Facebook、App Store、そして必然の音

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That is the sound of inevitability…“[仮訳:あれは必然の音だ]

FacebookとAppleの(少なくとも相対的に)クローズドなエコシステムが、今日のウェブの基盤をいかに破壊していくかについて、ブロゴスフィアを飾る見出しという見出しを読むにつけ、映画マトリックスのこのセリフを思い出す。私はといえば、これっぽっちも心配していない。なぜか。それは今起きていることがサイクルの一部にすぎないと考えているからだ。そう、ウェブ(インターネット全体という意味で)は、循環的であるように私には思える。

アメリカ合衆国が、保守政権からリベラル政権への明け渡しの時期を経験するのと同じように、ウェブは今オープンシステム支配からクローズドシステムへと移行しているのである。最も明らかなのがAppleのApp Store、そしてFacebookである。大衆は、理由が何であれ(そこに理由はある。詳しくは後ほど)こうした制限的プラットホームを支持している。そして、これに死ぬほどおびえている人たちがいることも明らかだ。

また、次期権力を牽制するために心配する方がよい人もいるのだろうが、私は数年(あるいはもっと早く)のうちに、元のいわゆる「オープンな」ウェブに戻ってくるものと確信している。これは前にも起きたことだ。それほど遡らなくても見つけることができる。

1990年代の初めにワールド・ワイド・ウェブはなかった。いや、存在はしていたのだが、使う人がいなかった。ウェブブラウザーが普及していなかったからだ。その代りにインターネットは主としてUsenetGopher、FTPなどから成っていた。システムはオープンだった。たしかに参入障壁(モデム等)はあったが、真の障壁は「オンライン」とは何かを基本的に誰も知らなかったことであり、またそこに到達できる人はもっと少なかったことだ。

そこへ、Prodigy、CompuServe、GEnie、America Onlineなどの会社が登場する。1991年、これらのサービスはすべてDOS(Microsoft製のWindowsの前のオペレーティングシステム)上で動作し、比較的簡単にオンラインになれる方法を提供した。さらに重要なのは、そこでするべき何か、例えば記事の形でニュースを体系的に読むこと、を与えてくれたことにある。しかし、使いやすさと引き替えにこれらのサービスはアクセス料金を徴収した。これがインターネットの閉鎖であった ― しかし誰も気にしなかった。こうしたサービスは急速に成長していった。

どこよりも速く伸びたのがAOLだった。このサービス最大の特徴が、誰にでも理解できる洗練されたユーザーインターフェースだった(対してCompuserveは、どちらかといえば技術者集団に向いていた)。同サービスはさらに、チャットルームを通じて他のAOLメンバーと(ただしAOLメンバーとだけ)交流できることを大きく掲げた。利用量は爆発的に伸びた。これまたクローズドシステムであった。

実際のところ、クローズドシステムはある状況では有用である。まず重要なのが一般大衆へのアピールだった。AOLが人々にアピールしたのは、わかりやすくて(比較的)安全そうだったからだ。みんながFacebookを使い始めたのは、わかりやすくて(比較的)安全そうだったからだ。みんなが今App Storeを使うのは、わかりやすくて(比較的)安全そうだからだ。おわかりいただけただろうか。

これは、一般大衆を最大限に取り込むことを必要とするタイプのシステムである(「取り込む」であり、必ずしも留まらせるとは言っていないことに注意)。

クローズドシステムは順応や変更がオープンシステムより早い。政治の話にちょっとだけ戻ろう。これは王制政治の方が共和制よりも効率的であることと少し似ている。議会による統治は遅いが、王が何かを決めればそれで終りだ。しかし、王様は失敗するのも早い ― そこにはプラスとマイナスがある。

これは、著名なウェブ/iPhoneデベロッパー(現在はFacebookに所属)であるJoe Hewittが、昨日(米国時間4/30)Twitter上で連綿とウェブ開発の現状を批判したことと密接に繋がっている。「ぼくはもう一度Webデベロッパになりたくてたまらない。でも、2010年にCocoaにできたことを、ブラウザでやるために2020年まで待たなければならないのなら、ぼくはそれを待つ気はない。」とHewittは言う。要するにこういうことだ。W3C(共和党)が支配するウェブ言語の現状は動きが遅すぎる。Apple(王)に統治されたフレームワークであるCocoaは、優に10年先を行っている。

Hewittは正しいかもしれないし、間違っているかもしれないし、あるいは誇張しているだけかもしれない。それはどちらでもよい。実際には、何かがやってきてこうしたクローズドシステムを再びこじあける ― あるいは滅びていくのである。

