[jp] レポート:Startup Meeting vol.3 ネットと家電のこれから

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3回目となるStartup Meetingのテーマは「ネットと家電」だ。なぜか今回も雨。足下が悪い中、会場に集まったみなさんとこの興味深いテーマについて意見交換できたことは大変よい経験となった。

キーノート1:ネット家電はソーシャル家電へ ーCerevo 岩佐氏

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「みなさんそろそろネット家電というキーワードに飽きてきているのではないか」スピーカーの一番手はCerevo CEOの岩佐氏だ。彼は冒頭、ネット家電に代わる新しいキーワードとして”ソーシャル家電”を提唱してくれた。

「今のネット家電は現状だけで一冊本が書けるほど。インターネット接続機能を持った家電製品は各メーカが沢山出していてテレビ、DVR、デジカメ、カーナビなど一通り出た。コスト面やビジネスモデル面は各社苦労はしながら、一応、船は出た感じになっている。」と現状のネット家電について解説。「一方、ゲーム周辺は熱い。据え置き機の世界ではネットがなければ成立しない状況になっている。なので、このあたりのユーザーはすんなり受け入れている。」両者の比較をしつつ、いわゆる”オールドネット家電”の普及は時間が解決するのではと述べた。

「本当はそこを動かすのがイノベーション。ニッチな領域で今はパイが小さいけれど、そこを作っていくのはCerevoを含めたスタートアップが攻める領域なのかなと。」大手メーカーが手を出しづらい市場規模だからこそ、スタートアップに課せられる役割がある。同時に大規模アライアンスや資金面、ライセンスの厳しいコンテンツまわりなどについては大手メーカーとの連携が必要とも。

では、彼の考えるイノベーションはどこにあるのだろうか。「現在大手のメーカーが中心になって作っているネット家電はメーカーがユーザーに何らかの価値を提供する、という一対一の構造になっている。」例えばテレビのLAN端子を使ってマイケル・ジャクソンやガンダムなど、カテゴリごとにメーカー側が持っているコンテンツをユーザーに配信提供するというスタイルだ。

ソーシャル家電はこの構造を変化させる。「コンセプトは二つ。一つはユーザーの操作によって他のユーザーに価値を提供するスタイル。」これは例えばDVRの再生情報やタイトルリネーム(長いタイトルを省略したりすること)をカテゴリ的に近い人と共有することで、家電の利用シーンを便利にしようという提案だ。

「二つ目はそのユーザー間のつながりを既に構築されているソーシャルネットワークを使って形成すること。例えばTwitterのフォロワーがよく見ている番組を教えてくれるDVRとか、今日あなたのタイムライン上で話題になったYoutubeビデオはこれとこれ、という形で再生リストを作ってくれるTVなど。」この二つを兼ね備えたものをソーシャル家電としてみたいと同氏。新しいキーワードに自分自身、わくわくしていると締めくくってくれた。

2:次の7年へ。DIMORAはAPIを通じて様々なサイトと連携する。 ーパナソニック株式会社 郷原氏

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次のスピーカーはスタートアップではなく、ネットワークを活用した家電に携わる大手メーカーからの視点だ。まずはDIGA(ディーガ)のネット対応について語ってくれたパナソニック株式会社の郷原氏。家電ネット接続のサービスDIMORA(ディモーラ)について「DIMORAはPCやケータイから家のDIGAを直接操作出来る機能。実際は家の中でもDIMORAを使っているお客さんが多いようだ。DIGAのリモコンで操作するよりもDIMORAで操作する方が便利な面があるようだ。」

そもそも家電に複雑な操作はNG。しかしパソコンならばということで取り組んだ機能がキーワード検索の強化。「検索条件がかけるように改良した。放送波、検索条件、ジャンル条件、再放送有無、番組時間などことこまかく対応した」使えるユーザーは限られているとしながらも、家電コントロールをネットという切り口からとらえた場合の可能性を示している。

同時にiPhoneをDIGAのリモコンにするという考えも。「パナソニック側から仕様開示してiPhoneアプリを開発していただいた。主な機能は再生と予約になる。DIGAは3,000番組撮れるのだが、なかなかDIGAのユーザーインターフェースから探すことができなかった。それを解消するためのものだ。」2010年2月以降の機種が対象となるそう。

ここまでに7年。次の7年にどうしたいか。個人的な意見としつつ「これからはいろんなサービスがDIGAをコントロールし、DIMORAも様々なサービスと連携するようになるべきだ。そこでDIGAのAPIを一部公開した。公開といっても一般個人はまだ無理だが、DIMORAも色々なサイトと連携したいと考えているので、先にいわれたようなソーシャル家電もこのAPIを使えば可能かもしれない。」彼らにとって初めての試みではあるが、大手メーカーのメジャーブランドがAPIを公開する意味は大きい。

キーノート3:FeliCaは次世代のパッケージメディアへ。ーソニー株式会社 相馬氏

3人目のスピーカーをつとめてくれたのはソニー株式会社の相馬氏。家電向けネットサービスや音楽SNS PLAYLOGmoraなどを手がけた後、現在はFeliCaを担当している。

