Peer News

ネットは新聞をこう変える–eBay創業者の新プロジェクトPeer Newsに見る革命的な方向性

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せっかくのハワイというのに今日((米国時間3/18)は一日中、NewsMorphosisカンファレンスの会場に缶詰めになって、ニュースのクオリティや、有料購読を今後も維持するためのビジネスモデルは如何に?、といった議論につきあわされた。それは、ハワイではとくに大問題なのだ…今年の初めにはハワイの5大テレビ局が合併したし、ホノルルのStar-Bulletinは同じくホノルルの日刊紙Honolulu Advertiserと合併して大量のレイオフを行い、ホノルル市民を不安がらせている。

だからカンファレンスの最後がJohn Templeの講演だったのは、とても適切だ。TempleはeBayのファウンダPierre Omidyarの新プロジェクトPeer Newsの編集長だ。そしてこのPeer Newsは、ローカルニュースの未来を占う前衛的な実験とも言えるのだ。ともかく、今日はTempleの話を聞けたおかげで、Peer Newsについていろいろ詳しいことが分かってきた。

Templeは、まずはっきりとこう言う: “メディア企業が元気を取り戻すための特効薬はない”。しかし同時に、今日蔓延している不安と落ち着きのなさの中にこそ、とても大きな希望がある、と。…それが、最近廃刊になったばかりの、Rocky Mountain Newsにいた人間の言葉だからおもしろい。日刊紙の多くが、遅かれ早かれ同紙と同じ運命になることを、日々恐れているのだ。〔Rocky Mountain Newsの最後の日々が、3月21日のNHK BS1の番組<BS特集「第1部 岐路に立つテレビ・新聞」>で紹介された。〕

“これまでのようなローカル紙をまた作って、それをWebから提供するつもりはない”と彼は言う。まさに、Peer Newsの事業説明の中には、”ニュース”、”メディア”、”新聞”といった言葉がまったく登場しない。ただ、”新しい市民広場(civic square)を作り出す”という言葉があるのみだ。Peer Newsの開発の中核には、次の3つの問いがある:

– 民主社会におけるフリープレスの役割は何か?

– その役割を、今日利用できる技術やツールを使ってローカルのレベルで果たすにはどうすべきか?

– それを持続可能な形で行っていくにはどうすべきか?

コンテンツに関して、Templeの話でいちばんおもしろいのは、いわゆる“記事”というものに対する否定だ。彼は、ジャーナリストがこれまで書いてきたニュースの、静的で孤立・断片的(episodic)な性質を批判する。それだと読者は、ニュースを動的かつ全体的に知るためにはバックナンバーを調べなければならない。それに対してPeer Newsの基本単位はニュースや記事ではなく、Wikipediaのように絶えず更新される「ページ」だ。Templeの言い方ではそれは、”話題・主題(topic)をめぐって変動し展開される生きた歴史のようなもの”だ。記事はもはや記事ではなく生き物だから、欠けている・抜けている・見つからない記事というものはない。それは、ローカルニュースは一つの問題を派手に扱ったかとおもうと、すぐ次の話題へ移ってしまう、という、従来からの批判にも応える。”その日の大ニュースというものに軸足を置かない”とTempleは言う。上の問いに沿って言うと、Templeによればフリープレスの役割は、市民が知的な判断や意思決定ができるために、市民に情報を知らせることだ。”難しく考えることをやめようではないか”、と彼は言った。

Peer Newsのもう一つの独特なやり方は、ブログの人気を支えているもの、すなわちコミュニティ感覚の重視だ。それは、従来の新聞のやり方や考え方とはまったく違う。まず、Peer Newsには従来的な意味での“記者”がいない。代わりにいるのは、市民広場の世話役としてさまざまな質問に答える“ホスト”たちだ。”今の時代に、プレスリリースのリライトを記事として載せている新聞があるなんて、恥ずかしい”とTempleは言う。”記者たちは速記メモをとらなくなっている。それはジャーナリズムの衰退だと私は思う”。

しかし、コミュニティ指向と言いながら、とても意外なことが一つある: Peer Newsにはコメントがない。”コメントは、人種差別主義や、憎しみや、醜悪さを助長しがちであり、ニュースサイトにとってむしろマイナスだ”とTempleは言った。なぜか? それは、人びとはコメントを述べるときに自分の顔を見せないですむから、責任感というものがない…そう彼は主張する。”コメントに関しては、その匿名性が非常に大きな問題だ”と彼は言った。

Templeはまた、取材も報道も手加減をしない、と強調する。”見たとおりのことを伝えるべきだ。つねに断固とした明確な姿勢であることにこそ、価値がある”。

では、それはどんなビジネスモデルになるのか? Templeも言うように、ビジネスモデルに関しては、そんなによりどりみどりの選択肢があるわけではない。従来のメディアサイトのような一律の有料コンテンツがあるのではなく、”お金を払ってでも自分専用の場所を持ちたい”というユーザのための有料メンバーサイトが設けられる。”広告はあくまでも副次的なものになるだろう”、と彼は付け加えた。

Peer Newsの立ち上げ予定は第二四半期(2010/4-6月)だ。だからもうすぐ、実物を見ることができる。しかし今からすでに明らかなのは、この自称“ニュースサービス”は、やり方がオールドメディアとは全然違うばかりか、そこらに氾濫している“ニュー”メディアともまったく似ていない。

それに、今回得られた詳細情報から感じられるのは、Omidyar本人のなみなみならぬやる気だ。eBayも結局のところは、Webの上でコミュニティの力を強力に活用するサイトだった。そしてそこから、今日私たちが利用している信頼と評判をベースとするシステムが、その先駆的システムが、築かれていったのだ。

(詳細はTempleのブログを。)

〔この記事以降の関連記事(3/23現在未訳)。〕
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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))