滅びるといえば、AOLの話に戻ろう。1990年中頃まで、AOLは他を圧倒していた。月額固定料金へと切り替えるや否や(それまでは従量制 ― そう、長い間それでも人々は使っていたのだ)、利用者は数千万人へとはね上がった。これはFacebookユーザーが5億人に達しようとする今と比べて大したことではないように見えるかもしれないが、今とは全く違う時代の話なのだ。AOLにサインアップする人たちの多くが、生まれて初めてインターネットを使う人たちだった。2000年にはAOLの力は強大となりその勝利の(これまたクローズドな)モデルによって得た資金で、Time Warnerを$164B(1640億ドル)で買収したのである。そして、すべてが崩壊し始めた。

その数年前、AOLは後に自らの滅亡を招くことになる新機能を追加した。ウェブブラウザーである。そう、90年代の一時期には多くの人々がAOLの塀の内側からウェブをブラウズしていた。しかし、ウェブはオープンであり、AOLはそこからどこへ行くことも妨げなかった。ウェブ上のコンテンツが急速に増加、多様化すると共に、人々はそもそもAOLが必要なのだろうかと疑問を持ち始めた。電話会社やケーブル会社が常時接続を提供し、ウェブブラウザーから直接(AOLを介さずに)インターネットに行けるようになると、多くの人たちにとってAOLを使い続ける理由はメールアドレスだけになった。

これはもはや維持可能なモデルではなかった。AOLの利益はダイアルアップアクセス事業の衰退と共に急落した。オープンウェブの勝利である ― そして理由の一部はAOLがウェブを使うための窓を開いたからだった。しかし、AOL(あるいは似たような会社)がいなければ、インターネットの普及も今日のウェブの進化も遅れていたかもしれない。

どこかで聞いた話ではないだろうか。iPhoneを考えてほしい。これは塀に囲まれた庭(ただしAOLと比べると、サードパーティー開発者が中に入れるだけずっとオープンではある、ルールに従いさえすれば)であるが、やはり外界への窓を開いている。ウェブである。SafariウェブブラウザーはiPhoneの覗き穴だ。しかも時にAppleはこれを強調することさえある。Appleが一定のアプリしか許さないことを批判する人たちは、HTML5を使ってSafariで動かせばどんなアプリでも作れることに気付くべきだ。Appleは一切それを規制できないのだから。

Hewittが指摘するように、HTML5はネイティブアプリと対等に戦えるアプリを作れるほどには成熟していない。しかし、かなり魅力的なアプリもでてきている。数年のうちに、HTML5が現在のApp Storeモデルを崩壊に導く可能性は十分にある。私はAOLほど破滅的にこのモデルが壊れるだろうとは言わない。Appleは、そうなる前に順応して壁を取り払う(あるは別のことをする)かもしれない。しかし、HTML5(あるいは現在われわれが思ってもいない他のテクノロジー)によって、システムが再び開かれる方向へ導かれるであろうと私は確信している。

Facebookは少し事情が異なる。当初はかなり閉鎖的なシステムだったが、ここ数年でオープンになってきた。われわれはまずFacebookプラットホームを得て、サードパーティー開発者がFacebookの塀の中で仕事ができるようになった。そして今、Open Graphによって、Facebookの壁が広大なウェブに向けて広がったようにみえる(少なくともOpen Graphを採用したサイトでは)。たしかに、Facebookがデータの出入りを制御できる点については未だにクローズドだが、オープンな部分もある。

ふと思ったのだが、Facebookはオープンとクローズドの適正な混合比をOpen Graphによって見つけたのではないだろうか。Open Graphは、すでに驚異的な5億人(近い)メンバー以上にリーチを広げるためには十分オープンである。一方、それなりの外観を保ち、人々に(少なくとも今のところ)使い続けさせる程度には十分クローズドである。

その信頼システムが作られたクローズドなルーツのおかげもあって、Facebookは究極のソーシャルグラフを確立し成長させることができた。AOLのメールやそれ以前のチャットと同じく、これはユーザー囲い込みの一つの形である。AOLが失敗したのは、システムをオープンにすることも、ユーザーが逃げていく道をすでに開けていたことに気付くのも遅すぎたからだ。Facebookは同じ失敗を犯しそうにない。彼らはすでにソーシャルネットワーキングの戦いに勝っているので、自らを開放してより広大なウェブを追い求める余裕がある。そしてGoogleをも。

だから、誰もがウェブのFacebook化が意味するところを恐れているが、私が思うにFacebookが成長を続けユーザーを維持していく唯一の方法は、オープン化を続けることだ。ある時点で、彼らにとってそれが最大のビジネス上の利益ではなくなり、その時がFacebook衰退の始まりに違いない。しかし、秘手もある。もしこの会社がGoogle AdSense的に収益を上げつつオープン化を続ける方法を見つけることができれば、持ちこたえられるかもしれない。

FacebookとApp Storeという「クローズド」事例のいずれにおいても、長寿の秘訣はオープン化を進めることにある。FacebookもAppleもそれを拒めば、第二のAOLになるだろう。何かがやってきて彼らを追い出す。以前にも起きた。再び起きるだろう。そして今後も起き続けるだろう。これは必然だ。

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(翻訳:Nob Takahashi)