起業家を育てることはできるか?

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シリコンバレーの投資家たちは、出資すべきタイプの人間の概念を常に頭の中に描いている。若くて生意気で頑固で傲慢。そんな成功する起業家は、起業家精神に溢れる家庭に育ち、小学生でレモネードを売ることろから起業家の旅に出発したと彼らは信じている。エンジェル投資家で起業家でもあるJason Calacanisも、最近ペンシルバニア州立大の学生相手に行った講演でそんな話をしていた。そしてベンチャーキャピタリストのFred Wilsonは、ペンシルベニア大学Wharton校の学生と会った後、一人の教授から〈起業家は育てられるものだ〉と聞かされてショックを受けた。Wilsonがこう書いている、「私は起業家とつきあって25年近くなるが、人は生まれつき起業家であるか否かであるという考えが染みついていた。」

Jason、Fred、そしてシリコンバレーのVCたちに良い報せがある。みんな間違っている。起業家は生まれついてなるものではない、作られるものだ。彼らは決してあなたがたの考えているような人たちではない。私のチームが、成功した起業家549人を対象に調査を行った。その結果、大多数が起業家精神ある両親から生まれてはいなかった。学生時代には起業願望すらなかった。ただ人のために働くことに飽き、商品化したいすばらしいアイディアがあったか、ある日目が覚めて、引退する前に富を築きたいという衝動に駆られただけだ。つまりみんな大きな飛躍を遂げているのである。

調査の結果、成功した起業家の52%が、直接の家系で事業を始めたのは自分が最初だったことがわかった――ビル・ゲーツやジェフ・ボゾス、ラリー・ページ、サーゲイ・プリンそしてラッセル・シモンズ(Def Jamのファウンダー)らも同じだ。両親は学者、弁護士、工員、牧師、官僚等々。約39%が起業家精神のある父を、7%が起業家精神のある母を持っている(両方の場合もある)。

大学時代に起業家精神を宿した人は1/4にすぎなかった。半数が学生時代には起業しようなど考えたこともなく、ほとんど興味もない。

成功要因や遭遇した障壁に関して、学生時代特に起業関心のあった(そしてレモネードの店を出したであろう)グループと、関心のなかったグループとの間に有意な差はなかった。ただし、きわめて関心の高かった起業家の方が起こした会社の数が多く、かつそれを早く実現している。大学時代に起業家になることに対して「きわめて関心が高かった」と答えた24.5%の回答者のうち、47.1%が2社以上の会社を設立している(回答者全体では32.9%)。69%がどこかに勤めてから10年以内に自分の会社を始めている(それ以外の回答者では46.8%)。

何が成功に影響を及ぼしているのか。教育である――ただし卒業した大学による違いはない。われわれはテク系企業502社のCEOおよびCTO、652名を対象とした別の調査研究の中で、設立した企業の売上および人員数と受けた教育との相関を調べた。その結果、高卒のファウンダーの会社とそれ以外との間には、有意な違いがみられた。教育が大きな優位性をもたらしている。しかし、アイビーリーグ校の卒業生と他の大学の卒業生との間に、大きな差は認められなかった。

起業家の教育と養成に関しては、Kauffman Foundationが大規模な研究を行っている。過去6年間、同団体は起業家を動かすものが何か、どのような政策が起業を手助けするかを理解し、これらのテーマを分析するためのデータベースを構築するための学術研究に$50M(5000万ドル)を投入してきた。(Kauffmanは、デューク大学、カリフォルニア大学バークレー校およびハーバード大学での私の研究にも出資している)。Kauffmanの調査担当VP Bob Litanは、起業家は育てられる、という明白な結論を得たと言っている。鍵は、「教えるべき瞬間」――すなわち起業家がベンチャー企業を起こそう、あるいは拡大しようと考えた時――に教育を施すことだという。起業家に必要なのは、ビジネススクールで教えられているような抽象的なコースではなく、実践的で関連性の高い知識だ。それがKauffmanがFast Tracというプログラムを設立した理由であり、そこでは30万人の起業家を養成してきた。

Kauffmanの調査の結論の一つは、毎年設立される約60万社の企業のうち、高成長の「規模型」企業は1%の何分の1にも満たないことである。新しい企業、中でもこうした「規模型」企業は、1980年以来の米国経済における雇用の純増のすべて(約4000万人)をもたらし、おそらくそれ以来のGDP成長の約1/3に貢献している。すなわち経済成長を加速するための鍵は、成功した高成長スタートアップ企業の数を増やすことなのである。この国の経済成長とは、この国の企業の成長を集約したものに他ならないのである。

これこそKauffman($2B[20億ドル]が寄付基金を持つ)野心的新プロジェクトであるKauffman Labsに大きく投資している理由である。ここでは小さな企業が大企業へと成長するための能力を劇的に向上させることを目的としている。プロジェクトの中核をなす発想はこうだ。「スケーラブルなアイディア」を持ち強く動機付けられた人物を、起業家とするべく採用し、他の経験豊富な起業家、資金源そして助言者たちのネットワークで包み込んで成功へと導く。ゴールは、起業家を教育し、強力なネットワークで包み込むことだ。これは強化版Y Combinatorのようなものだ。

遺伝子以上に影響を与えている要因が他にもたくさんあることが、経験的に確かめられている。このBusinessWeekの記事は、Googleでのスピンオフの波に関するものだ。ここに出てくる起業に成功したGoogle社員全員が、起業家精神を持って生まれついたとは考えらねない。VCで元起業家であるBrad Feldも、彼のMIT時代の僚友たちのうち何人が起業家として成功したかについてブログに書いている。この人たちも生まれつきの起業家だったのだろうか。そうではないと思う。教育、起業家精神との出会い、そしてネットワークが彼らに起業への道を追求させたのである。これはつまりKauffman FoundationのKauffman Labsが正鵠を射ていることを意味しているともいえるだろう。

この件が重要である理由は、Wilsonも書いているように「ベンチャーキャピタルとは主としてパターン認識である」ことだ。彼のようなVCは、脳内にある固定観念に基づいて人物をすばやく判定しているのが現実だ。このため、私が以前記事に書いた女性たちの場合と同じく、われわれの人口の重要な一区分に不利を強いている可能性がある。すべての注目(と金)を集めている人たちよりも、年長で控え目で繊細で現実的な人たちを。

編集部より:ゲストライターのVivek Wadhwaは起業家出身の学者である。現在UCバークレー客員教授、ハーバード法科大学院上級研究員、およびデューク大学起業・研究商用化センター研究担当ディレクターを務める。Twitterでは@vwadhwaでフォローできる。】

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(翻訳:Nob Takahashi)