時に、ユーザ志向でものすごくクリエイティブでなければならない。コンテンツに投資し、その金の1/3~1/2は独創的表現技術〜ユーザ技術の開発へと向かう、これが今後の路線か。願わくば、そんな個々の技術で特許なんか取らないでほしい!〕

写真クレジット: Flickr/Umberto Salvagnin

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))