テレコム大手揃い踏みのACSプラットフォームを検証する―「夢の共通開発環境」という触れ込みだが?

次の記事

[CG]Macworld 2010:Kevin Smithの講演はとてもおもしろいが職場で見るのはヤバイ

今朝(米国時間2/15)、世界のテレコム大手24社が共同でWholesale Applications Community(WAC)と名づけられた共通開発環境を提供する計画を発表した。これはデベロッパーが「一度プログラムを書くだけで、参加するすべてのキャリヤ、デバイス、OSで作動する」オープン・プラットフォームとなるということだ。参加者の顔ぶれは立派なものだ。AT&T、China Mobile、Orange、Verizon、Sprintを始めとする世界の主要キャリヤとLG、Samsung、Sony Ericssonなどのトップ・ハードウェアメーカーが名前を連ねている。狙いはもちろんスマートフォンのアプリケーション市場におけるAppleのApp Storeの支配に楔を打ち込むことだ。モバイル・アプリのデベロッパーにとっては夢のような話に聞こえる。.

しかし話がうますぎないだろうか? 事実、この話は少々うますぎると思う。Googleのエンジニアリング担当副社長(Androidの責任者)、Andy Rubinはいち早く次のように懐疑的な意見を述べている。「プログラムを一度書けばあらゆる場所で作動するような環境という夢はこれまでたびたび語られてきた。しかしこの夢は今まで実現されたことはないし、たぶん将来も決して実現されないと思う。」 つまりキャリヤがモバイル・アプリの分野でAppleの牙城を揺るがそうという試みは白日夢に終わるだろうということだ。

第一に、プラットフォーム内での細分化問題が生じることは明白だ。Android自身がすでにこの問題に直面しており、OSがアップデートされてもキャリヤやハードウェアメーカーのそれに対するサポートの時期はさまざまで、デベロッパーはデバイス毎にカスタマイズを加える必要に迫られている。しかもこれは同一OSを採用しているデバイスでの話だ。WACは、細分化された市場を統一するという目的を掲げているものの、その実現はAndroidの場合よりもはるかに困難だろう。

たとえば、WACプラットフォームがアップデートされても、デベロッパーはOSがアップデートされ、かつキャリヤがデバイスのOSをリモートアップデートするのを待たねばならない(アップデートがユーザーの手動に任されるのであれば、大部分のユーザーはアップデートしないだろう。これによって市場はますます細分化する)。もしユーザーの負担にならない形でOSがアップデートされたとしても、やはりデベロッパーは数十、数百の個々のデバイスの特性に配慮しなければならない。画面解像度の違い、入力方法の違い(キーボード、トラックボールの有無など)、CPUパワーの違い、バックグラウンドでアプリを走らせることはできるのか? GPSは内蔵されているのか? 等々だ。

次にアプリ自体の問題がある。現時点ではWACプラットフォームの詳細がまだはっきり決まっていないので、はっきりとは言えないが、Adobe Airなどを使った際の私の経験からいうと、こうした統合プラットフォームは多くのデバイスでの互換性を維持するために性能が犠牲にされる傾向がある。AppStoreの主力製品は高機能なゲームだが、そうしたアプリはこうしたプラットフォームでは性能を発揮しにくいだろう。

であれば、比較的シンプルでベーシックなアプリが対象ということになる。ところがそうしたアプリについてはすべてのスマートフォンで共通に作動するプラットフォームがすでに存在する。ウェブだ。しかも今後HTML5が普及すれば、ウェブ・アプリは日一日とネーティブ・アプリと見分けがつかなくなっていく。WACプラットフォームが現実化するには何年もかかるはずだ。その頃にはウェブ・テクノロジーやそれをサポートするデバイスも長足の進歩を遂げているだろう。

これらに加えてもう一つ問題がある。AppleはApp Storeに登録されているアプリの数を自慢するのが好きだが、(これまで何度も指摘されているとおり)実はアプリの数など無意味なのだ。さまざまな分野で本当に人気のあるアプリが100ある方が、そこそこのアプリが何十万本あるよりもずっとよい。キャリヤやメーカーは単にアプリケーションの本数を増やそうとするのを止め、その代わりに、人気のあるアプリを開発したデベロッパーにインセンティブを与えるよう試みるべきだ。そしてユーザーが簡単にそのような高品質のアプリを発見してダウンロード購入できるよう環境を整えるべきである。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦/namekawa01