「なぜ家電に閉塞感があるのか。単品売りから体験売りに変わっているいるということはよくいわれていること。体験の中身も音楽、映像、ゲームなど様々。プレーヤーの立ち居値も様々。ユーザーに一番価値ある体験を提供したものが勝つ。それが今たまたまグーグルだったりアップルだったりするがもちろんこれで終わりじゃないと思っている。」と家電メーカーを取り巻く環境を解説。

同氏が取り組むFeliCaについては「カードの枚数は4億枚を超えたぐらいでリージョンは国内とアジア。FeliCaポートの設置場所は920万台に広がっている。」サービスは交通系を中心に流通系電子マネー、その他にIDカードなどに使われているそうだ。

「FeliCaの特徴としてかざす場所は結構ある。最近はfoursquareなどロケーションを使ったものがあるが、そのトリガーにかざす場をつかったり、カードの中に残る生活的なログは色々つかえるのではないか。」など、FeliCaとライフログと紐づけたアイデアに言及した。

セッションの最後はこちらもあくまで私見としながら「FeliCaを次世代のパッケージメディアに持っていけるのではないかと考えている。例えば音楽のシーンではただ単に音楽の権利を書き込んだりするだけでなく、ファンクラブのカードになったりライブのチケットになったり、この中にいろんな権利を小分けしたり、アーティストとファンをつなくメディアになるのではないかと思っている。」とFeliCaの将来像を語ってくれた。

トークセッション/ネット家電スタートアップの作り方

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※写真左から小股氏、相馬氏、岩佐氏

ネット家電スタートアップの作り方というテーマで、先のスピーカーを務めた岩佐氏、相馬氏にオムニビットの小股氏を加え、具体的にネットと家電でスタートアップをする際にどのような方法やハードルがあるかについてトークセッションを行った。このセッションは岩佐氏の事前寄稿エントリを参考に同氏のモデレートで進行。

まず、実際デジタル家電を作る際の苦労について小股氏は「エントリの中でざっくり省かれている点が量産の件について。量産については血みどろの戦いがある。海外で日本人がこういうものを作るときには密に連絡をとってやるしかない。」と指摘。ラインの立ち上げなどはかなりの労力を要するようだ。

そもそも量産を海外で実施するのはコストダウンが大きな目的だ。しかし話がスタートアップになると様子が変わる。「コストダウンの為に海外にもっていくことはある。前の会社ではコードレス電話をつくっていたのだが、コードレス電話は米国で$9で売ってたりする。そうなると製造コストは1セント違うと大きくちがうことになる。アジアの工場は大量生産は得意だが、新しいものには向かなかったりする。人も入れ替わるし、教育もなかなか難しい。」

海外生産での課題はセキュリティ面とコミュニケーション面が大きい。「例えばFeliCa。セキュリティ重視なので国内で作れた方が安心。セキュリティレベルを保ったまま外国にもっていくのは難しい。」(相馬氏)「日本にも工場は一杯あるし、金型やって基板やっているところもあるので、時間のあるところは多い。そういうところを使うのはアリかもしれない。試作品を数百台つくる程度で海外とのコミュニケーショントラブルを起すことを考えると同じ位のコストでできるかも。」(小股氏)結局、生産量に応じて拠点は考える必要があるということのようだ。

では、どの辺りから国内、海外の判断をするべきなのだろうか。「エントリでいえば筐体変えます、ぐらいだったら海外でやったほうがいいかも。ソフトウェア入れ替えますというのも大丈夫。基板を変えるというラインになると、試作を海外でやり出すのは大変でしょうね。日本ほど品質がよいかといわれると疑問符が付きます。また、そういう指示をだしている時間ももったいない。」(小股氏)

次に話題はネット家電スタートアップの人材へ。「ネット家電やってるスタートアップってそもそもいるの?という。自分は過去にメーカーで量産品のノウハウを手に入れた。しかし、大学で何か研究していて、じゃあスタートアップしようか、というには自分がいままでメーカーで踏んできた経験、失敗をたどることになる。これはお金が続かない。」(小股氏)経験がモノを云うハードの世界、ウェブでのスタートアップとの違いが大きく存在するようだ。

例えば大手のメーカーで定年直前までやっていて、ハードの立ち上げだとか品質の担保などを経験していた人が、若い人のスタートアップをアドバイスしてもらえるようなマッチングが出来ないか、とも。知ってるか知らないかだけで運命を左右するだけに、このポイントは大きい。

トークセッションの最後を小股氏は「部品はちょっと何かを試作するという敷居が下がってきている。思っているものを形にするにはいい時代だと思う。ハードウェアをやろうというスタートアップが増える事を願っている。」と締めくくった。セッションの全てはこのムービーにある。

StartupMeetingvol3 talksession from kigoyama; on Vimeo

ライトニングトークの得票で最も多かったのはチームラボ株式会社の山本さんだ。彼の記事は別に用意してあるので、ご覧頂きたい。その他のすばらしいプレゼンテーションはこのムービーで確認して欲しい。

NECビッグローブ株式会社

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